Day 8: AWSのコンテナサービス概要:ECS, EKS, Fargateの使い分け ☁️
皆さん、こんにちは!30日集中講座、Day 8へようこそ。
第1週では、ローカル環境でDockerとDocker Composeを使い、コンテナ開発の基礎を学びました。今日からは、その知識をAWSというクラウド環境で活かす方法を学んでいきます。
クラウド上でコンテナを動かすには、コンテナを管理する専門のサービスが必要です。AWSでは、この役割を担う主要なサービスがいくつかあります。その中でも特に重要なのが、ECS (Elastic Container Service) と EKS (Elastic Kubernetes Service)、そして実行環境の選択肢である Fargate です。
今日は、これらのサービスがそれぞれどのような役割を果たすのか、そしてどのサービスをいつ使うべきかについて、初心者にもわかりやすく解説します。
1. コンテナオーケストレーションとは?
コンテナオーケストレーションとは、多数のコンテナを自動で管理・調整する仕組みのことです。
ローカル環境ではdocker-compose
コマンドで簡単に複数コンテナを起動できましたが、本番環境では以下の問題に対応しなければなりません。
- スケーリング: アクセス増減に応じてコンテナを自動で増やしたり減らしたりする。
- 可用性: コンテナがダウンした場合、自動で再起動してサービスを維持する。
- 負荷分散: アクセスを複数のコンテナに適切に振り分ける。
- モニタリング: コンテナの稼働状況やログを監視する。
これらの複雑なタスクを自動化してくれるのが、コンテナオーケストレーションサービスです。AWSでは、この役割をECSとEKSが担っています。
2. AWSのコンテナサービス:ECS vs EKS
ECSとEKSは、どちらもコンテナオーケストレーションサービスですが、その思想と背景が大きく異なります。
ECS (Elastic Container Service)
ECSは、AWSが独自に開発したコンテナオーケストレーションサービスです。
- 特徴: AWSのサービスとの連携が非常にスムーズです。VPC、IAM、CloudWatchなど、既存のAWSサービスと緊密に統合されています。設定がシンプルで学習コストが低いため、AWSの経験が浅い方でも比較的簡単に始めることができます。
- ユースケース: AWSの環境に特化して、コンテナをシンプルにデプロイ・運用したい場合に最適です。
EKS (Elastic Kubernetes Service)
EKSは、世界で最も広く使われているコンテナオーケストレーションツールであるKubernetesをAWS上で動かすためのマネージドサービスです。
- 特徴: Kubernetesの豊富なエコシステムとポータビリティが最大の強みです。もし将来的に他のクラウドプロバイダー(Google Cloud, Azureなど)への移行を検討している場合、Kubernetesの知識はそのまま活かせます。ただし、Kubernetes自体の学習コストはECSに比べて高い傾向にあります。
- ユースケース: マルチクラウド戦略を検討している企業や、Kubernetesの高度な機能(カスタムリソースなど)を利用したい場合に適しています。
3. 実行環境の選択肢:Fargate vs EC2
ECSとEKSは、コンテナを実際に動かす「サーバー(ノード)」をどのように管理するかという点で、さらに2つの選択肢を提供します。
Fargate
Fargateは、サーバーレスなコンテナ実行環境です。
- 特徴: コンテナを動かすためのEC2インスタンス(仮想サーバー)の管理が一切不要になります。CPUやメモリのリソースを指定するだけでコンテナが起動し、使用した分だけ課金されます。
- メリット: 運用負荷が大幅に軽減され、インフラ管理に時間を割く必要がなくなります。コンテナのプロビジョニング、パッチ適用、スケーリングといった作業はすべてAWSが管理してくれます。
- デメリット: EC2に比べてカスタマイズの自由度が低く、コストが高くなる場合があります。
EC2
EC2は、仮想サーバーを自分で管理する実行環境です。
- 特徴: コンテナを動かすためのEC2インスタンスを、自分でプロビジョニングし、管理します。
- メリット: インスタンスタイプやOSを自由に選択できるなど、高いカスタマイズ性があります。リザーブドインスタンスやSavings Plansを使えば、コストを最適化できる可能性があります。
- デメリット: サーバーの管理(パッチ適用、セキュリティ設定、スケーリングポリシーの定義など)を自分で行う必要があります。
4. まとめ:使い分けの判断基準
ECS、EKS、Fargate、EC2の組み合わせは多岐にわたりますが、シンプルに考えるための判断基準は以下の通りです。
シンプル・AWS特化 | 世界標準・ポータビリティ | |
---|---|---|
運用負荷を最小化 | ECS on Fargate | EKS on Fargate |
コスト・カスタマイズ性 | ECS on EC2 | EKS on EC2 |
- まずはここから:ECS on Fargate。AWSの学習を始めたばかりの初心者には、最も運用負荷が少なく、シンプルな構成です。
- Kubernetesの知見がある、または学習したい:EKS on Fargate。サーバー管理の複雑さを回避しつつ、Kubernetesの学習に集中できます。
- コストを徹底的に最適化したい、または高度なカスタマイズが必要:ECS on EC2またはEKS on EC2。
これで、皆さんはAWSのコンテナサービスの大まかな全体像を掴めたはずです。明日からは、この知識を活かして、実際にAWS環境の構築を始めていきます。
次回の予告
Day 9: ECSクラスターの設計:EC2とFargate、どちらを選ぶべき?
それでは、また明日お会いしましょう!