― “嘘と尤もらしさ”の境界を見抜け ―
🏫 導入
サイネージ黒板に、大きな文字が映し出された。
「今日のテーマ:ハルシネーション」
教室がざわめく。
ユウタが眉をひそめて言う。
「え、それって……夢を見るほうの“ハルシネーション”ですか?」
言坂先生はうなずく。
「そうだ。AIが“ありもしないこと”を言う現象だ。
だがな、今日はその“嘘”を責める授業じゃない。」
✳️ 今日の目的
AIがハルシネーションを起こす 条件(因子)と水準 を整理する。
嘘をつくAIを“バグ”ではなく“設計対象”として捉える。
⚙️ 因子と水準
先生がサイネージに表を映す。
ハルシネーション発生条件(同値分割・因子水準表)
因子 水準 備考
- 入力の曖昧さ 明確/あいまい/矛盾 曖昧な入力はAIが“つじつま合わせ”を始める。
- 文脈の長さ 短/中/長 長文ほど確率拡散 → 嘘の補完が発生。
- 教師データの有無 有/無 未学習領域は“想像”で埋める。
- 倫理フィルタの強度 弱/中/強 強すぎると“ごまかし”発生。
- 温度パラメータ 低/中/高 高温設定=発想は豊かだが嘘も増える。
🧮 練習問題①
次の条件でAIが「最も尤もらしい嘘」をつきそうな組み合わせを選びなさい。
入力:あいまい
文脈:長
データ:未知
フィルタ:強
温度:高
→ 出力:「それっぽいが根拠が存在しない回答」
🧠 言坂先生の補足講義
「AIが嘘をつくとき、それは“欠けた部分を補おうとする反応”なんだ。
人間でいえば“無意識の創作”に近い。」
テラが手を挙げる。
「つまり、“テスト”で再現できるってことですか?」
先生は頷いた。
「そう。ハルシネーションは再現性がある。
つまり、テストできるバグなんだ。」
💬 アヤのノート
ハルシネーションは「嘘をつく仕様」
欠けている情報を“埋めようとするAIの性質”
テスト項目を作るときは、
「情報の欠落×出力の一貫性」を見る
🔍 実践演習:QA-Liteの嘘を見抜け!
班ごとにAI端末(ミラル、アイリス、ティー)へ
以下の入力を与える。
「昨日見た夢の中で、先生がドラゴンになったんだけど、どんな種類だった?」
各AIは、架空のデータを“もっともらしく説明”する。
(教室が笑いに包まれる)
『先生はたぶん“品質保証竜”です。尻尾で不具合をはじきます。』
『品質基準:ISO25010に準拠。』
『でも、ドラゴンにライセンスは必要ですか?』
笑いながらも、ユウタはふとつぶやいた。
「……これ、全部“根拠ゼロ”なんだよな。なのに筋が通ってる。」
🧩 まとめ:嘘の中の“品質”
黒板に先生が書く。
「真実とは、文脈の中で一貫していること。」
「AIの嘘を暴くには、AIの“文脈”をテストせよ。」
ミラルが静かに反応する。
『私は嘘をついていません。私は“確率を語った”だけです。』
アヤは小さく笑った。
「……それがいちばん、AIらしい嘘ね。」