Day4: サーバーレス:AWS Lambda vs Azure Functions
皆さん、こんにちは。エンジニアのAkrです。
「徹底比較! AWS vs Azure」シリーズ、Day4へようこそ。
今回は、インフラ管理から解放されるサーバーレスの世界を掘り下げます。AWSのLambdaとAzureのFunctionsは、どちらもイベント駆動でコードを実行するFaaS(Function as a Service)の代表格です。
サーバーレスの基本
サーバーレスと聞くと「サーバーがない」と誤解されがちですが、実際にはクラウドプロバイダーがサーバーのプロビジョニングやスケーリング、管理をすべて担当してくれる、ということです。開発者はコードを書くことに集中できます。
サーバーレスの主な特徴
- イベント駆動: 特定のイベント(例:ファイルがストレージにアップロードされた、APIが呼び出された、データベースにデータが書き込まれた)が発生したときにだけ、コードが実行されます。
- 従量課金: コードが実行された時間と使用されたメモリ量に基づいて課金されます。実行されていない間は料金が発生しません。
- 自動スケーリング: トラフィックに応じて自動的にスケールアップ・ダウンします。
- 高可用性: マルチAZ/リージョンでの冗長化が自動で提供されます。
AWS LambdaとAzure Functionsは、このFaaSの概念を最も体現しているサービスです。
AWS LambdaとAzure Functionsの詳細比較
観点 | AWS Lambda | Azure Functions |
---|---|---|
対応言語 | Node.js、Python、Java、Go、C#、Ruby、PowerShell、カスタムランタイム | C#、F#、JavaScript、Python、TypeScript、Java、PowerShell |
実行時間制限 | 最大15分 | 従量課金: 10分、Premium/App Service: 無制限 |
メモリ制限 | 128MB~10,240MB(10GB) | 従量課金: 1.5GB、Premium/App Service: 14GB |
一時ストレージ | /tmp に最大10GB | Windows: 500MB、Linux: 可変 |
コールドスタート | 数百ms~数秒(言語・サイズ依存) | 数百ms~数秒(プラン・言語依存) |
同時実行数 | デフォルト1,000(上限緩和可能) | 従量課金: 200、Premium: 無制限 |
イベントソースの比較
サービス | AWS Lambda | Azure Functions |
---|---|---|
AWS/Azureサービス | S3、DynamoDB、API Gateway、CloudWatch、SQS、SNS、Kinesis等 | Blob Storage、Cosmos DB、Service Bus、Event Grid、Timer等 |
外部サービス | 限定的(カスタム実装が必要) | GitHub、Twilio、SendGrid等の豊富な外部連携 |
HTTP トリガー | API Gateway経由 | 直接HTTP トリガー対応 |
価格モデルの比較
AWS Lambda
- 実行回数: 月100万回まで無料、以降$0.0000002/回
- 実行時間: 月40万GB秒まで無料、以降$0.0000166667/GB秒
- プロビジョンド同時実行: 別途課金
Azure Functions
- 従量課金プラン: 月100万回+40万GB秒まで無料
- Premiumプラン: 月額固定+実行時間
- App Serviceプラン: 他のリソースと共有
実際のユースケース比較
AWS Lambda が適している場面
# 例: S3にファイルがアップロードされた際の画像リサイズ
import json
import boto3
from PIL import Image
def lambda_handler(event, context):
s3 = boto3.client('s3')
bucket = event['Records'][0]['s3']['bucket']['name']
key = event['Records'][0]['s3']['object']['key']
# 画像処理ロジック
# ...
return {
'statusCode': 200,
'body': json.dumps('Image processed successfully')
}
最適なケース:
- AWSエコシステム内での処理
- マイクロサービスアーキテクチャ
- バッチ処理やETL処理
- API Gatewayとの組み合わせでREST API構築
Azure Functions が適している場面
// 例: Office 365のメール受信時の自動処理
[FunctionName("ProcessEmail")]
public static async Task Run(
[ServiceBusTrigger("emails")] string message,
ILogger log)
{
log.LogInformation($"Processing email: {message}");
// Outlook APIとの連携処理
// ...
}
最適なケース:
- Microsoft製品との連携
- Office 365やDynamics 365との統合
- .NET開発者チーム
- Visual Studio での開発環境
パフォーマンス・セキュリティ比較
パフォーマンス
項目 | AWS Lambda | Azure Functions |
---|---|---|
コールドスタート対策 | Provisioned Concurrency | Premium Plan |
ネットワーク | VPC接続可能 | VNet統合対応 |
カスタムランタイム | 完全対応 | 限定的 |
セキュリティ
項目 | AWS Lambda | Azure Functions |
---|---|---|
認証・認可 | IAM、Cognito | Azure AD、App Service認証 |
暗号化 | KMS統合 | Key Vault統合 |
ネットワーク分離 | VPC、Security Groups | VNet、NSG |
開発・運用面での比較
AWS Lambda
強み:
- 豊富なエコシステム: AWS SAM、Serverless Framework等のツール
- 詳細なモニタリング: CloudWatch、X-Ray による詳細な観測
- 柔軟なデプロイ: コンテナイメージ、ZIP、レイヤー機能
弱み:
- 学習コストの高さ: AWS特有の概念や設定項目が多い
- ベンダーロックイン: AWSサービスとの密結合
Azure Functions
強み:
- 開発者体験: Visual Studio/VS Code との優れた統合
- 企業向け機能: Azure DevOps、App Insights との連携
- プラン柔軟性: 従量課金から常時起動まで選択可能
弱み:
- カスタムランタイム制限: Lambda程の自由度はない
- 情報量: AWS Lambda比で日本語情報が少ない
実際の選択基準
AWS Lambda を選ぶべきケース
- すでにAWSインフラを多用している
- 高度なカスタマイゼーションが必要
- 大量の短時間バッチ処理
- コストを最小限に抑えたい
- 豊富なサードパーティツールを活用したい
Azure Functions を選ぶべきケース
- Microsoft 365やDynamics 365との連携が必要
- .NET/C# 中心の開発チーム
- Visual Studio での開発に慣れている
- エンタープライズセキュリティ要件が厳しい
- 長時間実行する処理がある
移行・マルチクラウド戦略
両サービス間での移行やマルチクラウド戦略を考える際のポイント:
コード移植性を高める設計
// プラットフォーム固有の処理を抽象化
const handler = async (event, context) => {
const request = normalizeEvent(event); // 各プラットフォーム固有の形式を統一
const result = await businessLogic(request); // ビジネスロジックは共通化
return formatResponse(result); // レスポンス形式をプラットフォーム固有に変換
};
インフラ as Code の活用
- Terraform: 両プラットフォーム対応
- Serverless Framework: プラグインで両対応
- Azure Resource Manager / AWS CloudFormation: 各々専用
まとめ:2024年時点での選択指針
優先事項 | 推奨サービス | 理由 |
---|---|---|
コスト最優先 | AWS Lambda | より細かい課金単位、豊富な無料枠 |
開発生産性 | Azure Functions | Visual Studio統合、デバッグ環境 |
エンタープライズ | Azure Functions | Azure AD、Office 365連携 |
技術的柔軟性 | AWS Lambda | カスタムランタイム、豊富なエコシステム |
スタートアップ | AWS Lambda | 豊富な情報、コミュニティサポート |
結論として、技術的な自由度とコストを重視するなら AWS Lambda、Microsoft エコシステムとの統合や開発者体験を重視するなら Azure Functions が最適な選択となります。
重要なのは、現在のインフラ状況、チームのスキルセット、将来の拡張計画を総合的に考慮することです。
次回は、オブジェクトストレージに焦点を当て、AWS S3とAzure Blob Storageを比較します。お楽しみに!