「データ活用」をキーワードにネットで検索すると、導入したツールの成功事例の記事を
よく見かけますが、「これからデータ活用を進めようとしている方」にとっては、
「どうやって導入するまでに至ったのか?」も気になるのではないでしょうか?
そんな「これからデータ活用を進めようとしている方」に向けて
弊社におけるデータ活用を進めるまでの道のりを
* 目的設定編
* 稟議決裁編
* 導入編
* 運用体制構築編
の全4回に分けてご紹介します。
「上手くいったこと」もあれば、「上手くいかなかったこと」もあるので、
ざっくばらんに書きたいと思います。
全4回のうち、本記事は「導入編」として、システム導入を進める上で困ったことと
その対策についてご紹介したいと思います。
前提
「目的設定編」および「稟議決裁編」で記載した通り、弊社におけるお客様に関する
情報の活用は、Salesforceにデータを蓄積して、Tableauで分析・可視化を行っています。
そのため、Salesforceの導入とTableauの導入の2つのプロジェクトがあったのですが、
この記事ではTableauの導入に絞って記載します。
要約
「データ活用・可視化」の目的は「いい感じのダッシュボードを作る事」ではありません。
私は「データ活用・可視化」の目的とは、
ダッシュボードを見た人に、データから読み取った気付きをストーリーとともに伝え、
ダッシュボードを見た人の行動を変えること
だと解釈しています。
このポイントを外さないように要件定義を行うことが、エンドユーザーに使ってもらえる
データ活用の進め方になると思います。
要件定義って難しい
ある程度データもそろってきて、「よし、可視化しよう!」となったとき、
まずは各部門がどんなデータを見たいのか?を聞いて回りました。
多くの方々から様々な切り口のいろんな要件を集めることができたので、
まずはスプレッドシートで整理をしていきました。
いろんな要件が集まってきたのですが、中身を見ていくと「ヒト・モノ・カネ」という
よくある分類に分けることができそうだと考え、この3つの切り口で要件をグルーピングし、
似たような要件をまとめ、設計の大枠を文字ベースで固めていきました。
次に、文字ベースの設計から、スライドを使ったダッシュボードの草案を作っていきました。
この時点ではTableauにログインしたことがあるくらいの状態だったので、
スピード感を持った進め方ができたと思います。
スライド1枚を1ページに見立てて、「この情報はここに置こう」とか、
「この情報は過去からの変化を見たいから折れ線グラフがいいかも」とか、
「この情報とこの情報は近い場所にあったほうがわかりやすい」とか、
「確か人の目線は左上からZ字型に進むらしいから・・・」みたいなことを試行錯誤しながら
何となく配置してみて、完成イメージ図を作っていきました。
弊社では初回のTableauのダッシュボードの構築はベンダーに依頼をしたのですが、
実際にベンダーとの打ち合わせが始まるまでに、ざっくりでもよいので、
完成イメージ図はあったほうが良いと思います。
システム導入では鉄則かと思いますが、まず最初に完成イメージ図を作ることは重要です。
私は先に作った完成イメージ図に沿って必要な項目を決めて、
その項目を業務分類と照らし合わせてグルーピングすることで
Salesforceのオブジェクト構成(いわゆるテーブル設計)を決めました。
あとはインプットのしやすさを鑑みながら微調整を加えることで
全体設計を作っていきました。
今振り返ってみても、進め方としてはそんなに間違っていなかったと思います。
ただ、重要なポイントが抜けていました。
それはダッシュボードの目的です。
完成イメージ図を持って、要件を出してくれた方々に意見をもらいに回ったのですが、
いまいち反応が良くありませんでした。
具体的な指摘はないのですが、表情を見ていると「なんか思ってたのと違う」といった感じ。
そんな時にまた上司にレビューをしてもらいに行きました。
そこでもらったコメントは衝撃的でした。
「なんでもグラフにしたがる病なの?」ってのもなかなかの衝撃だったんですが(笑)、
「ダッシュボードって気付きを与え、意識を持たせるもの。
それも見に行かせるじゃなくて、自然と目に入って意識させるようにすることが大事。」
このコメントは後日触れようと思っている「DATA Saber」という独自の認定プログラムの
カリキュラムを通じて体系立てて学んだことでより理解が進んだのですが、
ダッシュボードの目的とは、ただ数字を見やすい形にするだけではなく、
「見た人に何かの気付きを与えてその気付きを意識した行動を促すこと」と
私は理解しました。
加えて、「自然と目に入る」というポイントも重要で、
私はダッシュボードがストーリーを持つことでそれが実現できると感じました。
考えは理解したものの、それってどーすんのよ、と。
どんな行動を促したいのか?
これを考えることが本当の「要件定義の難しさ」だと思います。
置かれている状況と自分の経験を踏まえて、時には他人の意見を取り入れながら、
あーでもない、こーでもない、と考え続けるしかないと思います。
何を?どの切り口で?どの単位で?
一難去ってまた一難って感じです。でも、慣れてくると楽しくなってきますし、
慣れてきても飛ばしちゃいけないと思うステップの話です。
ある程度、目的も固めて、完成イメージ図もブラッシュアップしたつもりではいたのですが、
「いざ実装」となるとまだまだ考慮が足りていませんでした。
「何を?」「どの切り口で?」「どの単位で?」
このやり取りをベンダーの方と散々やりました。
この問いかけ、今思うとTableau初心者にとってはとても親切な聞き方だなーと気付きます。
Tableauでいうところの
・メジャー
・ディメンション
・Level of Detail(詳細レベル)
の話です。今では自分でもダッシュボードを作っているのでわかるのですが、
これらが揃ってないとダッシュボードというか、1つのグラフもまともに作れません。
上記3つの質問を肉付けする形で、5W1Hを補足していくことで、ようやくTableauを
使い始められると思います。
ちなみに私は今では次の順番で考えるように意識しています。
1. 現状と課題の整理(Why)
2. 課題に対する解決策の概要(How)
3. ダッシュボードの対象とする閲覧者(Who)
4. ダッシュボードの利用頻度/データソースの更新頻度(When)
5. ダッシュボードの利用シーン(Where)
6. ダッシュボードでできること(What)
7. Vizに配置する各グラフのメジャーとディメンション
ここで考えたことはドキュメントに残していて、Tableauでの作業を開始する前に
レビューができるようにしています。
Tableauの操作に慣れ始めると、ついつい手を動かしたくなってしまうのですが、
思考の整理のステップを飛ばすと、私だけかもしれませんが、大概、沼にハマります。
まとめ
そんなこんなで、Salesforce構築6か月、Tableau構築2か月を経て、
本番運用を開始することができました。
Tableauは何か操作をすると、すぐに何かを表示してくれるので、その操作性の良さから
ついつい触りたくなっちゃいます。そんな誘惑に負けないように気を付けてください。
何よりも大切なのはダッシュボードの目的を定めることです。
そして、ここで言う目的とは「どう可視化するか?」ではなく、
ダッシュボードを見る人に
・どういうストーリーで
・どんな気付きを与えようとしていて
・どんな行動の変化を促したいか
です。
最後に
本編で導入まで終わりました。
これでようやくひと段落ついて、、、と思いますよね。
「導入しました。あとはよろしくー」で終わらないんですよね。
作ったものを組織に浸透させて、維持・継続していかなければなりません。
次回の「運用体制構築編」では、導入を振り返ってみて、維持・継続の観点で
どんな課題があって、その課題に対してどんな対策を打ったか?をご紹介したいと思います。