SNS上の「見える世界」には大きな偏りがある
現代において、SNS上で我々が見ている世界は
現実とかけ離れているという事態がしばしば発生する。
その理由は大きく2つある。
1つ目はフィルターバブル現象について。
これはSNS上に表示される投稿が、自分の興味に最適化されるというものだ。
SNSのアルゴリズムが、ユーザーの過去の行動(いいね、閲覧履歴など)から好みを分析し、ユーザーの注目を浴びる情報を優先的に表示する。
2つ目は、エコーチェンバーについて。
こちらはユーザーの心理が大きく起因している。
似た興味関心を持つ閉鎖的なコミュニティの中で、自分と同じ意見を持つユーザー間でのみ情報交換が行われ、特定の主張が増幅されるという現象だ。
他にも、SNS利用者自体が均質ではないといつ母集団の偏りもある。
これらが引き起こす見える情報の偏りは、捉え方を誤ると非常に危険だ。
そもそも人間は主観的な生き物である
「実際のところ人は感情をもとに判断を下し、その後で論理的な理由を探す」という心理学の有名な法則がある。
どうやら我々の脳は、主観的に判断するよう進化してきたらしい。
判断において、正確さより早さを優先した結果、このような脳の作りになったと思われる。
では、どうやって人間は客観的に物事を判断しているのだろうか?
読者の頭にもいくつか思い浮かぶものがあると思うが、世の中には、1個人の主観で決められないことに溢れている。
データを見て、統計的手法を用いる
「それってあなたの感想ですよね?」
というひろゆき氏の発言から、主にネット上で流行ったこのフレーズ。
この発言の意図は、相手の意見や主張が主観的な「感想」であり、客観的な根拠に欠けることを指摘している。
これに対抗する最も再現性のある手法が、データを見て、統計的に優位であることを証明するだ。
まずデータ(数値)を見るだけで、おおよその規模感がわかる。
■アイスクリーム屋の売上の話
ある日、バイトのAさんが言います。
A「昨日、めっちゃお客さん来てました!アイスが大人気です!」
さらにバイトのBさんは言います。
B「いや、そんなに来てないですよ。私の感覚では普通でしたよ」
このように時に人の感想は異なる。
◆ ① まずデータ(数字)を見る
・昨日の来店客数: 120人
・過去1ヶ月の平均: 100人
・標準偏差: ±15人
これだけで…
120人は「まあまあ多いけど、めっちゃ多いとは言えない(平均+20人なので、ざっくり1.3σ)
Aさんの「めっちゃ多い」は誇張、
Bさんの「普通」はちょっと控えめ。
と実態が即座にわかる。
◆ ② 検定を行い、統計的に有意か検証する
t検定を始め、様々な検定が存在するが、
ここでは検定を通して、統計的に有意である
🟰偶然だけで起きたとは考えにくい
を証明することができる。
ここで注意したいよくある誤解
❌ 有意=重要
❌ 有意=大きな効果
❌ 有意=経営判断に使える
有意性は「偶然ではなさそう」というだけで、
ビジネスの現場では効果量の大きさや経済的インパクトを見る方が重要な場合がよくあるということを添えておく。
これから社会人になる学生に向けて
初めて論文(卒論)を書く学生へ
論文において、以下のような結論の書き方は多くの指摘をもらうだろう。
この施策をやってみたが効果があった
まるで感想のようなこの文章は、
具体的にどこが悪いのかまとめてみた。
■考えられる指摘事項
1️⃣ 何がどれくらい増えたのか不明
2️⃣ 比較対象が不明
3️⃣ 偶然の可能性が排除されていない
4️⃣ 再現性がない
上記の場合、理想的な論文の結論は以下のようになる。主観を除いて統計を用いる。
本施策を初めて実施した今年の売上は、過去5年間の平均より〇〇円多く、対応のないt検定の結果、有意水準5%で統計的に有意な増加が認められた(p < 0.05)。
特に文系の学生においては、なかなか授業で統計学を学ぶ機会が少ないかと思う。
しかし統計学は文系・理系問わず
皆んなが学ぶべき領域だと私は思っている。
なぜなら、統計学は最強の学問だから。
本ブログのタイトル「それってあなたの感想ですよね?」にも対抗できる。
これから社会人になる学生へ
会社員になると年初に目標を立てろ!
と指示を受けて、今期のKGIやKPIというものを考えねばならぬ時がある。
そんな時に「仕事を一生懸命頑張る」みたいなKPIを書くと、おそらく上司から総攻撃を受けるだろう。
でも大丈夫。
安心して欲しいは、
このように書く大人は世の中に沢山いる
そこであなたが新人には珍しい非の打ち所がないKPIを設定したら、上司から一目置かれるはずだ。
ちなみに会社員が立てるKPIのサンプルは、職種や職位ごとにたくさんネット上に転がっている。
会社では年初の目標だけでなく、
日々の進捗報告からプロジェクトの最終報告など、ほとんどの場面で主観ではなく定量的な報告が求めらる。
統計学のおすすめの教材をご紹介
最後に個人的にわかりやすくて、芯をついてると思った教材を紹介する。
①YouTube「ヨビノリ」
本チャンネルの確率統計シリーズ
②栗原伸一(著)入門 統計学 第2版
後半は少し難しいのですが、前半だけでも読む価値はあります!
統計的手法を用いて、物事を論じられるようになると社会に出ても多くの場面で活躍します。
