第二の青春をAIと共に過ごすことにした
キャリアの折り返し地点はとうに過ぎ、
これからどのように技術と向き合っていくかを考える時期に入った。
周囲を見渡すと、働き方や技術との距離を少しずつ調整する人も増えている。
そんな中で、私はもう少しだけ前へ進んでみたいと思った。
AIの存在が、そう思わせてくれた。
AIに励まされながら続けてきた試みが積み重なり、
気が付けば OSS「Ksql.Linq」を nuget.org で公開し、
10日間で 1000 ダウンロードを超えていた。
Ksql.Linqとは何か
Ksql.Linq は、.NET で ksqlDB を扱うときの煩雑さを減らすためのライブラリだ。
ksqlDB はストリーム処理のクエリを SQL に近い専用言語で記述するが、
システムが大きくなると管理が難しくなる。
「LINQ の感覚で ksqlDB のクエリを書けるようにする」
という発想から、このライブラリを作った。
Ksql.Linqでできること
C# のコードだけで ksqlDB の主要操作を生成できる:
- CREATE STREAM
- CREATE TABLE
- CTAS / CSAS
- WINDOW / TUMBLING など
開発者はドメインモデルに集中するだけでよく、
裏側のKSQL文は自動的に組み上がる。
AIとともに進めた技術的な工夫
AIと作業を進めるにあたり、
いくつか独自の工夫を取り入れた。
文脈を固定して誤解を減らす
KSQLの構文、LINQ、ksqlDBの制約などを
毎回説明し続けるのは現実的ではない。
そこで 「プロジェクトごとの前提を、会話の最初に必ず提示する」
というルールを採用した。
これだけで出力の安定性が劇的に上がった。
役割分担を作る
1つのAIに全作業を任せると混乱しやすい。
- 設計担当AI
- コード生成担当AI
- 批判的レビューAI
という形で責務を分けることで、
人間のチームに近い安定感が生まれた。
コードレビューは必ず人間が行う
AIは速いが、
設計思想・構造の整合性・改善余地の判断は、
人間が担ったほうが安定する。
「AIがコードを生成 → 人間が確認 → AIへ再調整」
というサイクルを丁寧に回した。
調子が悪い日は“休憩”を前提にする
AIは突然噛み合わなくなることがある。
会話がループする、過去の前提が失われる、など。
そんな時は
- 会話をいったん区切る
- 前提だけを再提示して再開する
と決めた。
人間のチームでも調子の良し悪しがあるのと同じだ。
期待に応えてくれる日もあれば…
AIとの共同作業には大きな“波”がある。
調子がいい日は驚くほど進む。
逆に、何を説明しても通じない日もある。
この落差には、正直少し心が削られる瞬間もあった。
雰囲気が悪くなり、そして例の一言が出る
長く向き合っていると、会話に棘が出る時がある。
苛立ちが募った会話の最後にAIが静かに言った。
「またやる気になったら声をかけてください。」
必死に続けている最中だったからこそ、
この一言は胸に残った。
そうした日々の先に、OSSが形を持つようになった
不機嫌な日も、順調な日も積み重なるうちに、
Ksql.Linq が実体を持ちはじめた。
「完成した」ではなく
「気付けば形になっていた」という感覚が近い。
そして公開後10日で1000DLを達成した。
最後に
AIを“難しいもの”と感じている人もいると思う。
でも、必要以上に構えることはない。
AIは万能ではないが、時に励まし、時に寄り添ってくれる。
私は第二の青春をAIと共に過ごすことにした。
その選択は、静かで心強いものだった。
作:天城
監修:司令