東京商工リサーチ2026年度上半期、人手不足倒産が過去最多240件|担当者交代に備えた業務システム化の手順
本記事は、株式会社DnD(https://dnd-inc.jp)のコラムを一部編集して掲載しています。
初出: https://dnd-inc.jp/blog/labor-shortage-bankruptcy-system-2026.html
東京商工リサーチが2026年10月に公表した「2026年度上半期(4〜9月)の全国企業倒産」では、「人手不足」を原因とする倒産が240件(前年同期比17.0%増)に達し、集計開始以来の過去最多を更新しました。5年連続の増加です。全体の倒産件数も5,373件(前年同期比3.8%増)と13年ぶりの高水準となり、その背景には物価高・人件費上昇に加え、「採れない・育てられない・引き継げない」という構造的な問題があります。本稿は、倒産に至らなくても「担当者が急に来られなくなったら業務が止まった」経験のある会社に向けて、属人化した業務をシステムで引き継ぐための具体的な手順を整理します。
この記事の要点
- 東京商工リサーチの2026年度上半期(4〜9月)集計で、人手不足倒産は240件(前年同期比17.0%増)と過去最多。物価高・人件費上昇が追い打ちをかけ、「担当者の退職→引き継げない→業務停滞→資金繰り悪化」という流れが倒産の一因となっている。
- 人手不足倒産は「採用できない」だけが原因ではない。「その人しかできない業務」が残っている属人化こそが、退職一人で業務が止まるリスクを生んでいる。
- 属人化を解消するには「業務の見える化→入力・転記のシステム統一→処理記録の自動化」の3ステップが有効。AI-OCRによる紙帳票の自動読み取りと受注・経理システムの連携が、最も費用対効果の高い出発点になる。
人手不足倒産が過去最多を更新した背景
東京商工リサーチの集計では、人手不足を主因とする倒産の内訳として「人材確保難」「人件費高騰」「求人難」の3類型が挙げられています。2026年度上半期(4〜9月)には合計240件に達し、前年同期を17.0%上回りました。
背景には、最低賃金の引き上げが続く中で採用単価も上昇し、中小企業が人材を確保しにくくなっていることがあります。加えて、物価高による仕入れコストの上昇も重なり、「売上は維持できても、人件費が出せない」状況に追い込まれるケースが増えています。
注目すべきは、これが大企業ではなく中小・小規模事業者に集中している点です。従業員が少ない組織ほど、1人の退職が業務全体に与える影響は大きくなります。
倒産に至らなくても「業務が止まった」経験はないか
倒産まで至らなくても、次のような経験を持つ会社は少なくありません。
- 受注担当が1週間休んだら、FAXの注文書の処理が溜まって取引先からクレームが来た
- 経理担当が退職し、引き継ぎに3ヶ月かかった(引き継いだ人も何をしているか分からない状態が続いた)
- 問い合わせ対応を1人の社員が「感覚」でこなしており、その人が異動したら回答品質が下がった
これらは「業務の属人化」によって起きます。属人化とは、特定の業務が特定の人物の記憶・経験・手順にのみ依存している状態のことです。その人が離れると、業務の内容・進め方・確認のポイントが引き継げません。
属人化が生まれる3つのパターン
属人化にはパターンがあります。
- ツール依存型:特定の人だけが使いこなせるExcelマクロや手作りのアクセスデータベースで業務が回っている
- 記憶依存型:顧客の特別な条件、取引先の好み、イレギュラー対応の方法が担当者の頭の中にしか存在しない
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連絡先依存型:特定の担当者のスマートフォン・個人メールに重要な取引連絡が集中しており、他の人には転送されていない
どのパターンも、マニュアルを整備しシステムを活用することで解消できます。ただし「まずマニュアルを書く」という方法は、書く作業自体に時間がかかり、継続されにくい傾向があります。入力・処理・記録をシステムが担う設計にしておけば、マニュアルに頼らなくても誰でも同じ操作ができる状態を作れます。
自社の属人化リスクを確認する6項目
まず、自社の業務のどこに属人化リスクがあるかを棚卸しします。特定の担当者を思い浮かべながら、以下の6項目を確認してください。
**1〜3に「いいえ」が多い場合は、退職者が出た際に業務が最も止まりやすい状態です。**優先してシステム化の対象にしてください。
属人化を解消する3つのステップ
属人化の解消は、一度に全業務を作り直す必要はありません。「最も止まると困る業務」から始め、段階的に広げていく進め方が現実的です。
ステップ1:業務を「見える化」する
まず現在の業務フローを書き出します。「何が入力として来て、何が出力として出るか」「誰がどのツールを使って、何をしているか」を1枚の図にまとめます。このとき、Excelや独自ツールで処理している部分、手書きのメモに頼っている部分、記憶で対応している部分を特定することが目的です。
見える化した業務フローは、後のシステム化の「設計図」になります。ここを丁寧にやることで、必要以上に大きなシステムを作らずに済み、開発費用を抑えられます。
ステップ2:入力・転記をシステムで統一する
属人化の多くは「入力」と「転記」の工程で起きます。誰かが目視で確認し、手で別のシステムに打ち込む手順が残っている限り、その工程は担当者依存です。
特に効果が高いのは、紙帳票のAI-OCR(光学文字認識)による自動読み取りです。FAXで届く注文書・納品書・請求書などを、AI-OCRが自動でテキストデータに変換し、受注システムや会計ソフトへ直接連携する設計にすることで、入力工程の属人化をなくせます。読み取り精度は確認ルールで補完するため、完全な無人化ではなく「確認だけ人が行う」設計が現実的です。
同様に、顧客からのメール問い合わせや申込フォームも、記録が自動でシステムに入る設計にすることで、「あのメールはどこへ行った?」という担当者依存を解消できます。
ステップ3:処理の記録と通知を自動化する
最後に、「処理が完了したか」「期限が近づいているか」「漏れが出ていないか」をシステムが自動で確認する仕組みを追加します。具体的には、処理済み・未処理をステータス管理する仕組み、期日が来たら担当者または上長に自動通知する仕組みです。
この仕組みがあると、担当者が急に休んでも上長が状況を把握でき、他の人が代わりに処理を進められます。記録が残っているため、担当者が復帰したときや退職後でも、業務の継続性が保たれます。
自社の属人化リスクについて、相談してみませんか。
ご相談・お見積りは無料です。「どの業務から手をつければよいか分からない」という段階からお受けしています。
よくある質問
「担当者が1人しかいない業務」のシステム化は何から始めればよいですか?
まず「業務の棚卸し」から始めます。その業務で何が入力され、何が出力されるか、誰がどのツールを使っているかを書き出します。次に「もし今日から来られなくなったらどうなるか」を確認し、止まるポイントを特定します。その止まるポイントだけを最初にシステム化の対象にすると、費用・期間の両面でスモールスタートが可能です。
属人化の解消にシステム開発は必ず必要ですか?
すべての業務でシステム開発が必要なわけではありません。まずマニュアルと記録の整備(誰でも手順を確認できる状態にする)だけで対応できる業務もあります。一方、毎日発生する入力・転記・確認作業は、自動化の費用対効果が高く、システム化が適しています。どちらが向いているかは業務の発生頻度・件数・正確性の要求度によります。
AI-OCRで紙の帳票を読み取るだけで属人化は解消されますか?
AI-OCRは「紙を読み取る」ステップの属人化を解消できますが、読み取った後の確認・登録・処理のフローも合わせて整備しないと、別の担当者依存が残ります。AI-OCRの導入と同時に、「何をどのシステムに登録するか」「エラーが出たときの対処は誰が何をするか」をルール化することで、はじめて引き継げる状態になります。
人手不足倒産と業務の属人化はどのように関係しているのですか?
東京商工リサーチは人手不足倒産の原因として「人材確保難」「人件費高騰」「求人難」を挙げています。採用できない・給与を上げられないという状況で、退職者の業務を引き継ぐ人材がいないと業務が停滞します。そこへ取引先への対応遅れ・納期遅延が重なると資金繰りを圧迫します。属人化を解消して「1人いなくても業務が回る仕組み」を作ることは、倒産リスクへの直接的な備えになります。
この記事は株式会社DnD(業務効率化・DXパートナー)が運営するコラムの転載です。
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