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AWSで始める30日間CI/CDマスタープログラム - 2日目

Last updated at Posted at 2025-07-28

2日目: AWSにおけるCI/CDサービス全体像:Codeファミリーの紹介

はじめに:クラウドが変えるCI/CDの世界

昨日はCI/CDの基本的な概念と、その現代のソフトウェア開発における重要性について深掘りしました。CI/CDがもはや選択肢ではなく、必須のプラクティスであることをご理解いただけたかと思います。

さて、今日からは「どうやってCI/CDを実践していくのか?」という具体的な話に入っていきます。多くの企業がクラウド環境での開発を進める中で、AWS (Amazon Web Services) はCI/CDツールにおいても非常に強力な選択肢を提供しています。私もPython開発でAWSを長年利用しており、そのCI/CD関連サービスの恩恵を日々感じています。

AWSが提供するCI/CDサービスは、一般に「AWS Codeファミリー」と呼ばれています。これらは、ソースコードの管理から、ビルド、テスト、デプロイ、そしてパイプライン全体のオーケストレーションまで、CI/CDの全工程をカバーする包括的なツール群です。本記事では、このCodeファミリーの全体像を把握し、それぞれのサービスがCI/CDパイプラインの中でどのような役割を果たすのかを解説していきます。

2日目_ AWSにおけるCI_CDサービス全体像:Codeファミリーの紹介 - visual selection.png


AWS Codeファミリーとは?CI/CDのフルマネージドサービス群

AWS Codeファミリーは、AWSが提供するソフトウェア開発のためのフルマネージドサービス群です。これにより、ユーザーはインフラの管理に煩わされることなく、アプリケーションの開発とデリバリーに集中できます。それぞれのサービスがCI/CDの特定のフェーズを担い、シームレスに連携することで、エンドツーエンドの自動化されたパイプラインを構築することが可能です。

主要なCodeファミリーのサービスは以下の通りです。

  1. AWS CodeCommit: ソースコードバージョン管理サービス
  2. AWS CodeBuild: フルマネージド型ビルドサービス
  3. AWS CodeDeploy: ソフトウェアデプロイ自動化サービス
  4. AWS CodePipeline: CI/CDパイプラインオーケストレーションサービス

これらに加えて、関連サービスとして以下も重要です。

  • AWS CodeArtifact: ソフトウェアパッケージ管理サービス
  • AWS CodeCatalyst: ソフトウェア開発ライフサイクル統合サービス (新しいサービス)
  • AWS CodeGuru: コードレビューとアプリケーションのパフォーマンス最適化サービス

今回はCI/CDのコアとなるCodeCommit、CodeBuild、CodeDeploy、CodePipelineに焦点を当てて詳しく見ていきましょう。


1. AWS CodeCommit: ソースコードバージョン管理の要

CI/CDの最初のステップは、もちろんソースコードの管理です。AWS CodeCommitは、Gitベースのフルマネージドなソースコードバージョン管理サービスです。

なぜCodeCommitを使うのか?

私がPythonプロジェクトでCodeCommitを利用する最大の理由は、AWSエコシステムとのシームレスな統合にあります。他のAWSサービス(CodeBuild, CodePipeline, Lambdaなど)との連携が非常に容易であり、権限管理もIAM (Identity and Access Management) で一元的に行えるため、セキュリティと管理のオーバーヘッドを大幅に削減できます。

  • フルマネージド: サーバーのプロビジョニング、パッチ適用、バックアップなどの管理が不要です。高可用性と耐久性もAWSによって保証されます。
  • Git互換: 標準的なGitコマンドを使用できるため、既存のGitワークフローやツール(IDE、Gitクライアントなど)をそのまま利用できます。GitHubやBitbucketから移行するのも容易です。
  • セキュリティ: AWS IAMと統合されており、リポジトリ、ブランチ、個々のファイルレベルで細かくアクセス権限を制御できます。コードは転送中および保存時に暗号化されます。
  • 大規模スケーラビリティ: 大規模なプロジェクトや多数のリポジトリにも対応し、高速なパフォーマンスを提供します。

CI/CDパイプラインにおける役割

CodeCommitは、CI/CDパイプラインの 「ソース」ステージ を担います。開発者がコードをCodeCommitリポジトリにプッシュすると、その変更がCodePipelineによって自動的に検知され、ビルドやテスト、デプロイのプロセスがトリガーされます。

例えば、Pythonプロジェクトの場合、mainブランチに新しい機能がマージされた瞬間に、CodeCommitがその変更をCodePipelineに通知し、パイプラインが実行を開始する、といった連携が可能です。


2. AWS CodeBuild: コードをビルドしテストする作業場

ソースコードが準備できたら、次はそれを実行可能な成果物にビルドし、テストする必要があります。AWS CodeBuildは、フルマネージドなビルドサービスであり、ソースコードのコンパイル、テストの実行、パッケージングなどのタスクを自動化します。

なぜCodeBuildを使うのか?

私がCodeBuildを重宝するのは、その 「マネージド」であることの利便性 と、多様なビルド環境への対応です。以前はJenkinsなどのCIサーバーを自分で立て、メンテナンスする必要がありましたが、CodeBuildを使うことでその運用負荷から解放されました。

  • フルマネージド: ビルドサーバーのセットアップ、スケーリング、メンテナンスが不要です。必要に応じて動的にキャパシティをスケールアウト/インします。
  • 多様な環境: Java、Python、Node.js、Ruby、Go、Dockerなど、様々なプログラミング言語や環境に対応したビルドイメージを提供します。カスタムイメージの利用も可能です。
  • 並列ビルド: 複数のビルドを同時に実行できるため、大規模なプロジェクトでも高速なビルドが可能です。
  • オンデマンド課金: ビルド時間に対してのみ課金されるため、アイドル状態のサーバー費用が発生しません。
  • 詳細なレポート: ビルドログやテストレポートをS3に保存したり、CloudWatch Logsと統合したりして、ビルドの状況を詳細に確認できます。テスト結果の可視化も可能です。

CI/CDパイプラインにおける役割

CodeBuildは、CI/CDパイプラインの 「ビルド」ステージおよび**「テスト」ステージ** を担います。CodeCommitから取得したソースコードを基に、指定されたビルド仕様(buildspec.yml)に従って、以下の処理を実行します。

  • 依存関係のインストール: Pythonの場合、pip install -r requirements.txt など。
  • コードのコンパイル/リンティング: Pythonの場合は通常不要ですが、型チェック (mypy) やコード整形 (Black) などは行います。
  • 単体テスト (Unit Test) の実行: pytest などを使った単体テストを実行し、テスト結果を収集します。
  • 成果物の生成: デプロイ対象となるアプリケーションパッケージ(例: LambdaのZIPファイル、Dockerイメージなど)を作成し、S3やECR (Elastic Container Registry) などにアップロードします。

PythonアプリケーションのCI/CDでは、CodeBuildでbuildspec.ymlを定義し、そこでpytestを実行してテストを自動化したり、Lambdaデプロイ用のZIPファイルを作成してS3に配置したりするのが一般的なパターンです。


3. AWS CodeDeploy: アプリケーションデプロイの自動化

ビルドとテストが完了した成果物は、いよいよターゲット環境にデプロイされます。AWS CodeDeployは、EC2インスタンス、オンプレミスサーバー、AWS Lambda、Amazon ECS (Elastic Container Service) など、様々な環境へのアプリケーションデプロイを自動化するサービスです。

なぜCodeDeployを使うのか?

手動デプロイはミスを誘発しやすく、時間もかかります。CodeDeployは、このプロセスを自動化し、デプロイの信頼性と一貫性を大幅に向上させます。

  • 多様なデプロイターゲット: EC2/オンプレミス(エージェントベース)、Lambda(ZIPファイル直接デプロイ)、ECS(コンテナイメージ更新)など、幅広い環境に対応します。
  • デプロイ戦略の選択: インプレースデプロイ、ブルー/グリーンデプロイ、ローリングアップデートなど、様々なデプロイ戦略をサポートし、デプロイ中のダウンタイムを最小限に抑えたり、リスクを軽減したりできます。
  • 自動ロールバック: デプロイ中にエラーが発生した場合、またはCloudWatchのアラームが特定のしきい値を超えた場合に、自動的に以前の健全なバージョンにロールバックする機能を備えています。
  • フック機能: デプロイライフサイクル中の様々なポイント(例: デプロイ前、デプロイ中、デプロイ後)でカスタムスクリプトを実行するフックを設定できます。これにより、サービス停止、ログ設定、ヘルスチェックなどのカスタム操作を自動化できます。

CI/CDパイプラインにおける役割

CodeDeployは、CI/CDパイプラインの**「デプロイ」ステージ**を担います。CodeBuildで生成されたデプロイ対象の成果物を取得し、ターゲット環境に指定されたデプロイ戦略に従って配置します。

例えば、PythonのWebアプリケーションをEC2にデプロイする場合、CodeDeployはCodeBuildから提供されたアプリケーションパッケージを受け取り、EC2インスタンス上のApacheやNginx、Gunicornなどを更新し、必要に応じてサービスを再起動します。Lambda関数の場合は、新しいZIPファイルをS3から取得し、Lambda関数を更新します。


4. AWS CodePipeline: CI/CDパイプラインのオーケストレーター

これまでに見てきたCodeCommit、CodeBuild、CodeDeployは、それぞれCI/CDパイプラインの特定のフェーズを担当します。これらのサービスを連携させ、一連のワークフローとして自動化するのが、AWS CodePipelineです。CodePipelineは、リリースプロセス全体をモデル化し、自動化するためのオーケストレーションサービスです。

なぜCodePipelineを使うのか?

CodePipelineは、CI/CDパイプライン全体を**「見える化」し、「自動化」する中心的なハブ**です。私がこれまで複雑なCI/CDパイプラインを構築してきた経験から言うと、CodePipelineは各ステージ間の連携を非常にシンプルにし、パイプラインの進捗状況を視覚的に把握できる点が非常に優れています。

  • フルマネージド: パイプラインのインフラ管理が不要です。
  • 視覚的なワークフロー: パイプラインのステージとアクションを視覚的に設定、管理できます。これにより、パイプラインの現在の状態や問題発生箇所を直感的に把握できます。
  • 豊富な統合オプション: Codeファミリーサービスだけでなく、GitHub、Jenkins、Amazon S3、Amazon ECS、AWS CloudFormation、AWS Lambda、そしてサードパーティツール(例: SonarQube、Jiraなど)とも統合できます。
  • 柔軟なステージとアクション: ソース、ビルド、テスト、デプロイ、承認、呼び出し(Lambda実行)など、様々な種類のアクションを持つステージを自由に定義できます。
  • 変更の自動検知: CodeCommitやS3、GitHubなどのソースに変更がプッシュされると、自動的にパイプラインが起動します。

CI/CDパイプラインにおける役割

CodePipelineは、CI/CDパイプライン全体の 「ワークフロー管理」「自動化のトリガー」 を担います。

典型的なCodePipelineのフローは以下のようになります。

  1. Sourceステージ:
    • CodeCommit、GitHub、S3などからソースコードの変更を検知。
    • 変更があった場合にパイプラインを自動的にトリガー。
  2. Buildステージ:
    • CodeBuildを呼び出し、ソースコードをビルドし、単体テストを実行。
    • ビルド成果物をS3などのアーティファクトストアに保存。
  3. Testステージ:
    • CodeBuildで統合テストやE2Eテストを実行。
    • あるいは、Lambda関数を呼び出してカスタムテストを実行。
  4. Approvalステージ (オプション):
    • 手動での承認が必要な場合に設定。承認されるまで次のステージに進まない。
  5. Deployステージ:
    • CodeDeploy、ECS、Lambda、CloudFormationなどを呼び出し、アプリケーションをデプロイ。

※ アーティファクトストアとは、アーティファクトの保存場所です。AWSでは、ビルドプロセスにおいて生成される成果物のことをアーティファクトと呼びます。

Python開発では、CodePipelineを使って、GitHubにプッシュされたコードをCodeBuildでビルド・テストし、生成されたLambda関数をCodeDeployで本番環境にデプロイする、といった一連のパイプラインを構築することが非常に多いです。


その他の関連サービス

CI/CDを語る上で、AWS Codeファミリーの他にも重要なサービスがいくつかあります。

  • AWS CodeArtifact: 開発プロジェクトで利用するパッケージ(PythonのPyPIパッケージなど)をプライベートに保存・管理するためのサービスです。社内ライブラリの共有や、外部依存パッケージのキャッシュに利用できます。
  • AWS CodeCatalyst: 最近発表された新しいサービスで、DevOpsチームのための統合開発環境を提供します。ソースコード管理、CI/CD、 issue追跡、プロジェクト管理などが一つのプラットフォームに統合されており、より迅速な開発とデリバリーを目指します。

まとめ:AWS CodeファミリーでCI/CDを加速する

本日は、AWSにおけるCI/CDサービスの全体像、特にCodeファミリー(CodeCommit, CodeBuild, CodeDeploy, CodePipeline)について詳しく解説しました。これらのサービスは、それぞれがCI/CDパイプラインの特定の役割を担い、相互に連携することで、ソースコード管理からデプロイまでの一連のプロセスを完全に自動化することを可能にします。

私のPython開発経験からも、AWS Codeファミリーは、複雑なインフラ管理から解放され、開発者はアプリケーションロジックの構築に集中できるという大きなメリットをもたらします。これにより、高品質なソフトウェアをより迅速に、より頻繁にリリースすることが可能となり、グローバルなAI企業のような常に進化を求める環境において、競争力を高めるための強力な武器となります。

明日からは、いよいよ実践編です。まずはCI/CDの第一歩である「ソースコード管理」に焦点を当て、AWS CodeCommitを実際に使ってリポジトリを作成し、コードを管理する方法を解説していきます。


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