IT初級試験を取得することに意味はあるのか?
結論:試験より「知識」に価値がある
先日、Microsoft AZ-900 に合格しました。
AZ-900 は、Azure の前提知識と基本的な使い方を問う、Microsoft のベンダー試験の中でも入門寄りの資格です。
人によっては一夜漬けでも合格できるかもしれません。
ただ、私は 2 週間以上、1 日 1 時間程度ではありますが、時間をかけて学習して取得しました。
基本情報技術者試験も含め、こういった初級試験は「取っても意味がない」と言われがちです。
理由としてよく挙がるのは、主に次の 2 つだと感じます。
- 就活に役立たない
- 実務で使わない
たしかに、この 2 点が短期的には当たっているケースもあります。
ただ、だからといって「受ける意味がない」と結論づけるのは違う、というのが私の考えです。
知識があれば効率が上がる
以前、こちらの記事でも書きました。
IT における問題解決は、適切な抽象度で検索できるかに大きく依存します。
AZ-900 のような試験で学ぶ基本用語、たとえば以下のようなものは、単なる知識ではありません。
- リージョン
- 可用性ゾーン
- 冗長化
これらは、検索クエリの精度を上げるためのインデックスになります。
検索は、知識が増えるほど効率化されます。
この差は、長期的に見ると大きな生産性差になります。
最近だと「AI に聞けばいい」という意見もあります。
しかし、AI に聞く場合でも、前提知識があれば次のようなメリットがあります。
- トークンを節約できる
- より適切な指示を出せる
- 回答の妥当性を判断しやすくなる
- 前提説明を省略できる
つまり、AI を使う場合でも、知識があることは有利に働きます。
知識は「使う・使わない」の話ではない
「AZ-900 の知識は実務で使わない」という意見もあります。
しかし、実務において直接操作するかどうかと、その理解が判断に影響するかどうかは別の話です。
たとえば Azure Functions を使用する場合、次のような点を理解している必要があります。
- それが PaaS であること
- スケーリングの仕組み
- 課金モデル
- 他の選択肢との違い
- App Service
- Container Apps
これらを理解しているかどうかで、設計やトラブルシューティングの質は大きく変わります。
他クラウドでも知識は活きる
最近私が使った知識でいうと、他社クラウドではありますが、AWS を使って個人で開発・運用している Web アプリがあります。
そこでは、次のようなサービスを利用しています。
- 要件管理に使っている Lightsail 上の Redmine
- SaaS 的に利用
- 実際に Node.js が動いている Amazon Linux のインスタンス
- IaaS
- アプリから参照するファイルを置いている S3
- PaaS 的に利用
これらの属性を理解しておくだけでも、開発の質にはかなり影響があると感じました。
また、セキュリティグループについても同様です。
AWS にも Azure と似たようなアクセス制御の考え方があります。
そこで学んだ知識を活用して、アクセス管理に使っています。
前提知識があるだけでも、このあたりの使い方を根本から理解できる点は、それなりに大きな利点だと感じています。
知識は前提となる
AZ-900 のような入門資格は、クラウドの全体像を体系的に理解することに価値があります。
Azure には数多くのサービスがあります。
しかし、体系理解がない状態では、それぞれのサービスを個別に学ぶことになります。
その場合、次のような前提が抜け落ちやすくなります。
- Compute / Storage / Network の関係性
- IaaS / PaaS / SaaS の役割分担
- 責任共有モデル(Shared Responsibility Model)
この前提を知っているかどうかで、理解度にはかなり差が出ます。
また、AZ-900 で得た知識は、その後の上位資格において前提知識として扱われます。
たとえば、以下のような資格です。
- AZ-104
- AZ-204
前提知識がある状態で学習する場合と、都度調べながら進める場合では、理解速度や定着率に大きな差が生まれます。
つまり、AZ-900 は単体で大きな価値を持つというより、その後の学習効率を上げるブースターとして機能すると考えています。
余談:知識は体験も豊かにする
私は「知恵は生活を豊かにし、知識は人生を豊かにする」と思っています。
料理で下ごしらえのコツを知っていると楽になるように、知識は日々の判断を助け、工夫、つまり知恵に変換されていきます。
また、知識は体験の豊かさにも影響します。
たとえば美術館で絵を見たとき、その人物や時代背景を知っていると、感想の幅が広がります。
もちろん、何も知らずに見た感想にも価値はあります。
ただ、背景知識があると受け取れる情報量が増え、体験がより豊かになります。
私はゲームが好きでよく遊びます。
プレイ中にバグに遭遇すると、「どういう条件で発現したのか」をだいたい想像できます。
そこから、
- そういう実装なら起きうる
- それは出しちゃダメだろ
- なるほど、ここで状態管理が崩れたのかもしれない
といったように、別の視点で楽しめることもあります。
これも、知識があることで得られる「見方の増加」だと思っています。
結論
初級試験は、単体での市場価値は限定的かもしれません。
しかし、以下を知識として持つことは、長期的に見て確実にリターンのある投資だと考えています。
- 体系的理解を得る
- 検索精度を上げる
- 上位学習の前提を築く
- 設計やトラブルシューティングの判断材料を増やす
- AI への指示や回答の理解精度を上げる
以上から、私は次のように考えています。
初級試験は「取ること」自体の価値は限定的でも、内容を知識として蓄えることには意味がある。
そのため、私は初級試験から学び、必要に応じて取得するようにしています。
これから IT 試験を受けてみようと考えている方が、「試験の価値」を少し違う角度から考えるきっかけになれば幸いです。