こんにちは。会議を短く・創造的にするツール「minmeeting」を開発している伊勢川です。
はじめに
先日、「自分の教育マップ」の作り方という記事を書き、大きな反響をいただきました。「自分の教育マップ」とは、自分の目標を達成するために、そこに至るまでの道筋を示した地図のことです。
前回の記事では、そのテンプレートまで載せましたが、実際に値の入ったサンプルまでは提示できませんでした。
そこで今回は、スキル・経験シート、書籍リスト、資格リストのサンプルとして、プロダクトマネージャーのための教育マップをご紹介します。前回の記事にも書いたとおり、自分の教育マップは自分で作ってください。このリストは、その際の参考になれば幸いです。
職種と求められる知識エリア
下図にある通り、プロダクトマネージャー(リーダー)は、ビジネス・エンジニアリング・デザインの3つの領域を幅広く知っておく必要があり、少なくとも1つの領域で深い経験があるとよいでしょう。
プロダクトマネージャーのスキル項目(ビジネス編)
ビジネス・エンジニアリング・デザインの3つの領域のうち、今回はビジネスの領域にフォーカスします。では、ビジネス領域で必要なスキル・知識とはどんなものでしょうか?
スキル名 | 説明 | 習得方法・必要となる知識・経験 |
---|---|---|
情熱・やる気 | 人を巻き込み、信頼やコミットメントを得るための能力。立ち上げ時期の困難を乗り切るためにも必要となる。 | 多くの人から金銭・時間・労力などの出資を受けて何かを成し遂げる(あるいは失敗する)経験 |
好奇心・吸収力 | 必要となる広く浅い知識を素早く吸収する能力。 | 面白いこと、不思議なことを探す。 |
顧客の深い理解 | 顧客の困りごとを理解・共感できる能力。 | 観察・フィールドワーク・定性調査を行う。 |
定量調査能力 | 測定可能な指標を定め、計測をして数値により論証する力。 | 統計学の知識や統計の応用学問(心理学・ソフトウェア工学等)の研究経験。 |
定性調査能力 | 自分の経験を客観視し、同分野における学術的知識をもとに洞察を得る力。 | フィールドワーク・エスノグラフィーの知識と経験。社会科学系の定性的調査法の知識。 |
ファシリテーション | 創造的なチーム運営・会議運営をする力。 | 場数を踏む。創造的な会議を体験する。ファシリテーション技法やツールの知識。 |
発想力 | アイディアをたくさん、幅広く出す力。 | アイディアマラソンやブレインストーミングの経験。発想法・フレームワーク・発想支援ツールの知識。 |
問題解決能力 | 問題の本質を捉え、経済的・技術的に実現可能な案を出す力。 | ソリューション営業・提案やQC等の改善活動の経験。問題解決技法の知識。 |
表現力 | ビジョンやアイディアを言葉・絵・プロトタイプなどで表現する力。 | デザインの経験。プロトタイピング技法の知識。 |
プレゼン | ビジョンを魅力的に伝える力。 | よいプレゼン・悪いプレゼンを見て学ぶ。場数を踏む。 |
ビジネスモデル構築 | 価値やお金の流れを作り、ビジネスとして持続可能な仕組みを作る力。 | 新規事業立ち上げの経験。他社の成功事例・失敗事例の知識。ビジネスモデル・戦略に関する知識。 |
技術理解 | 概念レベルで技術の良し悪しや制約を理解する力。 | ソフトウェア開発の経験。コンピュータ・サイエンスの知識。 |
法律知識・理解力 | 法的制約等について概要を把握した上でビジネスを構築する力。 | 民法、会社法、労働法、税法、知財関連や事業領域のおおまかな法律知識。 |
会計知識・理解力 | 会計の考え方の大枠を理解し、数字にもとづいて適切に事業をコントロールできる力。 | 複式簿記・企業会計・税務等のおおまかな知識。 |
調整・政治力 | 社内外で関係者の協力を得る力。仲間を集める力。 | 普段からコミュニケーションをとり、貸しをつくっておく。 |
スタートアップ | 事業を立ち上げ、資金を調達して急速に拡大させる力。 | スタートアップや資金調達の経験や知識。 |
マーケティング | 集客から販売までの道と仕組みが作れる力。 | 営業での成功・失敗経験。マーケティングの知識。 |
プロダクトマネージャーへのおすすめ文献(ビジネス編)
分類 | タイトル | 概要 |
---|---|---|
定量調査 | 新・社会調査へのアプローチ―論理と方法 | 一般的な社会科学系の調査方法をまとめた入門書。 |
定性調査 | 続・発想法 | KJ法の紹介。エスノグラフィーのやり方の参考になる。 |
ファシリテーション | ファシリテーションの教科書 | ファシリテーションの基本的考え方。 |
発想力 | アイデアバイブル | アイディアの出し方に関する辞書のような本。アイディア出しのファシリテーションをする際は、事前にこの本を読んで、どのツールを使うか考えておくとよい。 |
問題解決技法 | 改善力を高めるツールブック―7つのアプローチと47の手法 | QC7つ道具を始め、QCでよく使われる様々なツールやフレームワークが紹介されている。 |
- | グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50 | 仕事でよく使うフレームワークのリストが手短に紹介されている。 |
表現力 | インタフェースデザインの実践教室 | UIデザインのためのアイディア・テクニック集。プロトタイピングやユーザビリティテストなどのやり方などが、具体例を交えて書いてある。 |
- | デザイン思考家が知っておくべき39のメソッド | デザイン思考の共感・問題定義・創造・プロトタイプ・テストの過程で使える方法が紹介してある |
ビジネスモデル | ビジネスモデルの教科書 | ビジネスモデルのパターンを整理し、それのメリットやデメリット等をコンパクトにまとめてある。 |
- | ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書 | ビジネスモデルを設計する際に、考慮すべきことが1枚のキャンバスに表現できるフレームワークを紹介した本。 |
- | ビジネスモデル・イノベーション TEN TYPES OF INNOVATION | 過去数十年におこったイノベーションを研究し、それらのパターンを整理した本。 |
技術理解 | ITロードマップ | 5年先までの技術トレンドの紹介。 |
法律 | アプリビジネス成功への法務戦略 -開発・リリース・運用に必要な法律知識 | アプリビジネスに関わる法規制やリスクヘッジについて。 |
法律 | 良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方 | Webサービスの利用規約の作り方とサンプル。 |
会計 | 稲盛和夫の実学ー経営と会計 | 経営の視点から見た会計がわかる。 |
調整 | マネージャーの教科書 | 新任マネージャーが陥りがちな勘違いやミスなどが書いてあり参考になる。 |
スタートアップ | 起業の科学 スタートアップサイエンス | スタートアップの失敗確率を減らすためにやるべきことを、ステージ別に紹介してある。 |
- | Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール | シリコンバレーのスタートアップ養成スクールの物語。外から見たスタートアップの様子が分かり、読み物として面白い。 |
- | リーン・スタートアップ | 重厚な事業計画書に時間を費やすより、仮説検証を小さく・すばやく繰り返し、軌道修正をしながら事業を育てていこうという考え方とやり方を紹介した本。 |
- | アントレプレナーの教科書新装版 | 製品開発ではなく顧客開発に主眼を置いて、その方法を示した本。 |
- | [実践] 超高収益商品開発ガイド 粗利80%実現7つのステップ | キーエンス出身のコンサルタントが紹介する商品開発プロセスや組織の作り方。B2Bの製品づくりの参考になる。 |
マーケティング | マーケティングの教科書 | マーケティングに関する有名論文集。 |
今回はビジネス編で力尽きました。
エンジニアリング・デザインに関してはまた別の機会にまとめたいと思います。