2
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

正解のないKiro Skillsをチームでどう育てるか

2
Last updated at Posted at 2026-10-05

はじめに

こんにちは。株式会社シーイーシーのAWSコミュニティチームです。
今回は、2026 Japan AWS Jr. Championsの長井崇文が執筆します。

Kiroは、AWSが提供するAIを活用した開発環境で、仕様の整理からコード、ドキュメント、テストの作成まで、ソフトウェア開発を支援します。

その機能の一つであるAgent Skills(以下、スキル)は、特定の作業に必要な手順、参照資料、スクリプトなどをまとめ、Kiroで再利用する仕組みです。
依頼内容に応じて自動的に選択されるほか、明示的に呼び出すこともできます。

スキルはGitで管理し、チームで共有できます。
一方で、チーム全員に影響するため、変更しにくいことや、個人で試した改善がチームに広がらない、といった課題が生じます。
本記事では、スキルをチームで使っている方に向けて、個人検証とレビューを通じて、チーム共通のスキルを定期的に見直す運用方法を紹介します。

Steeringとスキルの使い分け

  • Steering:プロジェクトの前提、設計方針、規約などをKiroへ伝えるための情報
  • スキル:実装完了時の確認やレビューなど、特定の作業で使用する手順や資料

本記事ではスキルを中心に扱います。個人で試し、根拠を残してレビュー・更新する考え方は、Steeringのほか、AGENTS.mdやHooksにも応用できます。

前提:スキルのアンチパターン

Kiro公式の指針では、利用場面を具体的に説明し、スキルを簡潔に保ち、詳細資料を分離することが推奨されています。
これらも参考に、今回の運用で避けたい状態を整理します。

  • 過剰な記述:一つのスキルに無関係な作業や、長い参考資料まで詰め込む
  • 記述不足:必要な前提や、手順を採用した理由が記載されておらず、AIの推測に頼る
  • 曖昧な利用場面:いつ使うスキルなのかが分からず、選択されない、または無関係な作業に対して選択される
  • 重複・矛盾:同じ手順が複数のスキルにあり、内容が一致していない
  • 古い手順の放置:実コードや開発環境が変わっても、以前のコマンドや参照先を残し続ける

スキルは、必要な情報を過不足なく、かつ最新の状態に保つことが重要です。記述量だけで判断せず、実際に使用して見直します。

背景:なぜ、Gitで共有するだけでは更新が進まなかったのか

私たちのチームでも、プロジェクト共通のスキルをGitで管理していました。
開発が進むにつれて実コードや現在の運用との間に差が生じても、変更するとチーム全員へ影響するため、更新されにくくなっていました。

チームで共有のスキルの見直しに向けて各チームメンバーの.kiroを比較し、整理しました。
共有するスキルも、その時点で完成とすれば、同じように更新が滞りかねません。必要なのは、チームで追加・変更・削除を判断できる仕組みだと考えました。

以降では、チームでスキルを育てるための運用を4つの段階で説明します。

1. チーム共通のスキルを変える前に、個人で試す

チーム標準では、Steeringなどの個人検証用ファイルをtesting.local.mdのような名前にし、.gitignoreで除外します。
一方、スキルはSKILL.mdを含むフォルダー単位で構成するため、個人検証用のフォルダーごと除外します。

以下は、Steeringとスキルの構成例です。

.kiro/
├─ steering/
│  ├─ product.md                       # チーム共通
│  └─ testing.local.md                 # 個人検証用・Git管理対象外
├─ skills/
│  ├─ implementation-completion/        # チーム共通
│  │  └─ SKILL.md
│  ├─ propose-kiro-change/               # チーム共通・変更提案用
│  │  ├─ SKILL.md
│  │  └─ references/
│  │     └─ change-proposal.md          # 提案テンプレート・レビュー観点
│  └─ implementation-completion-local/  # 個人検証用・Git管理対象外
│     └─ SKILL.md
└─ .gitignore

個人検証用のSteeringはファイル名に.localを付けます。一方、スキルはSKILL.mdというファイル名が決められているため、フォルダー名の末尾に-localを付けます。
※ .localと-local:共有対象を判別するために設けたチーム独自の命名規則です。

次は、.kiro/直下の.gitignoreに設定した除外ルールです。

# Steeringなどの個人検証用ファイル
**/*.local.*
**/.local.*
# 個人検証用スキル
skills/*-local/

.gitignoreと.kiroignoreは用途が異なります

  • .gitignore:個人検証用のファイルやフォルダーをGitの管理対象から除外するための設定
  • .kiroignore:指定したファイルやフォルダーをKiroから参照されないようにするための設定

.gitignoreへ追加しても、Kiroからの読み取りやスキルの自動選択は無効になりません。また、すでにGitで管理しているファイルは、後から.gitignoreへ追加しただけでは除外されません。

2. 試した結果を添えて提案する

個人で有用だったスキルでも、そのまま全員の作業に合うとは限りません。
チームへ提案するときは、SKILL.mdをただ共有するのではなく、変更理由と確認結果をPRに添えます。

残す情報 記載する内容
解決したい課題 どの作業で困り、なぜ手順を追加・変更するのか
利用する場面 開始時に必要な情報、対象外の作業、期待する成果物
確認結果 どの依頼・作業差分で試してどう動いたか、何がまだ未確認か
変更の影響 既存のスキルやチーム規約との重複・矛盾、必要な実行環境
採用後の確認方法 確認する担当・時期、次の作業で確かめること、見直す条件

「便利だった」という感想だけでなく、ほかのメンバーが採否を判断できる材料をそろえるためです。
AIには、実際の差分や試行結果を渡し、変更理由の整理を補助させます。

/propose-kiro-changeはチーム独自のスキルです

Kiroが標準で提供するコマンドではありません。本記事で紹介する運用を支援するため、チームで作成しました。

チームで共有する標準として、この/propose-kiro-changeを用意しました。
対象の差分と試行結果から変更案・影響・未確認事項を整理し、共有ファイルの変更前に人による承認を求める手順にしています。
主な手順はSKILL.mdに、提案テンプレートと詳細なレビュー観点はreferences/change-proposal.mdに置き、必要な場面で参照するよう指示しています。

3. チームレビューを続けられる形にする

今回の運用で最も負担が大きいのは、チームレビューです。
スキルはコードのように、コンパイルや自動テストだけで正否を判断できません。
一方で、文章をコード以上に細かくレビューすると、表現の好みについての議論が増え、更新が再び止まりやすくなります。

そこで、表現の好みを一行ずつ確認するのではなく、その手順が必要な場面で役立ち、意図しない場面に悪影響を及ぼさないかを基準にします。

レビュー基準

  • チームに共通する課題への対策か
  • 手順を追加・変更する理由が明記されているか
  • 利用する場面、必要な入力、期待する出力、完了条件が明確か
  • 既存のスキル、チーム規約、実コードと重複・矛盾していないか
  • 対象となる依頼で意図した結果が得られるか
  • 無関係な依頼で誤って選ばれず、必要な確認や人による承認が維持されるか
  • 不要になった場合の削除・切り戻し条件があるか

レビューの負担を抑える工夫

  • 共通の提案テンプレートを使い、前節の項目をPRへ記載する
  • 表記だけを議論せず、Kiroの動作や判断が変わる部分を優先する
  • レビュー担当者と利用者を明確にし、全員が同じ内容を重ねて確認しない
  • ファイルの重複・矛盾・参照切れを確認する静的レビューと、実際の依頼で確認する動作レビューを分ける

AIには、既存ファイルとの重複や参照切れ、レビュー観点の確認を補助させます。
ただし、提案を自動採用せず、最終的な採否は人が変更理由・差分・試行結果を確認して決めます。

4. 定期的に.kiroを持ち寄り、見直す

合意した内容をチーム共通のスキルへ反映したら、重複した個人検証用スキルは本人の確認のもとで整理し、実際の開発で意図どおり使えるかを確認します。
ただし、採用時に適切だった手順も、そのまま使い続けられるとは限りません。定期的に見直す理由は、主に次の3つです。

  • 利用状況の変化:使われなくなった手順や、個人の中にとどまる改善を把握するため
  • 開発環境の変化:実コード、コマンド、参照資料と手順のずれを確認するため
  • モデルや推奨手法の変化:スキルの書き方や情報の渡し方に関する知見が更新され、以前の制約や情報量が現在も適切とは限らないため

以下はClaude Codeの事例です

AnthropicによるClaude Codeの解説を、コンテキスト設計を見直す事例として参照しています。Kiroの仕様や公式見解を示すものではありません。

同記事では、モデルの進化に合わせて、過剰な制約や重複した指示を整理する考え方が示されています。
スキルも簡潔に保ち、詳細な情報は必要な場面で参照する構成が紹介されています。
これは「丁寧に書く必要がなくなった」という意味ではなく、チーム固有の知識は残し、詳細は必要に応じて参照できるようにするという見直しです。

見直す際は、各メンバーの.kiroの構成と、共有可能な内容を持ち寄る方法を推奨します。
Gitで共有しているスキルだけでなく、個人で試した変更も並べることで、対話につなげます。

まとめ

スキルは、Gitで共有して終わりではありません。
チームで定期的に対話し、実際の動作を確かめながら、育てていくものだと考えています。

  • .kiroの構造を把握し、共有範囲・参照先・変更の影響を理解する
  • 個人で試した工夫を持ち寄り、根拠を添えてチームでレビューする
  • 定期的に見直し、追加・修正・統合・削除を判断する

次回の振り返りで、各自が使用しているスキルを一つずつ持ち寄り、違いを確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。


※本記事は2026年9月時点の情報に基づいて執筆しています。

2
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
2
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?