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TikTokやYouTube Shortsを見ていると、たまに流れてきます。

「5人の海賊が100枚の金貨をどう山分けするか」
「ジャンボジェットにゴルフボールは何個入るか」
「マンホールの蓋はなぜ丸いのか」

こういった問題です。コメント欄には「これ解ける人すごい」「Microsoftの採用試験らしい」「これがGoogleの面接だ」と並んでいます。一度は見たことがある方も多いと思います。

こうした問題は、しばしば有名IT企業の採用試験として語られます。そして実際に、その種の問題が面接で使われていた時期がありました。ところが、それを有名にした当の企業たちは、いまではあまり使っていないようです。なお採用の話は年々変わりますので、細かい点は「いまのところ」くらいに受け取っていただければと思います。


昔は、本当に出ていた

これは丸ごと都市伝説というわけではありません。1990年代から2000年代前半にかけて、MicrosoftやGoogleの面接で、いわゆる「ブレインティーザー(脳トレ問題)」が実際に使われていました。

Microsoftのパズル偏重ぶりは、ジャーナリストのウィリアム・パウンドストーンが取材して書いた『How Would You Move Mount Fuji?』(邦題『ビル・ゲイツの面接試験』)という本にまとまっています。サブタイトルはそのものずばり「Microsoft's Cult of the Puzzle(マイクロソフトのパズル教)」です。この本に出てくる「マンホールの蓋はなぜ丸いのか」などは、実際に使われた定番として知られています。

Google側でも、「飛行機にゴルフボールは何個入るか」のような問題が長く使われていました(これは後で本人たちが認めることになります)。一方で、動画で人気の「海賊の金貨」のような問題は、どこの誰が最初に面接で出したのかはっきりしないまま、「IT企業の採用試験」として広まっている面もあります。出どころが確かなものと、雰囲気で語られているものが、混ざっているということです。


せっかくなので、一問だけ見てみる

有名なものの一つに、Googleの面接で出たとして知られる「卵落とし」の問題があります。

100階建てのビルがあり、卵は2個。ある階より上から落とすと割れ、それ以下なら割れません。その境目を、できるだけ少ない回数で当てたい。割れた卵はもう使えません——というものです。答えは、最悪でも14回ほどで特定できる方法がある、というものです。

ただ、この問題の面白いところは、「14回」という数字そのものではありません。面接官が見たかったのは、制約を整理できるか、もっともらしい仮説を置けるか、試行回数を減らす工夫を思いつけるか、といった考え方の過程でした。パズルそのものというより、思考を観察するための道具として使われていたわけです。

ところが後になって、その道具自体が本当に役に立っているのか、疑われるようになります。


ところが、問題があった

時間が経つと、素朴な疑問が出てきます。この問題は、本当に仕事ができる人を見抜けているのか、というものです。

卵の問題をうまく解ける人が、チーム開発が得意とか、障害対応ができるとか、顧客と交渉できるとかいう保証はどこにもありません。逆に、優秀なエンジニアでも、その場で初見のパズルを解くのは苦手、という人もいます。パズルの出来と仕事の出来は、別物だったようです。


Google が、データで否定した

これに事実上のとどめを刺したのがGoogleでした。2013年、Googleで人事部門のトップを務めていたLaszlo Bockが、ニューヨーク・タイムズのインタビューでこう述べています。

ブレインティーザーは完全に時間の無駄だと分かった。何も予測しない。あれは主に、面接官が自分を賢いと感じるために役立っているだけだ。

膨大な採用データを分析した結果、パズルの成績とその後の仕事の成果には、ほとんど相関がなかったとされます。面接官は「この人は頭が良さそうだ」と感じていたものの、その感覚は実際のパフォーマンスとあまり結びついていなかった、ということになります。


なぜ流行ったのか

これは採用だけの話というより、「測りやすいものを、つい測ってしまう」という、もっと一般的な傾向に見えます。

論理パズルは採点しやすく、その場で答えが出て、優劣もつけやすい。一方で実際の仕事は、要件が曖昧で、正解がなく、人間関係があり、制約だらけで、測りにくい。だから測りやすいパズルが「能力の代理」として使われたのだと思います。けれど代理は、あくまで代理でした。


いまは何を見ているのか

そういうわけで、最近はパズルよりも、コーディングテストやシステム設計、実務に近い課題、過去の経験の深掘りといった、「その人が実際に働く姿に近いもの」を見る方向へ移ったとされています。

もっとも、これで万事解決とも言い切れません。コーディング面接はLeetCode的な問題の暗記に偏りがちだとか、生成AIで簡単に答えが出てしまうとか、新しい批判もすでに出ています。ふるいがまた一つ、見直されはじめています。


おわりに

TikTokで流れてくる論理パズルは、いまでも面白いです。私もつい見てしまいます。ただ、「この問題が解ける人 = 仕事ができる人」ではありませんでした。そして、それをいちばんよく知っているのが、かつてその問題を採用試験で使っていた当の企業たちでした。

会社は「良い人材を見抜くふるい」を、なぞなぞからコーディングへ、そしてその次へと、何度も作り変えてきました。面白いのは、どの時代も「今度こそ見抜ける方法を見つけた」と信じていることです。そして数年後には、その方法自体が見直される。

動画で流れてくるあの問題は、いまではもう、使われなくなったふるいの一部なのかもしれません。ただ、それを笑うのは少し早い気もします。いま私たちが使っているふるいも、10年後には同じように「昔はあんな方法で採用していたらしい」と語られているのかもしれません。

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