源泉徴収票の電子提出義務が2027年1月から30枚以上に拡大|今年の年末調整からシステムを整える3つのステップ
本記事は、株式会社DnD(https://dnd-inc.jp)のコラムを一部編集して掲載しています。
初出: https://dnd-inc.jp/blog/year-end-adj-etax-30sheet.html
毎年11〜12月、社員に扶養控除申告書・保険料控除申告書を配って、回収して、集計して、給与ソフトに入力する——このルーティンを今年も続けようとしている会社は、少し立ち止まって確認してほしいことがあります。令和6年度税制改正により、令和9年(2027年)1月1日以後に提出する法定調書から、電子提出義務の対象が「100枚以上」から「30枚以上」に拡大されます(出典:国税庁)。今年の年末調整データを2027年1月に電子提出できる形で整えておくには、10月・11月の準備が鍵になります。
この記事の要点
- 令和9年1月以後提出分の法定調書(源泉徴収票等)から、電子提出義務の基準が「前々年100枚以上」→「前々年30枚以上」に引き下げられた。社員30名前後の中小企業も新たに義務対象となる可能性がある。(出典:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」令和8年版パンフレット)
- 今年の年末調整(令和8年分)は12月に実施し、源泉徴収票を2027年1月に提出する。今から電子提出の体制を整えておかなければ間に合わない。
- 準備のポイントは①自社の提出枚数確認・②給与ソフトのeLTAX対応確認・③年末調整申告書の電子収集フロー構築の3つ。紙が残る証明書にはAI-OCRで対応できる。
2027年1月から何が変わるのか
給与を支払う会社は毎年1月末までに、源泉徴収票などの「法定調書」を税務署と市区町村に提出します。この提出方法について、令和6年度税制改正により、電子提出が義務となる枚数の基準が引き下げられます。
具体的には、令和9年(2027年)1月1日以後に提出する法定調書から、前々年に提出した源泉徴収票の枚数が30枚以上であった場合に、e-Tax・eLTAXによる電子提出が義務になります(これまでは100枚以上が基準でした)。
「前々年」の考え方に注意が必要です。令和9年(2027年)1月に提出する法定調書は令和7年(2025年)中に提出した枚数が基準になります。令和7年中に30枚以上提出していた会社は、令和9年1月提出分から電子提出が義務になります。
なお、同改正により、令和8年(2026年)分以後は市区町村に給与支払報告書をeLTAXで提出すれば、税務署への源泉徴収票は提出したものとみなす制度も整備されています(「みなし提出制度」)。実務上は給与ソフトからeLTAXへの連携が中心的な対応になります。
自社は対象になるか——今すぐ確認すべき6つのポイント
「うちはまだ関係ない」と思っていても、社員30名前後の中小企業では今年の枚数次第で来年の提出義務が変わります。以下のチェックリストで自社の状況を確認してください。
今年の年末調整から、3つのステップで整える
年末調整の電子化は一度に全部やる必要はありません。今年(令和8年分)から少しずつ始め、令和9年1月の義務提出に備えるスモールスタートが現実的です。
ステップ1:年末調整申告書の電子収集を始める
最初の一歩は、社員からの申告書収集を電子化することです。選択肢は主に2つあります。
**国税庁の無償年調ソフト:**国税庁が提供する「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」は無償で利用でき、社員が各自のPCやスマートフォンで申告書を入力し、PDFを会社に送付する流れを作れます。マイナポータルと連携すれば保険料控除証明書等を自動取り込みできます(対応機関は順次拡大中)。
**給与計算ソフトの年末調整機能:**多くのクラウド給与ソフトには年末調整申告書の電子収集機能が含まれています。社員用のWebフォームから入力してもらい、そのまま給与計算に取り込む設計のため、PDF収集より転記の手間が少なくなります。まず自社の給与ソフトにこの機能があるか確認することをお勧めします。
ステップ2:給与ソフトのeLTAX連携設定を確認する
年末調整の計算が完了したら、法定調書を電子でeLTAXを通じて市区町村に提出します。前述のみなし提出制度により、令和8年分以後は市区町村へのeLTAX提出が税務署提出を兼ねる形になります。
給与ソフトのeLTAX連携は、多くの場合ソフト内でeLTAX利用者識別番号を設定するだけで有効になります。ただし、設定のタイミングや対応するeLTAXのバージョンはソフトにより異なるため、年末調整作業が始まる11月までに設定を完了しておくのが安全です。ソフトのサポートページか担当窓口に確認しておきましょう。
ステップ3:紙が残る証明書にAI-OCRを活用する
マイナポータル連携に対応していない保険会社や金融機関からは、引き続き紙の証明書が届くことがあります。このような紙が残るケースに有効なのが**AI-OCR(光学文字認識)**です。
保険料控除証明書・住宅ローン残高証明書などの証明書類は、発行フォーマットが機関ごとに異なりますが、AI-OCRは「保険種類・保険期間・新契約/旧契約の別・支払保険料額」といった項目を意味で認識するため、フォーマットが変わっても対応できます。スキャンまたはスマートフォンで撮影した画像から数値と項目を自動抽出し、給与システムに取り込む流れを作ることで、担当者の手入力と転記ミスを大幅に削減できます。
電子化を段階的に進める際の考え方
年末調整の電子化・法定調書の電子提出は、単体の作業ではなく、勤怠管理・給与計算・経理との一連のフローに関わります。段階的に進める際の考え方を以下に整理します。
- **まず今年から始められること:**国税庁の年調ソフトを使った申告書の電子収集と、給与ソフトのeLTAX設定の確認。費用をかけずに着手できます。
- **来年以降に整備すること:**勤怠管理システムと給与計算ソフトのデータ連携、社員のマイナポータル登録促進。年末調整の転記作業をなくす核心部分です。
- **抜本的に自動化したい場合:**勤怠・給与・年末調整・法定調書提出を一体で動かすシステムの整備。既存ソフトの連携でカバーできない部分をシステム開発で補います。
大切なのは「今年の年末調整が終わってから考えよう」と先送りにしないことです。令和9年1月の義務提出に向けて動けるかどうかは、10月・11月に準備を始めているかどうかにかかっています。
自社の年末調整、どこから電子化すればよいか相談してみませんか。
ご相談・お見積りは無料です。「給与ソフトとの連携をどうするか」「紙の証明書をどう扱うか」という段階からお受けしています。
よくある質問
前年の源泉徴収票が30枚未満でした。来年1月は紙で出しても問題ありませんか?
令和9年1月提出分の義務判定は「前々年(令和7年中)に提出した枚数が30枚以上かどうか」が基準です。令和7年中の枚数が29枚以下であれば、令和9年1月提出分は電子提出の義務はありません。ただし、令和8年中に30枚以上となった場合は令和11年1月提出分から義務対象となるため、毎年枚数を確認することをお勧めします。
国税庁の無償「年調ソフト」だけで年末調整を電子化できますか?
国税庁の年調ソフトは、従業員が各控除申告書に入力してPDFを作成するためのツールです。無償で利用でき、マイナポータルと連携すれば保険料控除証明書等を自動取り込みできます(対応機関は拡大中)。ただし、データを給与計算ソフトに取り込む機能はないため、給与計算ソフト側が年調ソフトのデータを読み込めるか確認が必要です。
紙で届く保険料控除証明書が残っていても電子化できますか?
可能です。マイナポータルに対応していない保険会社等からは引き続き紙の証明書が届く場合があります。AI-OCRを使えば、紙の証明書をスキャン・撮影するだけで主要項目を自動データ化できるため、手入力と転記ミスの削減につながります。マイナポータル対応の証明書は自動取り込み、未対応分はAI-OCRで補完する組み合わせが現実的な方法です。
給与計算システムと年末調整の電子化を一体で整備すると、どれくらいの期間がかかりますか?
要件整理から導入・運用開始まで、標準的には3〜6ヶ月が目安です。既存の勤怠管理システムや給与計算ソフトとの連携範囲、紙書類の電子化方針によって変わります。今年の年末調整には間に合わない場合でも、まず来年に向けた要件整理から着手し、令和9年分(2028年1月提出)に向けて体制を整える計画を立てることが現実的な選択肢です。
この記事は株式会社DnD(業務効率化・DXパートナー)が運営するコラムの転載です。
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