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ムダな資格集めとはもうサヨナラ 「自分の教育マップ」の作り方

Last updated at Posted at 2018-04-01

こんにちは。会議の計測ツール「minmeeting」を開発している伊勢川です。

はじめに

4月に入り、新たに社会人エンジニアとしてデビューする方も多いと思います。そこで、今回はこの業界に新たに参入する(業界経験3年目以内)若手のエンジニアの皆様に向けて、記事を書きます。教育を担当する方々もぜひご参考までに一読いただければ幸いです。

テーマは「自分がエンジニアとして一人前になるための教育マップ」の作り方です。

何にでも興味があって、何でもやる気があふれている若いうちは、手当たり次第いろいろなものをつまみ食いして、結局何も身にならなかったということがよくあります。また、自分の実力の無さの不安を資格集めで紛らわしている人もよく見かけます。目標と計画をきちんと立てて、同じだけの労力を費やせば、もっと一角の人物になれたかもしれないのに。

これは自分自身が経験した失敗でもありますが、その後10年以上に渡る後輩の指導経験も合わせて、そういった失敗を防ぐ方法をいろいろと考えました。今のところの答えが、「自分の教育マップ」です。

自分の教育マップとは何か

「自分の教育マップ」とは、自分が目標としている姿に到達するまでの道を示す地図のことです。

目標、スキル・経験シート、書籍リスト、資格リスト、スケジュールで構成されます。

なぜ自分で作らなければならないのか

会社によっては教育コースが既に整備されており、学歴や入社時の成績や配属予定先などによって、自動的に教育コースが定まるようなシステムのところもあります。そのような制度は十分活用すればいいでしょうが、漫然と受動的に教育を受けているだけでは、かなりのリスクがあります。自分がどの教育コースに割り当てられたかによって、自分の意志とは関係なく、その部署の先輩と同じような量産型のサラリーマンに仕立て上げられ、運が悪いと会社の一歩外に出ると全く通用しないようなスキルを散々教え込まれてしまいます。

他方で、多くの会社はろくな教育制度も整っておらず、現場任せで毎年2年目や3年目の先輩が場当たり的に考えたプログラムを実施していたり、そもそも教育などないといった会社さえ存在します。また、組織再編が頻繁に起こり、1〜2年に1回は異動したり上司が変わる会社もあり、このような会社では異動のたびに教育方針が変わります。

このような場合は、会社の教育方針に受動的に従っているだけでは絶対にダメです。右往左往しているうちに、あっという間に使えないオッサンになってしまいます。

10年で9割の会社は潰れると言われています(※この数字は新規開業のときの話。5年続いた会社が10年後に潰れる確率はもっと低い)。自分の人生のプランを会社に任せてしまうのは愚かなことです。自分の成長の地図は自分で作るべきです。また、自分で考えた地図であれば、自分には最もわかりやすいはずです。

ぜひ自分の教育マップは、自分の頭を使って考え、自分の手で作ってください

自分の教育マップの作り方

さて、ここからは具体的に順を追って、その地図の作り方を紹介します。

先人から情報を集める

先人を観察する

まずは、成功している人、うまくいっていない人を探してその人達を観察しましょう。人の話をそのまま受け取るのではなく、自分の目で確認します。そして、うまくいっている人とそうでない人の違いは何かを分析します。

社内だけでは大した人がいないかもしれないので、社外にも目を向けましょう。ただし、社外の人はすごそうに見えるかもしれませんが、ネガティブな情報は社外に出す際にカットされるので、フィルターがかかった情報しか得られないという点は考慮に入れておいてください。

特徴を分析する際の観点は下記の通りです。

  1. 成功している人の特徴を探す際の観点
    • どういう理由で評価されているのか(戦略・能力・人柄・安定性・過去の実績・周囲の評判・環境?)
    • その人の行動はうまくいってない人と何が違うのか
    • その人がそこまで至る道程はどのようなものだったのか
  2. うまくいっていない人の特徴を探す際の観点
    • どういう理由でうまくいっていないのか(戦略・能力・人柄・安定性・過去の実績・周囲の評判・環境?)
    • その人の行動は成功している人と何が違うのか
    • その人は何を変えればうまくいきそうか

先人にヒアリングする

次に、先人から話を聞いてみましょう。

ヒアリングする相手はどのような人がよいか

  • きちんとものを考えて行動している人であることが大前提。何も考えずに、なんとなく会社に通ってるだけの人に話しを聞いても無駄。
  • 口では偉そうなことを言っているが、自分では何もやらない社内評論家タイプの人も避ける。ネガティブオーラが伝染して自分のやる気も奪われるので、迂闊に近寄るべからず。
  • ある程度尊敬できるような先輩を選ぶ。尊敬できる人の方が話を受け入れやすい。
  • 自分の年次の2倍ぐらいの先輩を選ぶ。あまり年次が離れていると、昔の記憶がいいようにすり替わっている可能性が高い。

どのような内容を聞けばよいか

ヒアリング項目としては下記のようなものがあります。もちろんすべて聞く必要はありません。状況に応じてピックアップをしてください。

  1. 現在について
    • 現在どういったミッション持っていて、どのような仕事をしているか?
    • その仕事ができるようになるには、どういう知識・スキル・経験が必要か?
    • 今現在のスキルの到達レベルは何合目か?もしまだ頂上じゃないとしたら、そこにたどり着くまでに何をすればよいか?
    • 最近興味を持って勉強していることは何か?
  2. 過去について
    • 自分と同じ年次のときにどういう仕事をしていたか?
    • 自分と同じ年次のときに何を勉強していたか、それはなぜか?
    • どんなを読んだか、どんな資格をとったか、その他どういう勉強をしたか?
    • 何が一番役に立ったか?それはなぜか?
    • 何があまり役に立たなかったか?それはなぜか?
    • もう一度自分と同じ年次に戻ったらどのような順番で何を勉強するか?
  3. 未来について
    • 将来どういった仕事がしたいか
    • そのために今どういった取り組みをしているか?あるいはやろうとしているか?
    • 目標にしている先輩、参考にしている先輩はいるか?

ポジショニングを決める

次にポジショニングについて考えてみましょう。

ポジショニングは活躍するために結構大事な要素です。例えば、自社サービスでAzureを使っていて今後も変える予定はないのに、AWSの専門家というポジションを目指すのは無謀です。いくら勉強を頑張っても、仕事がないのでは専門家として活躍することはできません。これは極端な例ですが、成果に結びつかない間違った努力をしている人は案外多いので注意が必要です。

それでは、ポジショニングを考える際のポイントを紹介します。

  1. 仕事で必要とされている(あるいは近い将来必要とされる)領域を狙う
    前述の例の通り、仕事がなければ実務経験も得られないし、活躍もできないためです。

  2. ライバルは居たほうがよいが、圧倒的な先達がいない領域を狙う
    ライバル不在のニッチな領域を狙うと、ちょっと勉強しただけで第一人者になれますが、ずっと独学を続けなければならないため視野が偏ってしまいがちです。そのため、身近にライバルがいるような領域の方がよいです。また、圧倒的な先達がいると、その人を差し置いて新しい切り口を持ち込みにくいため、圧倒的な先達が居ない領域を狙った方がよいです。

  3. 最初は広く浅く、そして徐々に深めていく(狙う領域は狭くしすぎない)
    まだ全体像を知らないのに、最初から的を絞りすぎると、外す可能性が高くなります。まずは広く浅く視野を広げてから、自分に合った領域を見つけていった方がよいでしょう。また、分野を絞った方が専門性は高くなるような気がしますが、専門性が高くても仕事の役に立たなければ意味がありません。そして、たいていの仕事は、広い分野の見識が必要となります。そのため最初は分野を絞ってもよいですが、徐々に実務で役立つレベルまで領域を広げていきましょう。

  4. 異色の組み合わせの領域を狙う
    既に名前がついているような専門分野には、必ず先人がいます。先人がいたほうが、その分野を深めるには楽ですが、それだけで先人に追いつき、追い越すことはできません。そこで、一つの分野だけを追うのではなく、複数の分野を組み合わせるのがおすすめです。例えば、「データベース×デザイン×法律」とか、「機械学習×物流×コーヒー」などのように、複数の分野を組み合わせることによって、先人と真っ向勝負しなくてよい領域を見つけます。さらに可能なら、自分ならではの異色の組み合わせを見つけられるとよいです。

目標と期間を絞る

社会人になりたての頃は、あれこれといろいろやりたいことがあるでしょう。しかし、あれもこれもと手を付けていると、何も成し遂げないまま、1年、2年とあっという間に過ぎてしまいます。

10年後の目標や人生の目標などは、あってもよいですが、なかったとしても無理に作る必要はありません。社会経験が浅く、経験やデータが少ない段階で長期の計画を立てても、現実的なものになりにくいからです。

まずは、目標を絞りましょう。目安としては、社会人1年目であれば次の1年、2年目であれば、次の2年ぐらいまでに実現したい目標を設定するとよいでしょう。

自分の実力をはるかに超えるような挑戦的な目標を立てたい人もいるでしょうが、身の程知らずな目標であっても構いません。大事なのは実際に知恵を絞って考えて、挑戦してみることです。

ただし、自分が費やせる時間だけは有限でしかもかなり少ないため、挑戦的な目標であっても、実際にやることはかなり絞り込む必要があります。

目標に到達するために必要なものをリストアップする

目標に到達するために何が必要か、最初からわかっているケースはまれで、わからないからこそ地図を作ります。ここでは知識・スキル・経験という3つの観点から目標に到達するために必要なものを洗い出す方法を説明します。

目標に到達するために必要な知識エリアを調べて整理する

  1. 分野とキーワードをリストアップする
    • 思いつくキーワードをGoogleで入力してみて、サジェストされる検索候補をたどる。
    • キーワードを変えるなどして隣接分野や別の観点での取り組みを調べる。
    • 何度か試行錯誤をすればイメージと近い分野が見つかる。
    • 分野の名前と調べる際のキーワードをメモしておく。
  2. 入門書を探す
    • 上記でリストアップした分野の入門書を探す。入門書はその分野の全体像を素早くざっと知る際に役に立つ。
    • この時点では深入りを避けるため、分厚い基本書や専門書は不要。安直な入門書で十分。
    • ネットで目次を調べてイメージ通りの分野か、求めていた知識が得られるかを確認する。
    • 1つの分野を詳しく掘り下げず、広さを優先して調べる。
  3. 入門的な資格試験を探す
    • 資格試験はその分野の知識体系をレベル別に整理してあるので、うまく活用すればすばやく必要な知識体系を習得できる。(資格試験そのものはムダではなく、資格をとっても使わないからムダになる。)
    • 試験要項などで試験範囲を調べて、求めている知識が得られそうかを確認する。

目標に到達するためにどういうスキルが必要かを洗い出す

当然のことですが、知識だけでは目標に到達することはできません。どういうことができればよいのかをスキルという形でまとめましょう。

  1. 何ができる状態になればゴールなのかを書き出す
  2. スキルに名前をつける

企画者のスキル項目シートの例(抜粋)

スキル名 説明 習得方法・必要となる知識・経験
定量調査能力 測定可能な指標を定め、計測をして数値により論証する力。 統計学の知識や統計の応用学問(心理学・ソフトウェア工学等)の研究経験。
定性調査能力 自分の経験を客観視し、同分野における学術的知識をもとに洞察を得る力。 フィールドワーク・エスノグラフィーの知識と経験。社会科学系の定性的調査法の知識。

必要なスキルを身につけるために必要な経験を洗い出す

知識を伴わない経験は無駄が多く、実践を伴わない知識は危ういものです。計画の時点から両者のバランスを考慮しておきましょう。

  1. 必要な知識やスキルを身につけるために、どのような経験をすればよいかを書き出す
  2. 経験をするためのコストが高すぎるものや時間がかかりすぎるものは除外し、経験以外でスキルを磨く方法を考える

スケジュールをたてる

項目をリストアップしたら次はそれを順番に並べてスケジュールを作成します。スケジュール作成のポイントは次の通りです。

  1. 大雑把な3カ年計画を立てる
    • 3年後にどういうレベルに達していたいかをイメージする
    • そこに至るまでの段階を3段階くらいに分解して、それぞれ1年でどういうレベルに到達しなければならないかをイメージする
    • それぞれの年に何をするか、わかりやすい名前をつける(例:「インフラの年」「Webフロントの年」「機械学習の年」など)
  2. 直近1年のクオーター目標と月間目標をたてる
    • 最初の1年の目標を4つの段階に分解し、四半期(3ヶ月)ごとの目標とする。
    • 最初の3ヶ月について、毎月の目標とやるべきことを書き出す。
  3. 実行可能なレベルに修正する
    • 月間目標まで詳細化すると、それが本当に1ヶ月で実現できそうなことか否かが判断しやすくなる。
    • 割り込みが入ることが多いので、少し余裕をもったスケジュールにする。目安としては週に20時間以内の工数に収まるようにする。
    • 1ヶ月間その計画をもとに実行してみて、自分の1ヶ月の処理能力を測り、計画を修正する。

スケジュールを実行に移す

計画を立てたら実行に移さなければ何の意味もありませんが、フルタイムで働きながら自分の目標を着実に実行するのは結構大変なことです。実行する際のポイントは下記の通りです。

  1. 週に20時間以上、仕事以外に勉強の時間を確保する
    • 目安としては、スケジュールを実行に移すために、週に20時間以上は確保しましょう。学生の頃の勉強時間と比べると圧倒的に少ないと思うかもしれませんが、フルタイムのサラリーマンが確保できるのはせいぜいこのぐらいです。
    • 20時間の確保の仕方の具体例については、下記の参考文献をご参照ください。
    • 仕事以外で勉強しないというポリシーの人もいるかもしれませんが、あまりそのポリシーにこだわらない方がいいと私は思います。会社で必要なことしか知識が入ってこないため、会社人間になってしまい、その後のキャリアにとってリスキーであるためです。近年、労働時間の規制が厳しく、企業も教育にはあまり投資をしない傾向にあるため、このリスクは高まっています。(また、私の個人的な意見としては、向学心のない人と一緒に仕事をするのがつまらないので、少なくとも自分の周りにはいて欲しくないと思います。)
  2. 週のライフサイクルを決めて、最初の2週間そのとおりやってみる
    • 週に20時間勉強するのは、最初は大変に感じるでしょうが、2週間くらいそのサイクルを回してみると次第に慣れてきます。最初の2週間は根性で乗り切りましょう。そうすれば、あとは惰性で乗り切れます。

以前、自宅で一人で開発をする際にどうやって生産性を上げるかをまとめた記事があります。一人で目標達成に向けて勉強する際に、その生産性を上げるためにも役に立つ内容だと思いますので、ご興味があればご参照ください。

実行後に振り返りを行い、勝ちパターンを洗い出す

実行ができたら、定期的に振り返りを行いましょう。

  1. 目安は四半期に1回。最低でも年に1回は振り返りを行う。
  2. うまくいった点、うまくいかなかった点を洗い出し、自分の勝ちパターンを見出す。
  3. 自分の勝ちパターンが活かせるように計画を見直す

この記事の活用方法

この記事は一人で読んで使うこともできますが、より効果を発揮する活用方法があります。

それは、「自分の教科書をつくるワークショップ」を近い年次の人達で開催することです。
みんなでやることで、下記のような効果が期待できます。

  • ワークショップの宿題ということで、先輩に質問に行きやすくなる
  • 他の頭のいい人の戦略の立て方を学ぶことができる
  • 皆の前で自分の教科書を発表することで、簡単に三日坊主では辞められなくなる

ワークショップで使いやすいよう、記事の最後に質問のテンプレートサンプルの地図をまとめました。ぜひご活用ください。

【付録1】自分の教科書・地図のテンプレート

マークダウンなので使いやすいかどうかわかりませんが、ワークショップで再利用しやすいようにテンプレートをつけておきます。

ヒアリングシート・テンプレート

項目 過去について 現在について  未来について 
ミッション・仕事内容
必要な知識・スキル・経験
到達するまでの道のり
成功談 -
失敗談 -

目標・スケジュールのテンプレート

目標設定時の検討項目

検討項目  内容 
目標・やりたいことは何か 箇条書きでリストアップする
やらないこと・優先度の低い事は何か 箇条書きでリストアップする
目標達成のための戦略 どうやって成功に導くかの勝ち筋を仮説として書いておく

スケジュール

年  クオーター 目標 やること
2018年 1Q クオーターの目標書く そのためにやることをリストアップする
- 2Q クオーターの目標書く そのためにやることをリストアップする
- 3Q クオーターの目標書く そのためにやることをリストアップする
- 4Q クオーターの目標書く そのためにやることをリストアップする
2019年 - 2年目の目標を一言で表す 具体的なイメージをメモしておく
2020年 - 3年目の目標を一言で表す 具体的なイメージをメモしておく

スキルシート・テンプレート

スキル名 説明 習得方法・必要となる知識・経験
スキル名をここに書く そのスキルの説明をここに書く そのスキルを習得するために必要となる知識や経験をここに書く

書籍リスト・テンプレート

分類 タイトル 概要 メモ
分類・スキル名をここに書く  書籍・文献のタイトルをここに書く 書籍・文献の概要をメモする 読後の評価をメモしておく

資格リスト・テンプレート

分類 資格名 受験時期 準備期間 試験概要メモ
分類・スキル名をここに書く 資格名称をここに書く 試験日を調べておく 標準準備期間を調べておく 試験概要をメモする 

振り返り・テンプレート

振り返り項目 記入欄 
当初目標 表形式の必要はないが、左記のような項目について振り返りを行い、メモをする。
成果
目標の達成率
目標と大きく乖離したのは何か
乖離の原因
対策
うまくいったこと
その原因
うまくいかなかったこと
その原因
実行してみた後の気づき
当初戦略
修正戦略

【付録2】自分の教科書・地図のサンプル

2018/4/1時点。ここで力尽きました。
過去に作成した自分のための教科書や地図は、実名などが入っていているのと、体裁があまり整っていないため、そのまま公開することができませんでした。
この記事の反響が大きければ、サンプルとして公開できる形にまとめ直そうと思います。

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