ソフトウェア開発において、「デプロイ」と「リリース」という用語はよく混同されがちですが、実は異なる概念です。この記事では、その違いを明確にし、なぜ分けて考える必要があるのかを解説します。
デプロイ(Deploy)とは
デプロイは、コードやアプリケーションを実際の環境(サーバーやクラウド)に配置する技術的な作業のことです。
デプロイの特徴
- 開発環境から本番環境への移行プロセス
- 主にエンジニアが行う技術的な作業
- 内部的な作業で、ユーザーからは見えない場合もある
- 自動化されることが多い
リリース(Release)とは
リリースは、新機能や変更をユーザーが実際に利用できるようにすることです。
リリースの特徴
- ビジネス的な判断を伴う決定
- ユーザーに対して公開・発表される
- マーケティングやサポート体制も含む
- タイミングが重要
具体例で理解する
ECサイトに新しい決済機能を追加するケースを考えてみましょう。
デプロイのタイミング
金曜日 22:00: 新しい決済機能のコードを本番サーバーに配置
↓
機能は本番環境に存在するが、まだユーザーには見えない状態
リリースのタイミング
月曜日 10:00: 機能をユーザーが使えるように公開
- フィーチャーフラグをON
- 公式サイトでアナウンス
- サポートチームに情報共有
この間の週末は、デプロイ済みだがリリース前の状態となります。
なぜ分ける必要があるのか
1. 技術的なリスク管理
- 本番環境での事前テストが可能
- 問題があった場合の切り戻しが容易
- 段階的な動作確認ができる
2. ビジネス戦略との整合
- マーケティングキャンペーンのタイミングに合わせられる
- 競合他社の動向を見て公開タイミングを調整
- 重要な発表は適切な時間帯に実施
3. 運用面での安全性
- サポートチームの準備時間を確保
- ドキュメントやFAQの整備
- 社内関係者への事前共有
現代的な手法:フィーチャーフラグ
// フィーチャーフラグを使った例
if (featureFlag.isEnabled('new-payment-system')) {
// 新しい決済システムを表示
renderNewPaymentForm();
} else {
// 従来の決済システムを表示
renderOldPaymentForm();
}
フィーチャーフラグを使うことで、コードをデプロイした後でも、設定の変更だけで機能のON/OFFを切り替えられます。
まとめ
| 項目 | デプロイ | リリース |
|---|---|---|
| 性質 | 技術的作業 | ビジネス判断 |
| 実行者 | エンジニア | プロダクトマネージャー等 |
| 対象 | システム環境 | エンドユーザー |
| タイミング | いつでも可能 | 戦略的に決定 |
デプロイとリリースを分離することで、より安全で柔軟なソフトウェア配信が可能になります。この概念を理解することで、チーム全体での認識統一や、より効率的な開発プロセスの構築につながるでしょう。
参考
現代のDevOpsやCI/CDパイプラインでは、この分離がベストプラクティスとして広く採用されています。ぜひ皆さんのプロジェクトでも取り入れてみてください!