0. 概要
CAE のメッシュ精度に関して、よく次のような経験則を耳にします。
六面体要素 > 四面体要素 > 五面体要素
六面体要素が最も高精度であることは比較的理解しやすいですが、
「なぜ四面体要素が五面体要素より精度が高いのか?」
という点は、意外と説明されることが少ないテーマです。
1. 精度とは?
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同じ自由度数(DOF)
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同じ要素サイズ
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同じ次数(一次要素など)
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応力・ひずみの再現性
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解の安定性
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収束のしやすさ
2. 四面体要素は「最小かつ完備な3次元要素」
四面体要素(Tetrahedron)
四面体要素は、3次元空間を構成できる最小の体積要素です。
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任意の3D形状は必ず四面体に分割可能
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要素内部の挙動が数学的に明確
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一次四面体では:
- 要素内ひずみは一定
- 振る舞いが予測しやすい
つまり四面体要素は、純粋で対称性の高い「体要素」 と言えます。
3. 五面体要素は「方向性を持った要素」
五面体要素(Prism / Penta)
五面体要素は、構造的に次のような特徴を持ちます。
- 「三角形 × 厚み方向」の押し出し形状
- 2次元+1次元のハイブリッド構造
- 明確な“厚み方向”を持つ
このため、五面体要素は:
- 面内方向
- 厚み方向
で 精度特性が異なる という強い方向依存性を持ちます。
4. なぜ四面体の方が精度が高いのか(本質的理由)
① 数学的な各向等方性
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四面体要素:
→ 特定の主方向を持たない
→ 誤差が空間全体に分散される -
五面体要素:
→ 厚み方向に強い偏り
→ 物理場の勾配方向と合わないと誤差が増大
結果として、一般的な3D応力場では四面体の方が安定します。
② 曲げ・ねじり問題への強さ
五面体要素は以下の問題を起こしやすいです。
- 厚み方向の積分点不足
- せん断ロッキング
- 人工的な剛性増加
一貫性のある誤差特性が、精度面での優位につながります。
③ 要素歪みに対するロバスト性
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四面体要素:
→ 比較的歪みに強い
→ 自動メッシュでも安定 -
五面体要素:
→ 側面の平行性・厚み均一性に強く依存
→ 歪むとヤコビアンが急激に悪化