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実践!AWSネットワーク構築・運用30日チャレンジ: Day 12

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Day 12: Direct ConnectとVPN:オンプレミスとのハイブリッド接続

皆さん、こんにちは!「実践!AWSネットワーク構築・運用30日チャレンジ」のDay 12へようこそ!

これまで、AWSクラウド内でVPCを構築し、複数のVPCをVPCピアリングやTransit Gatewayで接続する方法を学んできました。しかし、多くの企業では、全てのシステムがクラウドに移行しているわけではありません。オンプレミスのデータセンターにある既存システムやデータと、AWSクラウドを連携させる「ハイブリッドクラウド」環境が一般的です。

今日のDay 12では、このハイブリッドクラウドを実現するための、オンプレミスネットワークとAWS VPCを接続する主要な2つのサービス、「AWS Direct Connect」と「AWS Site-to-Site VPN」について詳しく見ていきます。これらの接続を今日の主役であるTransit Gatewayと組み合わせることで、エンタープライズレベルのハイブリッドネットワークを構築できるようになります。

Day 12_ Direct ConnectとVPN:オンプレミスとのハイブリッド接続 - visual selection.png

1. ハイブリッドクラウド接続の必要性

なぜオンプレミスとAWSクラウドを接続する必要があるのでしょうか?

  • データ移行: 大量の既存データをオンプレミスからAWSへ移行する場合、インターネット経由では時間とコストがかかりすぎ、セキュリティも懸念されます。
  • アプリケーション連携: オンプレミスにある基幹システムと、AWS上の新しいアプリケーションがリアルタイムで連携する必要がある場合。
  • 災害対策・事業継続 (DR/BCP): オンプレミス環境のDRサイトとしてAWSを活用する場合。
  • 既存システムとの共存: 全てをすぐにクラウド移行できない場合でも、段階的にクラウドサービスを利用したい場合。
  • セキュリティ要件: インターネットを経由しない、よりセキュアで安定した接続が必要な場合。

これらのニーズに応えるのが、Direct ConnectとVPNです。

2. AWS Site-to-Site VPN:安全で柔軟な接続

AWS Site-to-Site VPN は、オンプレミスネットワークとAWS VPC(またはTransit Gateway)間に、暗号化された安全なIPsecトンネルを構築するサービスです。インターネットを経由して通信を行いますが、データは暗号化されるため、盗聴や改ざんのリスクを低減できます。

Site-to-Site VPNの仕組みと特徴

  • インターネット経由: パブリックインターネットを経由して通信が確立されます。
  • IPsecトンネル: データの送受信はIPsecプロトコルによって暗号化・認証されます。
  • カスタマーゲートウェイ (Customer Gateway - CGW): オンプレミス側のVPNデバイス(ルーターやファイアウォールなど)を表すAWS上のリソース。そのデバイスのパブリックIPアドレスを指定します。
  • 仮想プライベートゲートウェイ (Virtual Private Gateway - VGW) または Transit Gateway: AWS側のVPNエンドポイント。VPCに直接接続する場合はVGW、複数のVPCやオンプレミスを接続する場合はTransit Gatewayに接続します。
  • 冗長性: 高可用性のために、通常2つのVPNトンネルが自動的に作成されます。
  • 設定が比較的容易: Direct Connectに比べて、物理的な回線工事が不要なため、迅速に設定を開始できます。
  • コスト: データ転送量に応じて課金されます。

Site-to-Site VPNが向いているシナリオ

  • 迅速にハイブリッド接続を確立したい場合
  • 比較的少量のデータ転送で、インターネット経由のレイテンシや帯域幅の変動が許容できる場合
  • 緊急時のバックアップ回線としてDirect Connectと併用する場合
  • 地理的に分散した拠点からAWSに接続する場合

3. AWS Direct Connect:専用線による高速・安定接続

AWS Direct Connect は、オンプレミスネットワークとAWSネットワーク間を専用の物理回線で直接接続するサービスです。インターネットを経由しないため、VPNよりも高い帯域幅、低いレイテンシ、そして一貫したネットワークパフォーマンスを提供します。

Direct Connectの仕組みと特徴

  • 専用線接続: あなたのデータセンターまたはコロケーション施設と、AWS Direct Connectロケーション(特定のAWSデータセンターまたはパートナーデータセンター)間で専用の物理回線(イーサネット回線)を確立します。
  • 物理的な接続ポイント: Direct ConnectパートナーまたはAWS Direct Connectロケーションへの回線工事が必要です。
  • 仮想インターフェース (Virtual Interface - VIF): 論理的な接続ポイント。TGWに接続する「Transit VIF」、パブリックサービス(S3など)に接続する「Public VIF」、VPCに直接接続する「Private VIF」があります。
  • 帯域幅: 1Gbps、10Gbps、100Gbpsなど、高速な帯域幅を選択できます。
  • 安定性: インターネットの混雑状況に左右されない、安定したネットワークパフォーマンスが期待できます。
  • コスト: ポート料金(接続時間に応じた固定費用)と、アウトバウンドデータ転送量に応じた費用がかかります。インバウンドデータ転送は無料です。

Direct Connectが向いているシナリオ

  • 大量のデータを継続的に転送する必要がある場合(ビッグデータ分析、AI/ML学習データなど)
  • 低レイテンシかつ安定したネットワークパフォーマンスが必須のアプリケーション(リアルタイムシステムなど)
  • 厳格なセキュリティ要件やコンプライアンス要件がある場合
  • インターネットの帯域幅や信頼性に依存したくない場合

4. Direct ConnectとVPNの使い分け・組み合わせ

特徴 Site-to-Site VPN AWS Direct Connect
接続方法 インターネット経由の暗号化トンネル 専用の物理回線
セキュリティ 暗号化された安全な接続 インターネットを経由しないため、よりセキュア
帯域幅 通常は数Gbps以下 (インターネット回線に依存) 1Gbps, 10Gbps, 100Gbps など高帯域幅
レイテンシ インターネットの状態に依存(変動あり) 低く、一貫性がある
安定性 インターネットの状態に依存 高い
設定期間 短期間(数時間〜数日) 長期間(数週間〜数ヶ月、回線工事による)
コスト 主にデータ転送量 ポート料金(固定)+データ転送量(インバウンド無料)
冗長性 複数のトンネルで実現 複数のDirect Connect接続や、VPNとの組み合わせで実現
推奨シナリオ 迅速な接続、バックアップ、小規模なデータ 大量データ転送、低レイテンシ、高い安定性、厳格なセキュリティ

組み合わせ: 多くの企業では、Direct Connectをプライマリ接続として利用し、Site-to-Site VPNをDirect Connectのバックアップ回線として利用する構成が一般的です。これにより、高帯域幅と安定性を確保しつつ、万が一のDirect Connect障害時にも通信経路を確保できます。

5. Transit Gatewayとハイブリッド接続の連携

Day 11で学んだTransit Gatewayは、Direct ConnectやSite-to-Site VPNと非常に相性が良いです。

TGWが登場する前は、オンプレミスから各VPCにそれぞれVPNやDirect ConnectのVIFを接続する必要があり、接続数がVPCの数に比例して増大し、管理が複雑でした。

しかし、TGWを使用すると、オンプレミスからの接続(VPNまたはDirect Connect VIF)をTGWに集約できます。 そして、TGWに接続された全てのVPCは、そのTGWを経由してオンプレミスネットワークと通信できるようになります。

[ オンプレミス ]
       |
+------+--------+
| Customer Gateway |
+------+--------+
       | (VPN or Direct Connect)
       V
+------------------------------------+
| AWS Transit Gateway                |
+------------------------------------+
       |   |   | (VPC Attachments)
       V   V   V
+------+   +------+   +------+
| VPC-A|   | VPC-B|   | VPC-C|
+------+   +------+   +------+

この「ハブ&スポーク」モデルにより、複雑なルーティングをTransit Gatewayで一元的に管理でき、ネットワーク構成が大幅にシンプルになります。オンプレミスとAWSのVPC間のルーティングもTGWのルートテーブルで制御できます。

6. AI時代におけるハイブリッドクラウドの考慮事項

AI/MLワークロードは、しばしばオンプレミスとクラウド間で大量のデータをやり取りしたり、オンプレミスの既存システムとリアルタイムで連携したりする必要があります。

  • 大規模データセットの転送: オンプレミスに蓄積された学習用データがペタバイト級に達する場合、Direct Connect(特に10Gbpsや100Gbps接続)は、高速かつセキュアにデータをAWSのS3などのデータレイクに転送するための最適な選択肢となります。
  • リアルタイム推論: オンプレミスで稼働するアプリケーションが、AWSクラウド上で稼働するMLモデルのリアルタイム推論APIを呼び出す場合、低レイテンシで安定したDirect Connect接続がユーザーエクスペリエンスに大きく貢献します。
  • コンプライアンスとデータ主権: 特定の機密データがオンプレミスから移動できない場合でも、Direct ConnectやVPNを介してオンプレミスデータにAWS上のMLモデルがアクセスし、推論結果のみを返すようなハイブリッドAIアーキテクチャを構築できます。
  • ハイブリッドなMLOps: オンプレミスのソースコード管理システムやCI/CDパイプラインとAWS上のMLOpsツール(SageMaker Pipelinesなど)を連携させる場合、セキュアなハイブリッド接続が必須となります。

本日のまとめと次へのステップ

今日は、オンプレミスネットワークとAWSクラウドを接続するための主要なサービス、「AWS Site-to-Site VPN」と「AWS Direct Connect」について学びました。

  • VPN: インターネット経由で暗号化された安全な接続を迅速に確立できるが、帯域幅とレイテンシはインターネットに依存。
  • Direct Connect: 専用の物理回線で、高速・低レイテンシ・高安定性の接続を提供。大規模データ転送やリアルタイム要件に適している。
  • Transit Gateway: これらハイブリッド接続をVPCと連携させ、複雑なネットワークを一元的に管理するための強力なハブ。

これらのサービスを理解し、適切に組み合わせることで、あなたはオンプレミスとクラウドをシームレスに連携させる、高度なハイブリッドクラウドネットワークを設計できるようになります。

明日のDay 13では、「Amazon Route 53:DNSとルーティングの最前線」と題して、AWSのフルマネージドDNSサービスである「Amazon Route 53」について学びます。Webアプリケーションのルーティング制御や、高可用性・耐障害性のあるシステム構築に不可欠なサービスです。


今日のDirect ConnectとVPN、それぞれの特徴と使い分けは理解できましたか?ハイブリッドクラウドのイメージが湧いたら、ぜひ「いいね」👍で教えてください!

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