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エージェント選定ガイド—LangChain等かAgentic RAG

Last updated at Posted at 2025-11-02

Agent Orchestration: LangChain、LangGraph、AutoGen を使うべき時 — あるいは Agentic RAG を構築するべきか

AIが単一モデルのソリューションから複数エージェントのエコシステムへ進化するにつれ、どのオーケストレーション手法を選ぶかが重要になります。RAGパイプライン、協調型マルチエージェントシステム、またはその中間のシナリオを作るにあたって、採るツールやアーキテクチャはシステムの適応性、スケーラビリティ、知能性を左右します。

ここでは「主要なフレームワーク3つ」と「強力なアーキテクチャパターン1つ」を分かりやすく整理します:

  • LangChain(フレームワーク)
  • LangGraph(フレームワーク)
  • AutoGen(フレームワーク)
  • Agentic RAG(アーキテクチャ・パターン)

まずは背景から見ていきます。

📊 オーケストレーションは GenAI スタックのどこに位置するか?

出典: https://menlovc.com/perspective/the-modern-ai-stack-design-principles-for-the-future-of-enterprise-ai-architectures/?utm_source=chatgpt.com

現代のGenAIスタックでは、オーケストレーション層(Layer 3: Deployment + Orchestration)が、基盤モデル(Layer 1)、データ層(Layer 2)、そして観測・監視ツール(Layer 4)をつなぎ、複数のエージェントやモデル、ツールが協調して動けるようにします。LangChain、LangGraph、AutoGen、Google ADKのようなフレームワークはこのレイヤーで動作し、モデルと外部システムの橋渡しを担当します。💡

🕰️ AIエージェント・オーケストレーション年表:主要なマイルストーン

  • 2017年6月 — Transformer("Attention Is All You Need")が登場し、系列モデリングを変革。
  • 2018–2020年 — BERT、GPT-2、GPT-3などのLLMが出現し、自然言語理解と生成の可能性が拡大。
  • 2021年末 — Retrieval-Augmented Generation(RAG)が普及し、外部データを問い合わせるワークフローが一般化。
  • 2023年1月 — LangChainが登場し、LLMとツールやAPI、チェーンの接続が容易に。
  • 2023年中頃 — LangGraph が LangChain をベースに、グラフベースのオーケストレーションを提案。
  • 2023年末 — Microsoft の AutoGen が公開され、エージェント間の協調に注力。
  • 2024年 — Agentic RAG や Multi-RAG Agents といった概念が形を取り、文脈的な知能が進化。
  • 2025年 — OpenAI、Google などが Agents SDK や ADK を発表し、オーケストレーション領域がさらに拡大。🚀

🧩 LangChain:LLMワークフローのためのモジュラー・フレームワーク

2023年初頭に登場したLangChainは、LLMが外部ツールと連携するアプリケーションを作る際の事実上の標準ツールキットとなりました。短い学習コストで多くの統合が可能で、実践的なRAGやチャットボット構築に向きます。

出典: https://python.langchain.com/docs/introduction/

「LangChainは複数のオープンソースライブラリから成り、詳細はアーキテクチャページで確認できます。」

  • `langchain-core`: チャットモデル等の基本抽象。
  • Integration packages(例: `langchain-openai`, `langchain-anthropic`など): 重要な統合は軽量パッケージとして分割され、LangChainチームと統合側が共同で保守。
  • `langchain`: Chains、Agents、Retrieval戦略など、アプリの認知アーキテクチャを構成する要素。
  • `langchain-community`: コミュニティが保守するサードパーティ統合。
  • `langgraph`: 永続化、ストリーミングなどを含む本番向けアプリケーションのためのオーケストレーションフレームワーク(出典: 上と同じ)。

特徴:

  • Chains: プロンプトと出力を組み合わせた一連のステップを定義。
  • Agents: LLMがツール選択を動的に判断。
  • Memory: ステップ間で会話コンテキストを保持可能。

向いている用途:

  • 単純〜中規模のワークフロー
  • LLMとAPI、ベクタDB、検索エンジンの統合
  • チャットボット、基本的なRAGシステム、データに強いアシスタント

🔗 LangGraph:グラフベースのマルチエージェント・オーケストレーション

2023年中頃に登場したLangGraphは、ワークフローを状態を持つグラフ(ノードと遷移)として定義するアプローチを採ります。複雑なRAGパイプラインや評価を伴う処理に適しています。

特徴:

  • Graph workflows: ロジックをノードと遷移で表現。
  • State management: 中間結果やコンテキストを追跡。
  • サイクルや条件分岐をサポートし、ループや分岐ロジックを実現。

向いている用途:

  • 複雑なマルチエージェントパイプライン
  • マルチステップのRAG
  • 明示的なメモリや制御フローが必要な構造化オーケストレーション ⚙️

🤝 AutoGen(Microsoft):多エージェント協調フレームワーク

2023年末に登場したAutoGenは、エージェント間/人との会話駆動の協調を重視します。エージェントが互いにコミュニケーションし、タスクを分担・委任する設計に向いています。

出典: https://www.microsoft.com/en-us/research/project/autogen/

特徴:

  • エージェント間の通信と委任が可能。
  • Human-in-the-loop(人の介入)をサポート。
  • ツールやAPIのモジュール統合が可能。

向いている用途:

  • マルチエージェント対話システム
  • チーム型のエージェント協調
  • 研究や探索的ワークフロー

Agentic RAG:適応的インテリジェンスのためのアーキテクチャ・パターン

2024年ごろから形になったAgentic RAGは、フレームワークではなく設計パターンです。検索(Retrieval)、推論(Reasoning)、生成(Generation)を専門化したエージェントに分け、動的に連携させることで高い文脈適応性を実現します。

主な特徴:

  • Retrieval、Generation、Reasoning を専門化したエージェント群で構成。
  • コンテキストや取得データに応じてエージェントが動的に適応。
  • 多くの場合、LangChain、LangGraph、AutoGenなどのフレームワーク上で実装される。🔧

向いている用途:

  • 高度に適応するRAGワークフロー
  • リアルタイムな検索と動的推論が必要な知識集約型タスク
  • 複数ソースを横断して文脈豊かな応答を生成するシステム

クイック比較テーブル

項目 LangChain LangGraph AutoGen Agentic RAG(パターン)
初出年 2023 2023 2023 2024
主眼 モジュラー、統合の容易さ グラフでの制御フロー、状態管理 エージェント間の会話協調 検索・推論・生成の専門化と適応
適用例 基本RAG、チャット 複雑RAG、長いワークフロー マルチエージェント対話 知識探索型の高適応システム
学習コスト 低〜中 中〜高 高(設計が重要)

💡 深掘り:エージェント・オーケストレーション・フレームワークとは?

  1. エージェント・オーケストレーション・フレームワークの役割
    複雑なタスクを複数の専門エージェントに分担させ、それらのインタラクションを管理・調整するための仕組みです。単一の汎用モデルでは対応しきれない多段階・多ツール連携の問題を、役割分担と明確なフローで解決します。実世界の例で言えば、プロジェクトマネージャが専門家チームを調整して成果を出すイメージです。

  2. なぜ必要か?
    単一エージェントの限界を補うためです。複雑性、専門化の不足、スケール時のメンテナンス性の低下などの課題に対して、モジュール化と責務分離で解決します。⚠️

  3. 仕組み(代表的な流れ)

  • タスク分解: 複雑なリクエストを小さなサブタスクに分割。
  • エージェント選択/ルーティング: オーケストレータが最適なエージェントを選ぶ。
  • 通信とハンドオフ: エージェント間でデータや制御を受け渡す(共有メモリや明示的ハンドオフ)。
  • 状態管理: 会話履歴や中間結果を管理して文脈を保持。
  • 実行フロー: ループ、条件分岐、最終応答生成などを管理。

一般的なオーケストレーションスタイル:

  • 中央集権型: 一つのコントローラが全体を指揮。
  • 分散型: エージェント同士が直接やり取り。
  • 階層型: レイヤー構造で上位エージェントが下位を管理。
  • フェデレーテッド: 自律的なエージェントが協調(データプライバシーが重要な場面で有用)。

4. 主要コンポーネントと機能

典型的なフレームワークに含まれる要素:

  • Agent Definition: エージェントの役割、指示、ツール、能力を定義する仕組み。
  • Planning: 目標達成のための戦略やアクション列を生成(Chain-of-ThoughtやReActのような手法を利用する場合もある)。
  • Tool Use: 外部APIやDB、関数を呼び出すための統合。
  • Memory: セッション内短期記憶から長期記憶までの管理。
  • Control Flow Mechanisms: LangGraphのようなグラフやパイプライン、イベント駆動のフロー制御。
  • Communication Protocols: エージェント間の標準的な通信方式(FIPA-ACLなど/あるいは独自プロトコル)。
  • Monitoring & Observability: エージェントの振る舞いを追跡し、デバッグや評価を行う機能(例: LangSmith)。
  • Guardrails & Validation: 出力チェックや安全策、コンプライアンスを担保する仕組み。
  • Scalability: エージェント増加や負荷上昇に対応する設計。

5. 2025年11月時点でよく使われるオーケストレーション・フレームワーク

  • LangChain / LangGraph: 2023年に登場。LangChainは柔軟なビルディングブロックと豊富な統合が特徴、LangGraphは状態を持つ循環的ワークフローを構築するのに最適。監視にはLangSmithなどが使われる。
  • AutoGen(Microsoft): 2023年後半に登場。マルチエージェント会話に特化し、Microsoftエコシステムとの親和性やテスト機能が強み。
  • CrewAI: ロールプレイ型のエージェントをオーケストレーションする軽量フレームワーク。イベント駆動パイプラインに向く。
  • OpenAI Agents SDK: 2025年に公開された軽量Pythonフレームワークで、Agents、Handoffs、Guardrailsを中心に設計。トレーシングと安全機能を内蔵しつつ、プロバイダ非依存を志向。
  • LlamaIndex: 2023–2024に進化。データ統合に強く、データ重視のRAGエージェント構築に適する。
  • Langflow: LangChainと並行して現れたビジュアルな低コードツール。エクスポートしてPythonコードとして利用可能。

その他注目フレームワーク:

  • Botpress: ビジュアル構築に特化し、マルチチャネルでのデプロイに強み。
  • Semantic Kernel(Microsoft): LLMとコードの統合に向くフレームワークで、LangChainとよく比較される。
  • Google Agent Development Kit (ADK): 2025年初頭に発表され、GeminiやVertex AIとの統合を想定したモジュール型フレームワーク。
  • Dify: 多くのLLMやエージェント戦略をサポートする低コードプラットフォーム。

📚 参考リンク(ドキュメントとチュートリアル)

  1. LangChain ドキュメントとチュートリアル
    🔗 LangChain ドキュメント
    🔗 LangChain チュートリアル
  2. LangGraph 入門と例
    🔗 LangGraph 概要
    🔗 LangGraph Academy コース
  3. AutoGen(Microsoft)ドキュメント
    🔗 AutoGen Getting Started Guide
    🔗 AutoGen: Multi-Agent Conversation
  4. Agentic RAG に関する知見
    🔗 Agentic RAG with LangChain (Medium)
    🔗 Hugging Face Multi-Agent RAG Cookbook
  5. OpenAI Agents SDK
    🔗 OpenAI Developer Docs (Agents)
  6. Google ADK / Vertex AI Agents
    🔗 Google Cloud Vertex AI Agents Overview
    🔗 Google ADK 発表記事
  7. RAG と Agentic Systems の理解
    🔗 Retrieval-Augmented Generation Explained (Meta AI)
    🔗 Advanced RAG の構築と評価
  8. モダンAIスタックの概要(参照元)
    🔗 Menlo Ventures: The Emerging Building Blocks for GenAI
  9. 観測性とガードレール
    🔗 LangSmith: LangChain 用のモニタリングとデバッグ
    🔗 Credal.ai: AIシステムのコンプライアンスとガードレール

(上記リンクは参照用です。URLは元のまま保持しています。)

🚦 運用上の考慮点(重要)

  • レイテンシとコスト管理: マルチエージェント設計はAPI呼び出しやモデル呼び出し回数が増えがちで、レイテンシとコストのトレードオフ設計が必須。バッチ化やキャッシュ、優先度付きルーティングが有効。💸
  • 信頼性とフェイルオーバー: エージェントや外部ツールの障害時にフェイルバック戦略を設ける(シンプルなフォールバックエージェントやキャッシュされた応答)。
  • セキュリティとデータプライバシー: 機密データを外部APIに渡す前にマスキングや最小化を実施。フェデレーテッド設計やオンプレミス索引を検討。🔐
  • 観測性とデバッグ: トレース、ロギング、メトリクス(遅延、失敗率、トークン使用量など)を可視化し、振る舞いの異常検出を行う。
  • ガードレールと検証: 出力検証、スキーマチェック、ポリシーエンフォースメントを導入し、不正確な情報や規約違反を防止。
  • 評価戦略: 自動評価(精度、再現率など)と人的評価を組み合わせ、エージェント間の責務分配やパフォーマンスを定期的に見直す。🧪

🛠️ 導入チェックリスト(簡易)

  • 要件定義: タスクの複雑さ、リアルタイム性、データ感度を明確化。
  • 架構選定: 単純なツール連携ならLangChain、状態と分岐が重要ならLangGraph、会話協調が中心ならAutoGen、知識密度と動的推論が重要ならAgentic RAGを検討。
  • プロトタイプ: 小さなパイロットでフロー、レイテンシ、コスト、失敗モードを検証。
  • 観測とガードレール: ロギング、テスト、出力検証を初期段階から組み込む。
  • スケール計画: エージェント数増加、データ増大に対するスケーリング戦略を策定。

追加の実践的ヒント(短く)

  • 混合アプローチが有効: 単一のフレームワークに固執せず、LangChainの統合力とLangGraphの制御フローを組み合わせる例は多い。
  • ロールベースの設計: エージェントに明確な役割(Retriever、Synthesizer、Verifierなど)を与えるとデバッグが楽になる。📝
  • コスト監視を自動化: トークン使用量やAPI呼び出し回数をアラート化して予期しないコスト増を防ぐ。

🚀 次に取り組むべきこと(短報)

この記事では主要フレームワークとAgentic RAGパターンを整理しました。今後はLangGraphを使った「retrieval→generation→evaluation」パイプラインの実装事例や、実運用での問題解決(コスト最適化、観測性設計)の実例を紹介していく予定です(技術的な実装サンプルとベストプラクティスを交えて)。

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