【2/3】シンギュラリティとAI:ードラえもんが見せた未来ー
【前回: 技術革新の歴史:ー 鉄腕アトムが教えてくれること ー】
■ 導入:もう一人の「未来人」
前回、私たちは手塚治虫の『鉄腕アトム』を通じて、「未来人の視点で未来を見る」という思考実験について考えた。平賀源内のエレキテル、ライト兄弟の飛行機。当時は「奇妙な実験」でしかなかったものが、未来から見れば明白な「特異点」だった。
では、もう一人の「未来人」に登場してもらおう。ドラえもんだ。
1969年、藤子・F・不二雄は『ドラえもん』の連載を開始した。22世紀(2112年)からやってきたネコ型ロボット、ドラえもん。四次元ポケットから取り出される「ひみつ道具」の数々は、子供たちの夢を掻き立てた。
手塚治虫が2003年を舞台にしたのに対し、藤子・F・不二雄は22世紀を選んだ。約100年先の未来。そこで描かれた技術は、今、どこまで現実になっているのだろうか?
■ 展開:ドラえもんが見せた未来、そして今
実現しつつある「ひみつ道具」
「ほんやくコンニャク」——食べると、どんな言語も理解できるようになる道具。2025年の今、私たちはリアルタイム翻訳アプリを持っている。Google翻訳、DeepL、そしてAIを使った同時通訳。完璧ではないが、異言語間のコミュニケーションは劇的に容易になった。
「暗記パン」——食べたものを完全に記憶できる道具。これは実現していないが、検索エンジンとAIが「外部記憶装置」として機能している。知りたいことは即座に検索でき、ChatGPTに質問すれば詳しい説明が返ってくる。「記憶する」必要性そのものが変わりつつある。
「タイムマシン」——これはまだSFの域を出ない。しかし、量子コンピュータ、相対性理論の応用研究は続いている。100年後、どうなっているか。
AIという特異点
ドラえもん自体が、高度なAIを持つロボットだ。感情を持ち、のび太を心配し、時には怒り、時には笑う。2025年の今、ChatGPT、Claude、Geminiといった大規模言語モデルが登場し、人間のような会話ができるようになった。
しかし、これらのAIは「心」を持っているのだろうか?
ドラえもんには明確に「心」がある。のび太を助けたいという「意志」がある。一方、現在のAIは統計的なパターンマッチングに過ぎない、という見方もある。だが、私たち人間の「心」や「意志」も、脳内の電気信号とシナプスの結合パターンに過ぎないとも言える。
AIの不完全性と可能性
2025年のAIは、驚くべき能力を持つ一方で、明らかな限界もある。
ChatGPTは流暢に文章を書くが、時に事実と異なることを自信満々に語る(ハルシネーション)。画像生成AIは美しい絵を描くが、人間の手の指の本数を間違える。AIが運転する自動車は、予期せぬ状況で判断を誤ることがある。
つまり、AIは完璧ではない。しかし、これは重要な示唆を含んでいる。
エレキテルは完璧な発電装置ではなかった。ライト兄弟の飛行機は、わずか12秒しか飛べなかった。それでも、それらは「特異点」だった。完璧でなくても、「できる」という事実が、技術革新の連鎖を引き起こす。
■ 考察:シンギュラリティは必然か
「シンギュラリティ(技術的特異点)」——AIが人間の知能を超え、自己改良を繰り返し、予測不可能な速度で進化する転換点。2045年に訪れるという予測もある。
これは本当に起きるのだろうか?
歴史を振り返れば、答えは見えてくる。
エレキテルから200年で、私たちは電気なしでは生きられない社会を作った。ライト兄弟から120年で、年間40億人が空を飛ぶようになった。コンピュータが登場して80年で、誰もがスマートフォンを持つようになった。
技術革新の速度は加速している。そして、一度始まった技術革新の流れは、止まったことがない。
藤子・F・不二雄がドラえもんを描いたとき、彼もまた「2112年の未来人」になったつもりで考えたはずだ。そこから逆算して、「2025年はこうなっているはず」「2050年はこうなっているだろう」と。
そして今、私たちが「2045年の未来人」になったつもりで考えるなら?
「2025年。ChatGPTが登場してまだ2年だった。多くの人がAIの可能性と危険性について議論していた。まだ誰も、あの年が転換点だったとは気づいていなかった」
歴史が証明している。特異点は、いつも「後から振り返って初めて見える」ものだ。しかし同時に、その兆候は必ず「今」に現れている。
■ 橋渡し:私たちは何をすべきか
ドラえもんが見せた未来は、徐々に現実になりつつある。AIは不完全だが、それでも確実に進化している。シンギュラリティが必然だとして、私たちは何をすべきなのか?
恐れるべきなのか?期待すべきなのか?それとも、静観すべきなのか?
次回【3/3】では、これまでの考察を総括し、AI時代を生きる私たちへのメッセージとして、未来への展望を語りたい。
【次回: 総括と展望:AI時代を生きる私たちへ】