前書き
卒業論文を書くために構築した自分のLaTeX環境をこの記事では紹介します。LaTeXをほとんど使ったことがない状態から構築したので、特に初心者の方に役に立つと思います。また、この記事で環境構築が完結するようにそれぞれの操作を丁寧に解説したので、最速で綺麗なLaTeX環境が作れると思います1。
環境の確認
macOS BigSur 11.1
LaTeXとは
LaTeXとは組版システムのTeX上で開発された文書処理システムのことです。CUIで操作することができるので、慣れればワープロソフトより格段に速く表現力の高い文書を作ることができます。
Homebrewのインストール
TeXはパッケージ管理システムのHomebrew2を利用してインストールすると良いです。こちらの記事にしたがって、Homebrewのインストールを行ってください。
すでにインストールしている方は、以下のコマンドを実行してください3。それぞれのコマンドの意味についても以下の通りです4。
% brew update && brew upgrade && brew cleanup
-
% brew update
:Homebrew自体を更新する -
% brew upgrade
:Homebrewでインストールしたパッケージを更新する -
% brew cleanup
:Homebrewでインストールした以前のバージョンのパッケージのキャッシュなどを削除する
MacTeXのインストール
次に、Homebrewを利用してMacTeXのインストールを行います。MacTexにはGUIアプリケーション(LaTeXitとTexShop)とTeXLiveとGhostScriptの三つが含まれます。一つ目のコマンドでMacTexをインストールすることができ、二つ目のコマンドでMacTexからGUIアプリケーションを除いたものをインストールすることができます。今回はGUIアプリケーションが必要ないので、二つ目のコマンドを実行すれば良いです。
% brew install --cask mactex
% brew install --cask mactex-no-gui
また、インストール後にtlmgr
などのTeXに関わるコマンドを実行するには環境変数のPATHに/usr/local/texlive/2022/bin/universal-darwin
を追加する必要があります5。% echo $PATH
の出力に/usr/local/texlive/2022/bin/universal-darwin
が含まれていない場合は以下のコマンドを実行してください5。ちなみに、export
は環境変数を設定するコマンドです。
% export PATH=$PATH:/usr/local/texlive/2022/bin/universal-darwin
また、その後に以下のコマンドでTeXLiveのアップデートをしてください6$^,$7。
% sudo tlmgr update --self --all
確認
LaTeXのサンプルファイルhoge.tex
を用意して% platex hoge.tex
と% dvipdfmx hoge.dvi
を順に実行してPDFができることを確認してください。
Latexmkの設定
ここまででLaTeX環境を作成することができました。次に、毎回コマンドをいくつも打たなくても済むように、文書の作成時に必要回数だけタイプセットするためのツールとしてLatexmkを使います。Latexmkの説明は省略しますが、ホームフォルダ(~
)に設定ファイルの.latexmkrc
を作成しておくとLatexmkの使用時に読み込んでくれます8$^,$9。
従って、以下では.latexmkrc
を作成して編集していきます。まずは% touch ~/.latexmkrc
を実行して.latexmkrc
を生成してください。その後はエディタで編集すれば良いですが、編集できない場合はfinderの"フォルダへ移動"の検索画面に~
を打ち込んで移動した後に隠しファイルを見れるようにすると9、直接ファイルを開いて編集できます。
編集できる状態になったら.latexmkrc
に以下を貼り付けてください。それぞれのコードの意味は書いてある通りで、%Sはソースファイル,%Oはオプション,%Dは出力ファイルにそれぞれ置き換えられることを表します8。
# 最大のタイプセット回数
$max_repeat = 5;
# DVI経由でPDFをビルドすることを明示
$pdf_mode = 3;
# pLaTeXを使う
# -halt-on-error:初めのエラーで終わらせる
$latex = 'platex %O %S -halt-on-error';
# pBibTeXを使う(参考文献)
$bibtex = 'pbibtex %O %S';
# Mendexを使う(索引)
$makeindex = 'mendex %O -o %D %S';
# DVIからPDFへの変換
$dvipdf = 'dvipdfmx %O -o %D %S';
確認
LaTeXのサンプルファイルhoge.tex
を用意して%latexmk hoge.tex
と実行してPDFができることを確認してください。
VSCodeのインストール
MacでのVSCode入門のインストールの項に従ってインストールしてください。また、VSCodeについてもHomebrewでのインストールをお勧めします。
VSCodeの設定
LatexmkをVSCodeと組み合わせるとさらに便利になり、変更して保存するだけでPDFの生成と更新を行うことができます。また、タブでPDFとLaTeXのソースファイルを同時に見ながら作業することもできます。
VSCodeでLaTeXを使うには拡張機能のLaTeX Workshopをインストールすると良いです。インストール後にsettings.json
10$^,$11でLaTeX Workshopの設定をします。VSCodeを開いた状態でCmd + ,
のショートカットキーを用い、画面右上に出てくる下記のマークを押して開いたファイルを編集します。
また、settings.json
に以下のLaTeXの設定の部分を貼り付ければ問題なく動きますが、自分でカスタマイズしてください。
{
//----other settings----
//----latex settings----
//viewerをタブで開く
"latex-workshop.view.pdf.viewer": "tab",
//intellisenseを有効にする
"latex-workshop.intellisense.package.enabled": true,
//生成ファイルを格納するディレクトリ名
"latex-workshop.latex.outDir": "latex_out",
//自動でPDFを更新
"latex-workshop.latex.autoBuild.run":"onFileChange",
//生成ファイルで削除するファイル
"latex-workshop.latex.autoClean.run": "onBuilt",
"latex-workshop.latex.clean.fileTypes": [
"*.aux","*.bbl","*.blg","*.dvi","*.fdb_latexmk","*.fls","*.synctex.gz","*.toc"
],
//ビルドの動作
"latex-workshop.latex.recipes": [
{
"name": "latexmk",
"tools": ["latexmk"]
},
],
//ビルドのコマンド
"latex-workshop.latex.tools": [
{
"name": "latexmk",
"command": "latexmk",
"args": ["-outdir=%OUTDIR%","%DOC%.tex"]
},
]
//----other settings----
}
確認
LaTeXのサンプルファイルhoge.tex
を開いて保存するだけでhoge.pdf
とhoge.log
のみがlatex_out
に保存されることを確認してください。
Mathpix
もう一つ便利なツールとしてMathpixを紹介します。このツールは論文中の数式をスクショするとLaTeXの数式に変換してくれます。
以下のコマンドを実行するとHomebrew経由でインストールすることができます。もちろん公式サイトからdmgファイルをダウンロードしてインストールすることもできます。
また、使い方については難しくないので、公式サイトを眺めてください。
% brew install --cask mathpix-snipping-tool
参考にすべきサイト
TeX Users Group
- TeXの本家のサイトなので、全て載っている
- ただし、英語
TeX Wiki
- Texに関することが日本語で書かれている
- 読者参加型なので大抵の内容は書いてある
Latexのサンプルファイル
環境構築の確認用のサンプルファイルです。
\documentclass[dvipdfmx]{jreport}
\begin{document}
\title{test}
\author{hogefuga}
\maketitle
\section{hoge1}
This is sample.
\section{hoge2}
これはサンプルです。
\end{document}
-
LaTeXの環境構築に焦点を当てるために省略した部分がある点はご了承ください。 ↩
-
Homebrewの概要はhomebrewとは何者か。仕組みについて調べてみたを読むと把握できます。 ↩
-
これ以降、
% コマンド名
で実行するコマンドを示します。シェルによっては%が$ですが、適宜読み替えてください。 ↩ -
詳しくはmanコマンドで確認してください。 ↩
-
環境によりますが、5分~15分程度はかかると思います。 ↩
-
--selfがtlmgrのアップデートで,--allがインストールしたパッケージのアップデートを表します。詳しくは
man
で確認してください。 ↩ -
.がついているファイルを隠しファイルと呼びます。finder上で
command
とshift
と.
を同時に押すと、開いているディレクトリにある隠しファイルが表示されます。 ↩ ↩2 -
$HOME/Library/Application\ Support/Code/User
にあるsettings.json
を編集してください。 ↩ -
。VSCodeを快適に使うためのJSON入門にてJSON記法を理解するとスムーズに設定等を行うことができます。 ↩