0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

徹底比較! AWS vs Azure 〜30の観点から考える最適なクラウド選び〜 - Day7: NoSQLデータベース:AWS DynamoDB vs Azure Cosmos DB

Last updated at Posted at 2025-08-29

Day7: NoSQLデータベース:AWS DynamoDB vs Azure Cosmos DB

皆さん、こんにちは。エンジニアのAkrです。
「徹底比較! AWS vs Azure」シリーズ、Day7へようこそ。

今回は、非リレーショナルデータを扱うNoSQLデータベースを比較します。AWSのDynamoDBとAzureのCosmos DBは、どちらも高いスケーラビリティとパフォーマンスを誇るマネージドサービスです。

NoSQLデータベースの基本

NoSQLデータベースは、従来のRDB(リレーショナルデータベース)とは異なり、柔軟なデータ構造と水平方向への高いスケーラビリティを特徴とします。

主な用途

  • SNSの投稿データ管理
  • IoTデバイスからの大量データ処理
  • ゲームのユーザーセッション管理
  • リアルタイムアナリティクス
  • チャットアプリケーションのメッセージ履歴

NoSQLデータベースは以下の4つの主要なタイプに分類されます:

  • ドキュメント型:JSONやXML形式でデータを格納
  • キーバリュー型:単純なキーと値のペアでデータを管理
  • カラムファミリー型:列指向でデータを格納
  • グラフ型:ノードとエッジを使ってデータの関係性を表現

AWS DynamoDB vs Azure Cosmos DB:詳細比較

比較項目 AWS DynamoDB Azure Cosmos DB
サポートデータモデル キーバリュー、ドキュメント キーバリュー、ドキュメント、グラフ、カラムファミリー
API互換性 DynamoDB独自API MongoDB、Cassandra、Gremlin、Table API、SQL API
整合性モデル 結果整合性、強い整合性 5つの整合性レベル(強い、限定的な古さ、セッション、一貫したプレフィックス、最終的)
課金モデル オンデマンド/プロビジョニング済み(RCU/WCU) プロビジョニング済み/サーバーレス(Request Unit)
グローバル分散 グローバルテーブル機能 標準でグローバル分散をサポート
最大アイテムサイズ 400KB 2MB
バックアップ オンデマンド/継続的バックアップ 自動バックアップ(継続的・定期的)

AWS DynamoDB:詳細分析

強み(Pros) 弱み(Cons)
卓越したパフォーマンス
• 単一桁ミリ秒の低レイテンシ
• DAX(DynamoDB Accelerator)により、マイクロ秒レベルの応答時間を実現
• 1秒間に数千万リクエストの処理が可能
限定的なクエリ機能
• 複雑なJOINやアグリゲーション操作が困難
• フルテキスト検索には別途Amazon Elasticsearchとの連携が必要
• インデックス戦略の設計が重要
コスト効率性
• オンデマンドキャパシティにより、使用量に応じた従量課金
• プロビジョニング済みキャパシティでのコスト予測可能性
• 無料利用枠:月25GBのストレージと25万件のリクエスト
ベンダーロックイン
• DynamoDB独自のAPIによる移植性の低さ
• 他のNoSQLソリューションとの非互換性
• AWS以外への移行が困難
AWSエコシステムとの深い統合
• Lambda関数との自然な連携
• CloudWatch、IAM、VPCとのシームレスな統合
• AWS AppSyncによるリアルタイムAPI構築
データモデリングの制約
• リレーショナルモデルからの移行における学習コスト
• 正規化されたデータ構造が適さない場合がある
• パーティション設計の重要性
運用負荷の軽減
• フルマネージドサービス
• 自動スケーリング機能
• パッチ適用やメンテナンスが不要
アイテムサイズ制限
• 最大400KBのアイテムサイズ制限
• 大きなドキュメントの分割が必要
• バイナリデータの扱いに制約

Azure Cosmos DB:詳細分析

強み(Pros) 弱み(Cons)
マルチモデル・マルチAPI対応
• 既存のMongoDB、Cassandraアプリケーションをそのまま移行可能
• 開発チームの学習コストを最小限に抑制
• 複数のデータモデルを単一サービスで統合管理
複雑な料金体系
• Request Unit(RU)の概念理解が困難
• 予期しないコスト発生のリスク
• 料金計算ツールの習熟が必要
グローバル分散の標準サポート
• ワンクリックでのマルチリージョン展開
• 自動フェイルオーバー機能
• 読み取り専用レプリカの柔軟な配置
パフォーマンスチューニングの複雑さ
• 複数のAPIサポートによるパフォーマンス特性の違い
• 適切なパーティション戦略の設計が重要
• API選択によるパフォーマンス差
柔軟な整合性制御
• アプリケーション要件に応じた5段階の整合性レベル
• パフォーマンスと一貫性のトレードオフを細かく調整
• リージョンごとの整合性設定も可能
AWSと比較した場合のエコシステム制限
• Azure特有のサービス連携に依存
• サードパーティツールとの統合がAWSより限定的
• 既存AWSインフラとの統合困難
豊富なインデックス機能
• 自動インデックス作成
• カスタムインデックス政策
• 空間データとの統合クエリサポート
運用管理の複雑さ
• 複数APIモデルの管理が必要
• パフォーマンス監視項目が多数
• 最適化のための専門知識が必要

実用的な選択指針

DynamoDBを選ぶべきケース

シナリオ例:

  • 超高速なゲームリーダーボード
  • リアルタイム広告配信システム
  • IoTデータの高頻度取り込み

技術的要件:

  • 単純なキーバリューアクセスパターン
  • AWSエコシステム内での開発
  • 極めて高いパフォーマンス要求
  • 予測可能なアクセスパターン

Cosmos DBを選ぶべきケース

シナリオ例:

  • 国際展開するEコマースプラットフォーム
  • 既存MongoDBアプリケーションのクラウド移行
  • マルチリージョンでの社内システム統合

技術的要件:

  • 既存NoSQL APIとの互換性が必要
  • グローバルデータ分散が前提
  • 複雑なクエリ要件
  • マルチモデルデータの統合管理

コード例

DynamoDB(Python)

import boto3

# DynamoDBクライアント初期化
dynamodb = boto3.resource('dynamodb')
table = dynamodb.Table('UserSessions')

# アイテム挿入
table.put_item(
    Item={
        'user_id': '12345',
        'session_id': 'sess_abc123',
        'timestamp': 1640995200,
        'data': {'level': 10, 'score': 2500}
    }
)

# クエリ実行
response = table.query(
    KeyConditionExpression='user_id = :uid',
    ExpressionAttributeValues={':uid': '12345'}
)

Cosmos DB(MongoDB API)

const { MongoClient } = require('mongodb');

// 接続設定
const client = new MongoClient(connectionString);
const db = client.db('gameDB');
const collection = db.collection('userSessions');

// ドキュメント挿入
await collection.insertOne({
    userId: '12345',
    sessionId: 'sess_abc123',
    timestamp: new Date(),
    data: { level: 10, score: 2500 }
});

// クエリ実行
const sessions = await collection.find({ userId: '12345' }).toArray();

パフォーマンス・コスト比較

パフォーマンス指標

  • DynamoDB: 10ms未満の応答時間(DAXで1ms未満)
  • Cosmos DB: 10ms未満の応答時間(P99で99.99%の可用性保証)

コスト例(月1TB、100万リクエスト/月)

  • DynamoDB: 約$300-400(リージョン・設定により変動)
  • Cosmos DB: 約$500-700(RU設定・リージョン数により変動)

まとめ:戦略的選択のガイドライン

選択基準 DynamoDB推奨 Cosmos DB推奨
コストパフォーマンス ✅ 単純用途で優秀 ❌ やや高コスト
開発・移行コスト ❌ 独自APIの学習要 ✅ 既存スキル活用可
パフォーマンス ✅ 最高クラス ⭕ 高パフォーマンス
グローバル展開 ⭕ 追加設定要 ✅ 標準サポート
エコシステム連携 ✅ AWS内で最強 ⭕ Azure内で強力

最終推奨

DynamoDBを推奨するケース:
超高速パフォーマンスが最優先で、AWSエコシステム内での開発を前提とし、シンプルなアクセスパターンのアプリケーション

Cosmos DBを推奨するケース:
既存のNoSQLデータベースからの移行を予定しており、グローバル展開が確実で、複雑なクエリ要件があるアプリケーション

どちらも優秀なサービスですが、技術的要件、組織の技術スタック、将来の拡張計画を総合的に検討して選択することが重要です。

この記事が役に立ったら、ぜひ「いいね」と「ストック」をお願いします!


次回のDay8では、ネットワーク基盤の要となるAWS VPCとAzure Virtual Networkを詳細比較します。クラウドネットワーキングの設計思想の違いや実践的な構築パターンまで深く掘り下げる予定です。お楽しみに!

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?