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水の量子的性質とプロトントンネリングの 量子機械的可能性

Last updated at Posted at 2025-06-30

水の量子的性質とプロトントンネリングの 量子機械的可能性

水って実はトンデモに近いほど、特異な物質だし、量子現象の宝庫かもしれず、生体の不思議な現象のかなりの原因になっている可能性があるのが分かってきました。従来は水の環境では「量子現象は起こらない」とされてきたのが、実は逆に「水こそが常温量子現象の鍵」と言えるかも?という状況になっていています。

以下では、最近利用可能になったo3のDeep Researchと検討した、水の量子的性質に関しての最近の知見から、「水」は量子的な物質であり、その機構は生体内で量子現象を補助しており、それを応用して常温での新たな量子的性質を応用した分子機械を作成できる可能性に関して、まとめています。

【pdf全文です】

水の量子的性質とプロトントンネリングの 量子機械的可能性

下記に一部抜粋します。

1. 序論

水は地球上の生命に不可欠な液体であり、物理・化学・生物・地球科学の各分野で中心的な役割を果たす。その重要性のみならず、液体水は数多くの異常な物性を示す点で特異な存在である。例えば、水は融解時に体積が減少し、高圧下で粘性が低下するほか、4 ℃付近に密度極大を示し、極めて高い表面張力を持つといった、通常の液体には見られない振る舞いを示す。これらの特性は水分子間の強い水素結合ネットワークによってもたらされており、水がこのような異常性を示さなかったならば地球上に生命が発達し得たか疑わしいとも指摘されている。

水の分子間相互作用は、単に古典的な静電引力だけでなく、電子の軌道の重なりやプロトンの共有など量子的な性質を帯びている。水素結合における電子電荷の共有やプロトンの挙動には量子力学的効果が深く関与しており、これらは理論計算によってその重要性が示唆されてきた。近年では実験技術の進展により、水の水素結合ネットワーク内で電子的・核的な量子効果を直接観測することも可能になりつつある。本論文では、水の特異な物性の背景とされる量子的側面、特にプロトン(陽子)のトンネリング現象に着目し、その生体内における役割や将来的な応用可能性、社会への影響について論じる。まず水の特異性を概観し、次に水に固有の量子的性質を論じる。続いて、生体システムでのプロトン輸送に関わる量子現象と、プロトントンネリングの制御・応用の可能性について考察し、最後に社会的インパクトと今後の課題を述べる。

2. 水の特異性

水が示す数多くの異常物性は、水分子同士が形成する水素結合ネットワークに起因している。水分子は四面体的に最大4つの水素結合を形成でき、これは単純な液体にはない方向性のある結合構造である。この独特の結合構造により、水は密度の異常(4 ℃で密度最大となり、それより低温で密度が減少する)、氷の異常(固体の氷が液体水に浮く)、熱力学的応答関数の異常(過冷却で等温圧縮率や定圧熱容量が発散的挙動を示す)など、多様な特性を示す。これらの特異性を統一的に説明するために、水の局所構造が一様ではなく低密度と高密度の二種類の構造が混在するという仮説(いわゆる水の二構造モデル)など、様々なモデルが提唱されてきた。未だ議論は続いているが、水の異常現象の背後にある水素結合ネットワークの構造と動的揺らぎを解明することが、水の科学における基本的課題となっている。

水の特異性を支える水素結合の強さや寿命は、温度や圧力によって変化し、その協同性が水のマクロな性質に反映される。例えば、水は常温付近では不均質な微視的構造のゆらぎを示し、それが温度低下とともに顕著になる可能性が示唆されている。このように水の特異な物性を理解するためには、単分子ではなく多数の水分子が相互作用する集団としての水を捉える必要がある。ここで量子論的視点を導入すると、水素結合の形成・切断やプロトンの移動といった現象において、従来の古典的描像では説明しきれない振る舞いが現れることが知られてきた。

(中略)
水における量子的性質の顕著な例として、プロトンのトンネリング現象が挙げられる。水素結合で連結した複数の水分子からなるクラスターでは、プロトンが一つの分子から別の分子へ、エネルギー障壁を乗り越えることなく量子力学的にトンネル効果で移動することがある。これは特に低温・真空下で顕著になり、水分子の環状クラスターである四量体(環状に 4 つの水分子が水素結合で繋がった構造)において、複数の水素結合に跨ってプロトンが協奏的(同調的)にトンネル移動する様子が走査型トンネル顕微鏡によって直接観測されている。この研究では、水の四量体が持つ水素結合ネットワークの手型(キラリティ)が、プロトンの集団的なトンネル移動によって右手型と左手型の間で可逆的に入れ替わる様子が確認された。単一のプロトンが独立にトンネルする従来型の現象(非協調的トンネリング)とは異なり、水素結合ネットワーク全体が多体量子トンネリング状態となっている点が特徴である。同様に、水の三量体(三角形に配列した 3つの水分子)でも、各分子の回転運動がプロトンのトンネリングと連動し、3 つのプロトンが協力してエネルギー障壁を乗り越える現象が報告されている。この実験では極低温下で塩化ナトリウム表面に固定した 3 つの水分子を STM で観察し、三角形の歪みが左右に高速振動する様子(プロトンの位置交換)を捉えており、量子トンネル効果が関与する証拠とされた。さらに STM の探針電圧を印加して水分子の回転運動を活性化すると、三角形の歪みが消失して正三角形に近づくことが確認され、これは回転運動により水素結合距離が調整され、プロトンの協奏トンネリングが促進された結果と解釈できる。以上のように、水分子集合体の中ではプロトンが量子的に振る舞う現象が存在し、水の特性理解には量子力学的描像が不可欠であることが明らかになってきている。

(中略)
プロトンの量子的性質を意図的に活用する方向性は、我々に新たな工学的地平をもたらす可能性が高い。水という遍在する物質と生命現象から学んだ量子効果をデバイスに取り込むことで、私たちは自然が営むプロセスを模倣・増幅した革新的技術を創出できるかもしれない。
プロトントンネリング研究の延長線上には、人類の理解と技術の双方に対する大きなブレイクスルーが潜んでいると言えよう。社会的インパクトの大きさを考えれば、今後も産学連携や国際協力のもとでこの分野の研究開発が推進されることが望まれる。

(以下は上記pdf全文を参照ください)

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