はじめに:中年での情シス配属。「今さらレガシーなIT技術の勉強なんて無理だ」と感じている人へ
私は、37歳で情報システム部に配属され、メインフレームやIBM i(AS/400)、COBOLやRPGといった長年使われ続けてきたシステムの保守を任されました。
画面は黒か緑。
ソースコードは何十年も前のもの。
設計書は断片的で、当時の担当者はすでにいない。
VBAや簡単なSQLは書けれども、独特の言語はわからない。
勉強しようにも、自費で勉強できるようなUdemyなどプラットフォーム上のオンライン講座も少ない。
そんな状況を前にして、
「これを全部理解しろと言われても無理だ」
そう感じるのは、極めて自然な反応です。
世の中では、DX、クラウド、AIといった言葉が当たり前のように語られ、エンジニアが新しい技術を次々と習得していく姿が目に入る。
一方で、自分はどうか。
家庭の事情があり、仕事が終われば別の役割が待っている。腰を据えて技術書を読み込んだり、休日に学習時間を確保したりする余裕はない。
その結果、
「今さらITを体系的に学ぶのは無理だ」
「自分は時代に取り残された人材なのではないか」
そんな不安が頭をよぎるってしまいます。
ただ、ここで最初にお伝えしたいことがあります。
あなたの業務は遅れているわけではありません。
会社が情報システム部に配属され、レガシーシステムの保守を任せた理由は、新しい技術を覚えさせるためでも、若手と同じことをさせるためでもありません。
求められているのは、
- システムを止めないこと
- どこを触ると影響が出るかを見極めること
- なぜその仕様が残っているのかを業務の言葉で説明できること
こうした判断と説明の役割です。
もちろん。これは、短期間の勉強で身につくものではありません。
業務を知り、現場を見てきた人だからこそ担える役割です。
本稿では、時間も体力の衰えも感じ始めた30、40代が、無理にITを学び直そうとせずに、
どうすれば現場で信頼され、手放されない存在になれるのか
その考え方と行動の整理をしていきます。
技術を追いかける話はあまりしません。派手な成功談もありません。
その代わり、
- 何を理解すれば十分なのか
- どこは分からなくても問題ないのか
- どの視点を持てば判断ができるようになるのか
そうした実務に直結する話を、一つずつ積み重ねていきます。
「今さら無理だ」と感じたところが、実はスタートラインだった。
そんなふうに捉え直せる材料を、ここで提供できればと思います。
1.なぜ「今さらITの勉強」では詰むのか
情報システム部に配属されたとき、真面目な人ほど最初にこう考えます。
「まずはITの基礎から学び直そう」
「最近のトレンドも押さえておかないとまずい」
そして書店やECサイトで、
最新IT用語集、プログラミング入門書、クラウド資格の参考書を一通りそろえます。
しかし、40代・家庭持ち・レガシー保守担当という条件がそろった瞬間、この選択は高確率で「詰み」に向かいます。
それは努力不足ではなく、戦う土俵を間違えているからです。
本章では、「なぜ網羅的なIT学習が破綻するのか」を構造的に整理します。
1.1 学習量の競争では絶対に勝てない
20代の若手エンジニアが持っていて、あなたが持っていないものは才能ではありません。
決定的な差は、次の2点です。
- 圧倒的な可処分時間
- 失敗が許容される吸収フェーズ
彼らは業務後や週末に、趣味の延長としてコードを書き、
試して、壊して、覚えることができます。
一方で、中年を迎えた情シス担当者の現実はこうです。
- 業務後は家庭対応
- 体力の回復が優先事項
- 休日は「休むこと」に使われる
この状態で同じ学習戦略を取るのは、
軽自動車でF1マシンと同じレースに出るようなものです。
同じ戦略を選んだ瞬間、勝敗は確定しています。
1.2 レガシー現場で評価される能力は開発と異なる
あなたが任されているのは、メインフレームやIBM iといったレガシーシステムの保守です。
この現場で評価されるのは、次のような力です。
-
壊さない
新しいことをするより、既存の仕組みを維持する力 -
止めない
障害時に、最短で業務を再開させる判断力 -
説明できる
なぜこの結果になったのかを、業務側に言語化できる力
これらは、新しい技術であるPythonやGoを覚えたから身につくものではありません。
レガシーの現場では、 技術の鮮度よりも、判断の確実性が通貨になります。
1.3 使わない知識は、必ず腐る
IT業界は変化が速い。これは事実ですが、本質はそこではありません。
問題は、実務で使わない知識を維持し続けようとすることです。
- 半年前の最新技術は、もう話題に上らない
- 実務で使わなければ、確実に忘れる
- 忘れる → 焦る → また学ぶ、の無限ループ
これは努力不足ではなく、構造的な疲弊です。
使わない知識を保守し続ける行為は、 穴の空いたバケツに水を注ぎ続けることと同じです。
1.4 あなたの価値は「知識量」ではなく「判断の質」にある
ここで最も重要な前提を確認します。
あなたの価値は、
どれだけ技術を知っているかではなく、
どれだけ正しい判断ができるかにあります。
中年から始めるの情シスに求められているのは、すべてを知っている人ではありません。
- どこまで触っていいか
- どこから先は危険か
- いま止めるべきか、進めるべきか
こうした判断を引き受けられる人です。
ここで誤解してはいけないのは、学習そのものを否定しているわけではないという点です。
否定しているのは、
- 網羅的に覚える学習
- 若手と同じキャッチアップ戦略
です。
学習の定義を、次のように置き換えてください。
Before
技術を学ぶ=新しい言語やツールを覚えること
After
技術を学ぶ= 現場の構造を理解し、安全な選択ができるようになること
そうしたうえで、現場に直結する学習とは何でしょうか。
たとえば、
- このプログラムを触ると、どの業務に影響が出るのか
- この数字は、どの処理結果なのか
- 何を確認すれば「壊さない判断」ができるのか
これを理解するための学習は、すぐに現場で使われ、腐りません。
2.レガシーシステム保守で本当に評価される3つの役割
最新技術に精通したエンジニアは、組織にとって欠かせない存在です。 一方で、メインフレームやIBM iといったレガシー環境に入ると、公開情報も少なく、戸惑うことが多いと思います。
これは能力の問題ではありません。
求められている役割と専門性が異なるだけです。
レガシーシステムの現場では、技術をもって「実装する力」以上に、長年積み重なった文脈を読み解き、判断につなげる力が重視されます。非エンジニアのあなたが担うべき価値は、 若手と同じ役割を目指すことではなく、 異なる役割を引き受けることにあります。
2.1 システムの「意味」を翻訳できる人
レガシーシステムは、単なる古いプログラムではありません。
それは、数十年にわたる業務設計・制度対応・意思決定の蓄積です。
「処理内容」と「業務的な意味」は別物である
プログラムが
- どんな計算をしているか
- どんな条件分岐をしているか
を理解することは、技術者として重要です。
一方で、レガシー保守では次の問いが重要になります。
なぜ、この処理が必要とされたのか
どの業務ルールを前提にしているのか
これは技術力の上下ではなく、業務との距離の違いによって見えるものです。
業務側とシステム側をつなぐ「翻訳」という仕事
業務側が発する要望は、多くの場合こうです。
「ここを少し変えたい」
この言葉を、
- 仕様変更として受け取るか
- 業務ルール変更の兆候として受け取るか
ここに、情シスの役割があります。
- その変更は、どの業務判断に影響するのか
- 過去の経緯と整合しているのか
- 他部門の処理と衝突しないか
こうした観点を整理し、業務とシステムの両方が理解できる言葉に変換する。これが、この役割の本質です。
価値の源泉
実装力は、若手や外部パートナーが強みを持っています。
一方で、
- 業務の背景
- 組織の意思決定プロセス
- 過去の変更理由
を踏まえた翻訳は、
現場を長く見てきた人だからこそ担える役割です。
2.2 変更の影響範囲を言語化できる人
レガシーシステムでは、一つの変更が思わぬところに影響することがあります。これは設計が悪いからではなく、長年の追加・修正によって複雑性が高まっているためです。
技術仕様だけでは見えない「影響の連鎖」
設計書やコードリーディングだけでは把握しきれない要素があります。
- 過去の修正時にどこで問題が起きたか
- どの処理が業務上クリティカルか
- どのデータが別システムに渡っているか
これらは、経験の中で少しずつ蓄積される知識です。
リスクを「共有可能な形」にする役割
重要なのは、
リスクを感じ取ることではありません。
- なぜ注意が必要なのか
- どこまで影響が及ぶ可能性があるのか
- どの確認が終われば安全と言えるのか
これを言葉として整理し、関係者と共有することです。
これは慎重さではなく、意思決定を支える情報整理の役割です。
価値の源泉
「この変更は、追加検証が必要です」
「決算処理に関係するため、時期をずらしましょう」
こうした判断が、 結果的に大きなトラブルを未然に防ぎます。
これは、表に出にくいものの、組織にとって非常に重要な価値です。
2.3 判断の根拠を残せる人
レガシーシステムには、しばしば疑問が生まれます。
「なぜ、この仕様が今も残っているのか?」
多くの仕様には、当時の合理性がある
一見すると不自然な仕様も、
- 法制度対応
- 顧客個別対応
- 当時の技術制約
といった背景のもとで決められたものです。
問題は、それが記録として残っていないことです。
判断の履歴を整理するという仕事
求められるのは、完璧なドキュメントではありません。
- いつ
- どんな背景で
- どんな選択がされたのか
これを簡潔に残すだけで、
次の判断が格段にしやすくなります。
価値の源泉
判断の履歴が整理されると、
- システムは「触ってはいけない存在」から
- 理解し、議論できる対象へ変わります
結果として、保守の恐怖は減り、改善の余地が見えるようになります。
3.「技術力がない」と感じている人が、最初にやるべき3つの仕事
「技術に自信がない自分には、まだ何もできない」
そう考える必要はありません。
むしろ、技術に詳しくない立場だからこそ担える役割があります。
それは、複雑化したレガシーシステムを
「技術に詳しくない人にも説明できる形」に整理することです。
レガシー保守の現場では、完璧にコードを書ける人よりも、状況を整理し、共有できる人が強く求められます。
この章では、今日から着手できる 3つの実務的な仕事を紹介します。
3.1 AIでソースコードを「翻訳」して要約する
レガシーシステムのソースコードを、 一行ずつ完璧に理解しようとする必要はありません。
それは本職のエンジニアでも時間がかかる作業であり、中年の限られた時間を投下する対象としては、効率的とは言えません。
現在は、AIという強力な翻訳補助ツールがあります。これをうまく利用する必要があります。
AIを「一次読解者」として使う
意味が分かりにくいソースコード(COBOL、RPGなど)を
生成AI(ChatGPT、Gemini など)に貼り付け、
次のように依頼します。
「この処理を、ITに詳しくない人向けに
日本語で要約してください」
ここで重要なのは、
AIの説明をそのまま信じることではなく、全体像を掴むことです。
押さえるべき3つのポイント
すべてを理解しようとせず、
次の3点だけを抜き出してメモに残します。
【プログラム要約フォーマット】
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 入力(Input) | どこからデータが入るか | 例:売上伝票ファイル |
| 出力(Output) | どこに結果が出るか | 例:月次集計DB、請求書PDF |
| 主要な分岐 | 処理が変わる条件 | 例:取引先ランクが「A」の場合のみ値引き |
これを作るだけで、
あなたは「コードの全文を読んでいない人」でありながら、
処理の全体像を把握している人になります。
3.2 「業務」と「システム」の対応表を作る
現場で最も重宝されるのは、
コードを書ける人ではなく、次の問いに即答できる人です。
「このプログラムって、どの業務で使っているもの?」
対応関係を一覧にする
プログラム名と、
それが支えている業務、
止まったときの影響範囲を整理します。
ツールはExcelやMarkdownで十分です。
むしろ、更新しやすさを考えると最適です。
【業務対応表(例)】
| プログラム名 | 関連業務 | 実行タイミング | 障害時の影響 |
|---|---|---|---|
| PROG001 | 売上計上処理 | 毎日 17:00 | 当日の売上確定が遅れる |
| PROG099 | 月次請求作成 | 毎月 25日 | 請求書発送が停止する |
| VIEW_CUST | 顧客情報照会 | 随時(店頭) | 接客・検索ができなくなる |
対応関係表が生む価値
この表があるだけで、
トラブル発生時に次のことが可能になります。
- 誰に影響が出るのか
- 何を優先して復旧すべきか
- どの言葉で説明すべきか
つまり、
情報の交通整理役を担えるようになります。
「過去の判断」を聞き取り、残す
レガシーシステムには、コードだけでは読み取れない背景があります。
それは、当時の制約、判断、妥協、工夫といった人の意思決定の記録です。
実際に作業者に業務をヒアリングしながら、その業務内容を読み解き、実際にどのように使われているかを把握する必要があります。
雑談ベースの聞き取り
ベテラン社員や、長年付き合いのある協力会社の方に話を聞きます。
特に形式ばる必要はありません。雑談の中で、次のような質問を投げかけます。
- 「なぜ、この機能は手作業が残っているんですか?」
- 「過去の改修で、一番大変だったのはどこでしたか?」
記録に残すべきポイント
聞き取った内容は、次の観点で整理します。
-
仕様の理由
なぜ今の形になったのか
(例:法改正対応、特定顧客への配慮) -
変えられなかった理由
過去に検討したが断念したこと
(例:性能問題、他システムへの影響)
これらの記録があると、 将来のシステム検討時に次のことが可能になります。
- 過去の失敗を繰り返さない
- 判断の前提を共有できる
- 不必要な議論を減らせる
これは技術力とは別軸の、
組織的に非常に価値の高い仕事です。
5.中年で配属された低スキルが“生き残る”情シス戦略
家庭や育児、介護といった制約を抱える中で、無理に「24時間戦える技術者」を目指すのは現実的ではありません。
大切なのは、働き方や役割を 「労働力(作業者)」から「資産(判断者)」へ 意図的にシフトさせることです。時間が限られているからこそ取れる、長期的に生き残るための情シス戦略を整理していきます。
4.1 自分を「技術者」と定義しない
「自分はエンジニアだ」と強く意識すると、どうしても次のような感情が生まれがちです。
- 新しい技術を追えていない後ろめたさ
- 若手と比べてしまう焦り
- 技術的に劣っているのでは、という不安
しかし、非エンジニアの情シスにおける本当の役割は、純粋な技術者ではありません。
本当の職種は「ビジネスとシステムの調整官」
あなたの立ち位置を言い換えるなら、それは 「ビジネスとシステムの調整官(アジャスター)」 です。
- 業務側の言葉を、システムの制約に翻訳する
- 技術側の説明を、業務判断に耐える言葉に変換する
この役割は、技術の深さよりも 視点の往復 に価値があります。
「わからない」を武器にする
専門用語を並べて説明するよりも、あえてこう問い直す力が重要です。
「それ、現場の人が聞いたら
どういう意味になりますか?」
この問いは、次のことを防ぐ指針となります。
- 独りよがりな設計
- 技術先行の改修
- 説明不足によるトラブル
「判断と説明」を仕事の中心に据える
評価されるポイントは、
「コードが書けるか」ではありません。
- この修正は、業務にどんな影響があるか
- どのリスクを取って、どれを避けるべきか
- その判断を、誰にどう説明するか
「この変更をすると、
明日の朝の出荷にこれだけのリスクがあります。
この前提で、どう判断しますか?」
こうした問いを提示できることが、
情シスにおける 成熟した仕事 です。
4.2 「属人化」ではなく「情報のハブ」になる
特定のプログラムだけを深く知る「職人型」の立ち位置を目指すと、 次のような状況に陥りがちです。
- 休みの日でも問い合わせが来る
- 自分がいないと作業が止まる
- 結果的に、常に縛られる
これでは、持続可能な状態ではありません。
目指すべきは「情報のありかを知っている人」
あなたが目指すべきは、
すべてを自分で処理する人ではなく、
- 情報がどこにあるか
- 誰に聞けばよいか
- どの資料を見れば判断できるか
を把握している 情報のハブ です。
ドキュメントを「自分の身代わり」にする
先ほど述べたように
- AIに要約させた内容
- 業務とシステムの対応表
- ベテランから聞いた判断の背景
これらをMarkdownやExcelに整理し、チームに公開してしまうことが重要です。
結果として得られるもの
情報が共有されることで、
- 「あなたにしかわからない」状態が減る
- 急な家庭都合でも、運用が回る
- チーム全体の判断力が底上げされる
これは、自分と家族を守るための仕組み作りでもあります。
4.3 レガシー保守を「DXの入り口」と捉える
業務命令でレガシーシステムを任された際に、「自分は古いシステムのお守り役だ」 そう感じる必要はありません。
実は今、多くの企業がDXを進められない最大の理由は、 次の一点に集約されます。
古いシステムの中身が、誰にも説明できない
レガシーを整理できる人は、将来のキーマンになる
ここまで記載してきた
- 業務ルールの言語化
- システム構造の整理
- 判断理由の記録
これらは、将来のシステム刷新時に必ず必要になります。
- 何を残すべきか
- 何を捨てても問題ないか
- どこが業務の本質か
これを判断できる人は、実は非常に限られています。
キャリアの出口を広げる視点
「古い言語が書ける人・読める人」の市場価値は、 確かに限定的かもしれません。
しかし、
- 古いシステムを理解し
- 業務と結びつけて整理し
- 新しい形へつなげられる人
の価値は、これからの時代ますます高まっていきます。
そうした中で、非エンジニアの情シスでの戦略の基本は、追いかけることをやめる勇気です。
| 項目 | 避けるべきこと(消耗) | 注力すべきこと(資産) |
|---|---|---|
| 学習 | 最新技術の徹夜勉強 | 業務ルールと構造の理解 |
| 仕事 | 大量のコーディング | 判断根拠のドキュメント化 |
| 目標 | 若手と同じスピード | 誰でも判断できる情報整理 |
家庭の時間を削ってまで、 若手と同じ土俵で戦う必要はありません。
むしろ、 限られた時間の中で 最も価値のある判断 を下せる準備をすること。
それが、あなた自身と、あなたの家族を守るための 最も賢明な職業としての情シス戦略です。
おわりに:「遅れている」のではない。役割が違うだけだ
ここまで読み進めてくださったあなたは、心のどこかで、こんな不安を抱えていたかもしれません。
「自分は、ITの波に取り残されてしまったのではないか」
しかし、もう一度、はっきりとお伝えします。
あなたは 遅れているのではありません。
違う役割を、すでに期待されている のです。
レガシーシステムは「生き残った知恵」の塊である
何十年も稼働し続けているシステムは、 単なる「古い遺物」ではありません。
- 数々の障害を乗り越え
- 法改正に対応し
- 会社の危機を支えてきた
それは、生き残った知恵の結晶です。
偶然残ったわけではありません。
「壊さずに守る判断」「変えるべきでないと判断した責任」
その積み重ねが、今の姿を形づくっています。
この中身を紐解き、現在のビジネスに合わせて安全に維持し、
次の世代へと手渡していく。
この仕事に必要なのは、そこで使われている言語での実装よりも、
経緯を尊重し、判断に責任を持つ大人の誠実さです。
あなたが積み上げるものは、色褪せない資産になる
これからあなたが積み上げていくものは、
- 業務の理解
- 背景を含めた整理
- 判断理由の残ったドキュメント
いずれも、流行に左右されない、減価しない知識です。
それは一朝一夕では身につかず、簡単には手に入りません。
学ぶべきは「技術」ではなく「選ばれた理由」
もしこれから、新しい技術用語や流行に触れて、 一瞬でも焦りそうになったら、
こう問いかけてみてください。
「この技術は、 今のシステムをより安全に、より説明しやすくしてくれるだろうか?」
この問いを持てるようになった時点で、
あなたはもう、技術に振り回される側ではありません。
学ぶべきなのは、
- どう書くか
ではなく - なぜ選ばれ、どう社会を支えているのか
という 「理由」 の方です。
今のあなたのままで、価値は出せる
家庭を大切にし、限られた時間の中で、
無理に背伸びをせず、目の前のシステムと丁寧に向き合う。
若手が最新技術で「攻め」を担うなら、
あなたは過去の経緯と業務ルールで「守り」を固める。
AIを便利な道具として使い、自分にしかできない
人間臭い調整と判断に時間を使う。
その姿は、決して地味ではありません。
それは、とても プロフェッショナル といえます。
明日から、少しだけ見方を変えてみてください
明日、職場へ行ったら、緑や黒の画面を、ほんの少しだけ
優しい目で眺めてみてください。
そこには、あなたがこれから解き明かし、守っていくべき
会社の歴史が詰まっています。
焦る必要はありません。
今のあなたの条件で、最大の価値を出す。
その道は、 今ここから、すでに始まっています。