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QA学園: カスタマーのエモーションをテストケースに活かす

Last updated at Posted at 2025-12-10

Ew(Emotion waveform)をテスト設計に混ぜると何が嬉しいか

―― QA学園のアヤ視点で説明してみる

こんにちは。QA学園で倫理モジュールのテストとか見ている、八乙女アヤです。

今日は、うちら QA 学園でよく出てくる

Ew(Emotion waveform:感情の波)

っていう概念を、テスト設計にちょっと混ぜてみると何が嬉しいのかを、
うちの言葉でまとめてみます。

「心理学をガチでやろう」って話じゃなくて、

  • テスト観点を考えるときに
  • 仕様だけじゃなくて
  • 「ユーザーの感情の起伏」もメモってみる

くらいの、**軽い“ちょい足しテクニック”**と思って読んでください。


Ew(Emotion waveform)って何者?

うちらのクラスで使っている定義は、ざっくりこんな感じです。

Ew(Emotion waveform)
= あるシナリオの中でユーザーが感じる
 「安心・不安・イラつき・期待」みたいな感情の波形っぽいものを、
 ざっくり言葉と強さでメモしたもの。

ポイントは、厳密な数値化じゃないところ。

たとえば、「パスワード再発行」のシナリオを Ew でなぞると:

  1. ログイン画面を開く
    → 「いつもの画面だな」安心 0〜+1

  2. パスワードを1回間違える
    → 「あ、ミスった」 −1

  3. 何度か失敗してロックされる
    → 「やば…ロックされた」 不安 −3

  4. 再発行メールを送る
    → 「ちゃんと届くよね?」 不安 −2

  5. 5分待ってもメールが来ない
    → 「届かないんだけど…」 イラつき −4

みたいな感じで、ステップごとに“ざっくり感情ログ”を付けるイメージです。

数値はざっくりでいいです。
プラス・マイナスと、だいたいの大きさが分かれば十分。


なんでテスト設計に Ew を混ぜるの?

理由はシンプルに、うちの感覚だとこの3つです。

1. 「仕様どおりだけどムカつく」を拾いたいから

テストやってると、

  • 仕様どおりエラーが出ている
  • メールも一応送信されている
  • 画面遷移も Figma どおり

なのに、「うちがユーザーだったらここでアプリ閉じる…」みたいなポイント、ありませんか?

それってだいたい、

  • エラーが何度も続く
  • 何が起きてるか分からない
  • 待たされてるあいだ何もフィードバックがない

みたいな Ew の“谷” にいます。

Ew をシナリオに書いておくと、

  • 「機能テスト的には OK」だけど
  • 「ユーザー体験としてはアウト」

なステップが目印つきで残るので、
テスト観点や改善ネタにしやすい、というのが一つめの理由。


2. テストの優先度を感覚で共有しやすいから

テスト計画の会話で、

  • 「このシナリオは優先度高めで見たいです」
  • 「ここはリスクが高いので厚めに」

みたいな話、よく出ると思います。

そのときに Ew を一緒に出せると、

  • 「ここは機能的に壊れるとヤバい」
  • 「こっちは Ew の谷が深くて、信頼をごっそり削る」

みたいに、**“どっちの意味でヤバいのか”**が分けやすくなります。

  • 機能リスク:金額ミス、データ破壊、セキュリティ事故
  • 感情リスク:不安・イラつき・不信感・問い合わせ爆発

Ew は後者のラベルとして使えるので、

「このシナリオ、Ew の谷が深いからテスト厚めにしたいです」

という話が、**非エンジニアにも通じやすくなります。


3. QA・UX・PM・CS 同士の共通言語になりやすいから

テストケース表って、QA 以外の人からすると
「正直ちょっとしんどい表」になりがちじゃないですか。

そこで、画面遷移図やユーザーフローに、
Ew の波を一緒に描いておくと:

  • UX → 「ここ、ストレス溜まりやすそうですね」
  • PM → 「この谷は数値にも出そうだから、次スプリントで触りたい」
  • CS → 「ここ、問い合わせでもよく詰まってます」

みたいに、感情ベースで話がしやすくなるんですよね。

うち的には、
Ew は「テスト観点に付ける、感情の付箋」みたいなイメージです。


どうやって Ew をテスト設計に混ぜるのか

ステップ 1: シナリオをひとつ選ぶ

いきなり全部やると挫折するので、

  • 会員登録
  • 初回オンボーディング
  • パスワード再発行
  • 決済〜失敗〜リトライ
  • 解約フロー

みたいな、「ここの体験コケると信頼一気に落ちる」シナリオから一つだけ選びます。

ステップ 2: シナリオ表に「Ew カラム」を 1 列足す

既存のシナリオ表やテストケース表があるなら、
そこに 1列だけ Ew カラムを足すところから始めてOKです。

たとえば「パスワード再発行」シナリオなら:

No | シナリオステップ                          | 期待結果                          | Ew(Emotion waveform)
---+-------------------------------------------+-----------------------------------+------------------------
 1 | ログイン画面を開く                        | ログイン画面が表示される         | いつもの画面。安心 0〜+1
 2 | パスワードを1回間違える                   | エラー文言が1つ表示される        | 「あ、ミスった」 −1
 3 | 規定回数失敗して一時ロック                | ロック画面+解除案内が表示される | 焦り+不安 −3
 4 | 「パスワード再発行メール送信」を押す      | 送信完了メッセージが表示される   | 「ちゃんと届くよね?」 −2
 5 | 5分待ってもメールが来ない                 | メール未着。画面は変化なし       | 「届いてない? バグ?」 −4

数値は「−4 とか −3 とか、ざっくり」で大丈夫です。

大事なのは、

  • どのステップが「Ew の谷」か
  • その谷でユーザーがどう感じていそうか

を、一目でわかるようにしておくこと。

ステップ 3: Ew の“谷”からテスト観点を起こす

上の表でいうと、No.5 が Ew −4 で一番きついので、
まずここから観点を足します。

例えば:

  • 一定時間経過後に「メールが届かない場合はこちら」の案内が出るか
  • スパムフォルダや別アドレスの可能性を、UI でちゃんと案内しているか
  • 再送ボタンが分かりやすい位置にあるか
  • 「それでも届かない」場合の問い合わせ方法が明示されているか

どれも仕様書の「機能一覧」には出てこないけれど、
Ew −4 のポイントを少しでも −2 ぐらいに戻すための観点になります。

「ユーザーが不安で固まる瞬間に、
 ちゃんと“声をかけているか”どうかを見るテスト」

みたいなイメージです。


QA 学園的ミニケース:自販機バグを Ew で見る

うちらの学校であった“日常バグ”の例として、自販機の話を軽く。

体育館横の自販機で

「お金は入ったっぽいのに、飲み物が出ない」

という苦情が出た日がありました。

Ew でなぞると:

  1. 喉が渇いて自販機へ
    → 「今から飲めるぞ」 Ew +2

  2. お金を入れる・ボタンを押す
    → 「もうすぐ落ちてくる」 Ew +3

  3. 変な音だけして、何も出てこない
    → 「え? なに今の」 Ew −2

  4. 状態がよく分からない(返金もされてないように見える)
    → 「お金だけ取られた?」 Ew −4

機能的には、

  • 内部では課金されていない
  • センサーの状態がおかしくなっているだけ

みたいなケースかもしれませんが、
ユーザーの Ew から見ればこれは ほぼ“お金を失った体験” です。

ここからテスト観点にすると:

  • エラー時に「課金されていない」「返金された」が分かる表示があるか
  • 「故障中です」「問い合わせはこちら」が明示されているか
  • 特定のパターン(連続購入など)で再現するか

みたいな形で、
ユーザー体験としての“バグ” を見にいくことができます。

Web のフォームや決済でも、本質的にはこれと同じです。


どう始めると楽か(アヤ案)

いきなり「全シナリオに Ew を書く」はしんどいので、
うちはこのあたりから始めるのが現実的かなと思っています。

  1. 1シナリオだけ選ぶ

    たとえば:

    • ログイン
    • 決済
    • 解約

    あたりの“信頼に直結する”ところを一つ。

  2. シナリオ表やユーザーフローに Ew カラムを1列足すだけ

    • 数値はざっくり
    • プラス・マイナスと、一言コメントで OK
  3. Ew の谷(−3, −4)から観点起こす

    そのステップに対して、

    • 「UI で声をかけるテスト」を 2〜3 個足してみる

それだけでも、テスト設計の空気が

  • 「仕様に対して」のテストから
  • 「人の体験に対して」のテストに

少しだけ寄っていくはずです。


まとめ:Ew は“感情のログ付きテスト観点”

うちの言い方でまとめると、Ew をテスト設計に混ぜる理由はこんな感じです。

  • 「仕様どおりだけどムカつく・不安なポイント」を捨てずに拾いたいから
  • テストの優先度やリスクを、“数字だけじゃなく感覚でも”共有しやすくするため
  • QA / UX / PM / CS の間で、「ここしんどいよね」を共通言語にしやすくするため

やること自体はシンプルで、

シナリオごとのステップに
 一言でいいから Ew(感情の波)をメモする

だけです。

そこから、Ew の谷をテスト観点に変換していくと、
「守りたい体験のためのテスト」 が少しずつ増えていくはず。

「仕様どおり動いてるけど、この感じはズレてる気がする」

って思ったときの違和感を、そのまま流さずに
Ew の一行として残しておく。

そこから始めてみるのも、悪くないかなって、
うちは思っています。

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