CI/CDパイプライン構築の全て！AWS Codeシリーズで自動化を実現

こんにちは！現役クラウドエンジニアのAkrです。

「【AWSプロフェッショナルへの道】現役クラウドエンジニアが贈る実践ガイド」の第16回をお届けします。前回はKubernetesの力をAWSで活用するEKSについて学び、高度なコンテナオーケストレーションの世界に触れましたね。これにより、アプリケーションをより柔軟かつ大規模に管理する基盤が整いました。

今回は、開発者がコード変更を頻繁に行い、その変更を安全かつ迅速に本番環境に反映させるための自動化されたプロセス、CI/CD (継続的インテグレーション/継続的デリバリー) に焦点を当てます。AWSが提供する主要なCI/CDサービスであるAWS Codeシリーズを徹底的に解説し、シンプルなWebアプリケーションのCI/CDパイプラインを実際に構築します。

「CI/CDって難しそう...」「手動デプロイでもいいのでは？」と感じるかもしれません。しかし、CI/CDは開発の速度と品質を飛躍的に向上させ、手動デプロイにつきもののヒューマンエラーを防ぐ上で不可欠な技術です。本記事では、CodeCommit、CodeBuild、CodeDeploy、CodePipelineといった各サービスの役割を理解し、これらを連携させて完全自動化されたパイプラインを構築する実践的なスキルを身につけます。

1. CI/CDとは？その重要性とAWS Codeシリーズの役割

CI/CDの基本概念

CI (Continuous Integration - 継続的インテグレーション):
- 開発者が自分のコード変更を頻繁に共有リポジトリにマージするプロセスです。
- マージされたコードは、自動的にビルドされ、テストが実行されます。これにより、問題が早期に発見され、修正が容易になります。
CD (Continuous Delivery/Deployment - 継続的デリバリー/デプロイ):
- 継続的デリバリー: CIプロセスを通過したビルド成果物を、いつでも本番環境にデプロイできる状態に保ちます。デプロイは手動でトリガーされます。
- 継続的デプロイ: 継続的デリバリーをさらに進め、ビルド成果物の本番環境へのデプロイも自動化します。

AWS Codeシリーズの役割

AWSは、CI/CDパイプラインの各ステップに対応するフルマネージドなサービス群を提供しています。

サービス名	役割（CI/CDのステップ）	説明
CodeCommit	ソースコード管理	Gitリポジトリとして機能する、プライベートなコードホスティングサービス。
CodeBuild	ビルドとテスト	ソースコードをコンパイルし、テストを実行して、デプロイ可能な成果物（アーティファクト）を作成するフルマネージドなサービス。
CodeDeploy	デプロイメント	EC2インスタンス、オンプレミスサーバー、ECS、Lambdaなどへのアプリケーションのデプロイを自動化するサービス。
CodePipeline	パイプラインの自動化	上記のサービスを連携させ、ソースコードの変更からデプロイまでの一連の流れを自動化・可視化するオーケストレーションサービス。

2. 実践！AWS CodeシリーズでCI/CDパイプラインを構築しよう

今回は、ごくシンプルなHTMLの静的Webサイトを、CodeCommitへのプッシュをトリガーに、EC2インスタンスに自動デプロイするCI/CDパイプラインを構築します。

2.1. 前提条件の準備

EC2インスタンス: ApacheをインストールしたEC2インスタンスを1台用意しておきます。
IAMロール:
- EC2インスタンスに、CodeDeployエージェントがAWSにアクセスするためのIAMロールをアタッチしておきましょう。
- このIAMロールには、AmazonS3FullAccess と AWSCodeDeployFullAccess ポリシーをアタッチします。

2.2. CodeCommitリポジトリの作成と初期コードのプッシュ

AWSマネジメントコンソールで「CodeCommit」サービスに移動します。
「リポジトリを作成」をクリックします。
リポジトリ名: my-simple-web-app
「作成」をクリック。
作成されたリポジトリのURL（HTTPS）をコピーします。
ローカル環境で、以下のように初期ファイルを準備します。
```
# my-simple-web-app/
├── appspec.yml
└── index.html
```
- index.htmlの内容:
```
<!DOCTYPE html>
<html>
<head>
  <title>Hello CI/CD</title>
</head>
<body>
  <h1>Hello, AWS CodePipeline!</h1>
  <p>This is a test deployment.</p>
</body>
</html>
```
- appspec.ymlの内容:
```
version: 0.0
os: linux
files:
  - source: /
    destination: /var/www/html/
```
  - appspec.ymlは、CodeDeployがデプロイを実行する際の指示書です。
  - この設定は、ソースリポジトリのすべてのファイルを、EC2インスタンスの/var/www/html/ディレクトリにコピーするよう指示しています。
ローカルで以下のGitコマンドを実行して、CodeCommitにファイルをプッシュします。
- AWS CLIやGit認証情報ヘルパーを使って、CodeCommitへのアクセスを設定しておく必要があります。
```
git init
git add .
git commit -m "Initial commit"
git remote add origin <コピーしたCodeCommitのURL>
git push -u origin master
```

2.3. CodeDeployアプリケーションとデプロイグループの設定

CodeDeployは、デプロイ対象のアプリケーションと、デプロイ先のグループを定義します。

AWSマネジメントコンソールで「CodeDeploy」サービスに移動します。
左のナビゲーションペインから「アプリケーション」を選択し、「アプリケーションの作成」をクリックします。
アプリケーション名: my-simple-web-app-app
コンピューティングプラットフォーム: EC2/オンプレミス
「アプリケーションの作成」をクリック。
作成したアプリケーションを選択し、「デプロイグループの作成」をクリックします。
デプロイグループ名: my-simple-web-app-group
サービスロール: CodeDeployがAWSサービスにアクセスするためのIAMロールを選択します。
- AWSCodeDeployRoleという名前のロールを新規作成しておきましょう。このロールにはAWSCodeDeployRoleポリシーをアタッチします。
環境設定:
- 「Amazon EC2 インスタンス」を選択します。
- キーと値: Nameとyour-ec2-instance-nameを入力して、デプロイ対象のEC2インスタンスを指定します。
デプロイ設定: CodeDeployDefault.AllAtOnceを選択します。（一度にすべてのインスタンスにデプロイする最もシンプルな方式です）
「デプロイグループの作成」をクリック。

2.4. CodePipelineの構築

いよいよ、すべてのサービスを連携させるパイプラインを構築します。

AWSマネジメントコンソールで「CodePipeline」サービスに移動します。
「パイプラインを作成」をクリックします。
パイプライン名: my-simple-web-app-pipeline
サービスロール: 「新しいサービスロール」を選択します。CodePipelineが自動でIAMロールを作成してくれます。
「次へ」をクリック。
ソースステージを追加:
- ソースプロバイダー: AWS CodeCommit
- リポジトリ名: my-simple-web-app
- ブランチ名: master
- 変更を検出: Amazon CloudWatch Eventsが推奨です。
- 「次へ」をクリック。
ビルドステージを追加:
- 今回のWebサイトはビルドが不要な静的コンテンツなので、「ビルドステージをスキップ」を選択します。
- 実際のアプリケーション開発では、ここでCodeBuildを設定し、ソースコードのビルドやテストを行います。
- 「次へ」をクリック。
デプロイステージを追加:
- デプロイプロバイダー: AWS CodeDeploy
- アプリケーション名: my-simple-web-app-app
- デプロイグループ名: my-simple-web-app-group
- 「次へ」をクリック。
レビュー: 内容を確認し、「パイプラインの作成」をクリックします。

2.5. 動作確認

パイプラインが作成されると、自動的に最初の実行が開始されます。

CodePipelineコンソールで、作成したパイプラインの実行状況を確認します。
Sourceステージが完了し、Deployステージが開始され、最終的に成功（Succeeded）するまで待ちます。
すべて成功したら、EC2インスタンスのパブリックIPアドレスにWebブラウザでアクセスします。
- Hello, AWS CodePipeline!と表示されていれば、最初の自動デプロイは成功です。
コード変更をデプロイしてみよう:
- ローカルのindex.htmlを編集します。
- <h1>Hello, AWS CodePipeline!</h1>を<h1>CodePipeline deployment successful!</h1>に変更します。
- Gitで変更をコミットし、CodeCommitにプッシュします。
```
git commit -am "Update heading"
git push
```
- CodeCommitへのプッシュをトリガーに、CodePipelineが再び自動的に実行され、変更がEC2インスタンスにデプロイされることを確認します。

3. CI/CDのベストプラクティスと応用

ビルドステージの活用: 今回はスキップしましたが、npm run buildやmvn packageなどのコマンドを実行し、ユニットテストを行うことで、デプロイ前にコードの品質を確保します。
CodeBuildでの環境設定: buildspec.ymlファイルを使って、CodeBuildでのビルド、テスト、成果物のパッケージングを一貫して定義します。
デプロイ戦略: CodeDeployは、「ローリングアップデート」や「ブルー/グリーンデプロイメント」といった高度なデプロイ戦略をサポートしています。本番環境への影響を最小限に抑えるために活用しましょう。
承認ステージの追加: CodePipelineに承認ステージを追加することで、本番デプロイ前に手動での承認を必須にできます。
パイプラインのトリガー: CodeCommitだけでなく、GitHubやBitbucketなどの外部リポジトリへの変更もパイプラインのトリガーにできます。
モニタリング: CodePipelineの実行状況やCodeBuildのビルドログはCloudWatchで監視し、失敗時には通知するアラームを設定しましょう。

まとめ

今回は、ソフトウェア開発に不可欠なCI/CDの概念と、それを実現するAWS Codeシリーズについて、実践的なパイプライン構築を通して学びました。

CI/CDは、コード変更のビルド、テスト、デプロイを自動化し、開発速度と品質を向上させます。
CodeCommit（ソース管理）、CodeBuild（ビルド/テスト）、CodeDeploy（デプロイ）、CodePipeline（オーケストレーション）という各サービスの役割を理解しました。
シンプルなWebサイトのコードをCodeCommitにプッシュし、CodePipelineがその変更を検知して自動的にCodeDeployをトリガーし、EC2インスタンスにデプロイする一連の流れを構築しました。

このCI/CDパイプラインは、あなたのアプリケーション開発を次のレベルに引き上げる基盤となります。手動での煩雑な作業から解放され、より価値のある機能開発に集中できるようになります。

この記事が皆さんのAWS学習の一助となれば幸いです。

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