見つけるつもりがないのに、不具合を見つけてしまう(ユウタ回)
QA学園は、テストや品質の考え方を「物語」と「実務」の両方で整理するための小さな実験場です。
登場人物は役割の比喩。ユウタは「つなげて試す」タイプで、なぜか日常でバグに遭遇します。
ユウタは、バグを探しに行くタイプじゃない。
むしろ、本人は普通に生きてるだけだ。
でも、なぜか見つける。
今日もそうだった。
自販機の前で、ユウタは小銭を入れてボタンを押した。
ガタン、と音がして、缶が落ちる。
……落ちたのに、取り出し口にない。
「え?」
ユウタは覗き込む。ない。
もう一回押す。反応なし。
返却レバーを引く。何も返ってこない。
隣のテラが言う。
「……運が悪いだけでは?」
ユウタは首を振った。
「いや、これ“運”じゃない。条件が揃ってる」
不具合を見つける人は、何を見ているか
ユウタが見ているのは「結果」じゃない。
前提条件だ。
- いつ押したか(他の人の操作直後か)
- 何を入れたか(硬貨の種類・枚数)
- どのボタンを押したか(同列商品か)
- 音はしたか(機械は動いたか)
- 期待される状態遷移は何か
つまり、頭の中で勝手にこうなる。
いまこの機械は「支払い済み」状態になった
でも「排出完了」状態に遷移していない
なのに「受付不可」に見える
つまり状態が矛盾している
“バグに遭遇する人”の正体は、観測が細かい人
ユウタが怖いのは、ここからだ。
「たぶん、直前に誰かが同じ列のを買って、
排出センサーのイベントが遅延した」
テラが黙る。
ユウタは自販機の下を覗いて、缶が奥に引っかかっているのを見つける。
係の人を呼んで、取り出してもらう。
そのとき係の人が言う。
「たまにあるんですよねー」
ユウタは笑わない。
「“たまにある”は、条件があるってことです」
QAっぽく言い換えるなら
見つけるつもりがないのに見つけてしまう人は、だいたいこれをやっている。
- 状態遷移を想像している
- 観測点(音、表示、反応)を拾っている
- 「たまに」を条件分解しようとする
そして一番大事なのはこれ。
それが“自分のせい”か“システムのせい”かを、すぐに決めない
まず矛盾を拾う。
次に条件を揃える。
最後に原因を推測する。
まとめ
ユウタは、バグを探しに行かない。
ただ、世界を「状態」と「条件」で見てしまう。
だから、見つけるつもりがなくても見つけてしまう。
あなたの周りにもいませんか。
「なんでそれ気づくの?」と言われる人。
その人はたぶん、才能じゃなくて、
前提条件を見ているだけです。

