第1回はプロトコルとOSI参照モデルを整理した。第2回は、データをネットワーク上で運ぶEthernetとWi-Fiについて学んだ。OSI参照モデルでは主に第1層の物理層と第2層のデータリンク層にあたる。
MACアドレス
MACアドレスは、Ethernetや無線LANのインターフェイスを識別するために使われるアドレスだ。一般的には48ビットで、16進数を使って 12:34:56:78:90:AB のように表す。ハイフンやピリオドを使う表記もある。
メーカーに割り当てられた識別子を含むアドレスでは、先頭部分にOUI(Organizationally Unique Identifier)が使われる。一方、MACアドレスは変更できる場合もあり、端末がプライバシー保護のためにランダムなアドレスを使うこともある。そのため、見えているアドレスから常にメーカーを特定できるわけではない。
macOSでは、ターミナルで次のコマンドを実行すると、ネットワークのインターフェイスとMACアドレスを確認できる。
networksetup -listallhardwareports
出力された Wi-Fi の項目にある Ethernet Address が、そのインターフェイスのアドレスだ。接続先ごとにプライベートWi-Fiアドレスを使っている場合は、ネットワーク上で見えるアドレスと異なることがある。MACアドレスを掲載するときは、端末を識別できる情報であることに注意したい。
L2スイッチはフレームの送信元MACアドレスを学習し、宛先MACアドレスを基に転送先を判断する。宛先には次のような種類がある。
- ユニキャスト:特定のインターフェイス宛て。
- ブロードキャスト:同じL2ネットワーク内の全インターフェイス宛て。アドレスは
FF:FF:FF:FF:FF:FF。 - マルチキャスト:特定のグループ宛て。
Ethernetと伝送媒体
Ethernetは有線LANで広く使われる規格で、フレームの形式や、媒体を通じた信号の伝送方法などを定めている。主な規格はIEEE 802.3で定められており、速度や使用する媒体によって種類がある。
| 規格の例 | 伝送速度 | 媒体の例 |
|---|---|---|
| 100BASE-TX | 100 Mbps | ツイストペアケーブル |
| 1000BASE-T | 1 Gbps | ツイストペアケーブル |
| 1000BASE-SX | 1 Gbps | マルチモード光ファイバ |
| 10GBASE-T | 10 Gbps | ツイストペアケーブル |
たとえば 1000BASE-T の 1000 は速度が1000 Mbps、BASE はベースバンド方式、T はツイストペアケーブルを使うことを表す。実際に使える距離やケーブルのカテゴリは規格によって異なる。
UTPケーブルは、対になった導線をより合わせたシールドのないケーブルだ。LANケーブルとしてよく使われる。接続に使う配線にはストレートとクロスがあり、従来は端末とネットワーク機器の接続にストレート、端末同士の直接接続にクロスを使い分けていた。自動で送受信を調整する機器では、この使い分けが不要な場合もある。
ツイストペアケーブルには、ノイズの影響を抑えるためにシールドを備えたものもある。ケーブルの性能だけでなく、コネクタや設置環境も含めて選ぶ必要がある。
光ファイバにはシングルモード(SMF)とマルチモード(MMF)があり、前者は長距離、後者は建物内やデータセンタ内など比較的短い距離で使われる例がある。接続する光トランシーバに合った種類を選ぶ。光コネクタにもSCやLCなどの形状があるため、両端の機器に対応するか確認する。
Ethernetフレーム
Ethernetでは、上位層から受け取ったデータをフレームにして送る。Ethernet IIフレームの主な構成は次のとおりだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 宛先MACアドレス | フレームの送り先 |
| 送信元MACアドレス | フレームの送り元 |
| EtherType | ペイロードに入る上位プロトコルなどを識別する値 |
| ペイロード | 上位層から受け取ったデータ |
| FCS | フレームの誤りを検出するための値 |
EtherTypeの例には、IPv4を示す 0x0800、ARPを示す 0x0806、IPv6を示す 0x86DD がある。送信時には、受信側が信号を同期するためのプリアンブルもフレームの前に付けられる。
VLANとMTU
VLANは、物理的な機器やケーブルを共有しながら、L2ネットワークを論理的に分ける技術だ。たとえば、同じスイッチを使う端末を所属ごとに別のネットワークとして扱える。
複数のVLANを同じリンクで運ぶ場合、IEEE 802.1Qのタグをフレームに付けて所属するVLANを識別できる。タグにはVLAN IDのほか、優先度などの情報も含まれる。異なるVLAN間の通信には、ルータやL3スイッチなどによる中継が必要になる。
MTU(Maximum Transmission Unit)は、あるリンクで一度に運べるパケットの最大サイズを表す。Ethernetでは1500バイトが一般的な値だ。この大きさにはIPヘッダも含まれるため、アプリケーションのデータだけで1500バイトを使えるわけではない。
大きなデータは、たとえばTCPが適切な大きさに分けて送る。IPパケットの分割が必要な場合、IPv4では分割が許可されていれば送信元や途中のルータが分割できる。IPv6では途中のルータは分割せず、必要な分割は送信元が行う。対応機器間では、より大きなMTUを使うジャンボフレームも利用できる。
Wi-Fiの接続
Wi-Fiは無線LANの技術で、ケーブルの代わりに電波を使う。家庭や学校などでは、端末がアクセスポイント(AP)に接続する構成が一般的だ。無線LANのインターフェイスにもMACアドレスがある。
SSIDは無線LANを識別するための名前だ。端末は対象のネットワークを選び、アクセスポイントと接続する。複数のアクセスポイントを組み合わせて、広い範囲をカバーする構成もある。
Wi-Fiの規格にはIEEE 802.11n、802.11ac、802.11axなどがあり、それぞれWi-Fi 4、Wi-Fi 5、Wi-Fi 6などの名称でも呼ばれる。利用できる周波数帯や速度は規格と機器の対応によって変わる。規格上の最大速度と、実際の通信速度は同じとは限らない。
家庭内でWi-Fiが不安定な場合は、利用している周波数帯にも注目できる。2.4 GHz帯はBluetoothなどと共用されており、周囲の電波から干渉を受けることがある。5 GHz帯や6 GHz帯も、障害物や距離、周囲の利用状況によって通信品質が変わるため、接続する場所で確認する。
無線LANのセキュリティ
無線LANでは電波が届く範囲から通信を受信できるため、盗聴や不正接続への対策が必要になる。通信の暗号化と、接続する端末や利用者の認証にWPA2やWPA3などの仕組みが使われる。
家庭向けのPersonalでは共有パスワードなどを使い、組織向けのEnterpriseではIEEE 802.1Xを使った認証を行う。偽のアクセスポイントに接続してしまう危険もあるため、SSIDだけで接続先を判断せず、利用するネットワークを確認することも大切だ。
ほかの無線通信
Wi-FiのほかにBluetoothと携帯電話回線も扱った。Bluetoothは周辺機器やIoT機器の接続などに使われ、身の回りの機器をつなぐPAN(Personal Area Network)を構成できる。通信できる距離は機器や環境によって変わる。
4G LTEや5Gの携帯電話回線は、基地局を通して音声通話やインターネット接続を提供する。Wi-Fiと同じ無線通信でも、使う設備やカバーする範囲が異なる。
今回のまとめ
EthernetとWi-Fiは、端末がネットワークに接続し、データを運ぶための技術だ。フレームの宛先を判断するMACアドレス、論理的にネットワークを分けるVLAN、送れるサイズに関わるMTUを合わせて整理すると、第1回で扱ったデータリンク層の役割が具体的になった。