最初に
本記事の内容は、私がリモート勤務環境下でエンジニアチーム内の交流を絶やさないよう、実践してきたことを共有するものです。この記事が、エンジニアチームマネジメントを考える方々の参考になれば幸いです。
本記事の対象者は以下の通りです。
- リモート勤務環境下でエンジニアマネジメントを行なうポジションの方
- マネジメントポジションを目指している方
- リード陣が何を思って交流を増やそうとしてるか、考え覗き見したいメンバーの方
1. 定例を飽きさせない工夫
チームで働くからには、朝会や夕会など、1日~1週間に1回のミーティングを定例として実施しているプロジェクトも多いと思います。そういった場では進捗度合いや業務連絡がメインですが、思い切って雑談の時間も合わせて設けてみることをオススメします。
ただし、全員が自由に話せる雑談タイムではなく、全員が自分のターンを持つ形式にします。エンジニアは控えめな方が多いため、遠慮して自分からは話し出せないことも多いです(私がそうです)。あえて、一人一人の報告終了時に、それぞれが雑談する時間を1分でもいいので設けることで、当事者意識が芽生え、参加しやすくなります。
例えば、チームに
- リードのAさん
- Bさん
- Cさん
- Dさん
がいるとします。
自分のターンを持つ形式での定例は、以下のような流れになります。
- リードのAさんから特筆事項の共有
- Bさんの進捗共有+質問
- Bさんの雑談タイム
- Cさんの進捗共有+質問
- Cさんの雑談タイム
- Dさんの進捗共有+質問
- Dさんの雑談タイム
ただし、雑談タイムは長くなりすぎないよう、気を付ける必要があります。
少人数のチームであれば、1人あたりの雑談タイムが2分、3分に伸びても大きな問題にはなりません。しかし、10人以上のチームで雑談時間が伸びてしまうと、確認したい項目がおざなりになったまま、定例時間が大きく伸びてしまいます。
これは実際に私が定例を運用していた時の反省点でもあります。
ミーティングでは他の人の作業時間を頂いて開催している、という自覚を持ちながら、良い塩梅を探っていく必要があります。
司会進行について
私がチームマネジメントをしていた際は、司会もローテーション制にしていました。
普段から1日1回の定例があるとして、最初のうちはメンバーも少ないのであれば誰が何を担当しているかは覚えやすいと思います。しかし、メンバーが増えていき、5人、7人、10人…と規模が大きくなってきた場合、次第に誰が何をしているのか、メンバーポジションの人たちからは把握しきれなくなります。
司会進行をローテーション制にすると、メンバーが他のメンバーに対して進捗を聞く形となり、多少なりとも記憶に残る可能性が高くなります。おぼろげにでも良いので、記憶に残っていると、仕事での連携がスムーズに進めやすくなります。
メリットは他にもあります。司会が固定されてる場合、雑談タイム時に発言するのは基本的にリードのAさんと各メンバーだけでしょう。しかし、司会進行をローテーションすることで、メンバー同士での交流が発生します。
(もちろん、メンバー同士が不仲な場合は無理にローテーション制を導入する必要はありませんが、その場合は別問題として解決策を講じる必要があると思います…)
その他にも、例えばリーダーが不在の際にも、全員が司会進行の流れを把握していれば、スムーズに対応してくれることでしょう。
しかし中には、こういった定例は時間を短く効率的にしたい方もいると思います。
そういった方向けにいくつかのTipsを提示します。
定例時の進行マニュアル用意
定例の司会進行の流れをマニュアル化しておくと、司会進行ローテーション時だけではなく、長期休暇後などでもスムーズに復帰ができます。また、新しいメンバーが入った際にも、定例がどのように進行しているのか、理解してもらいやすくなります。
議事録の作成
議事録テンプレートを活用し、議事録を用意しておいて、時間までにメンバーに書いておいてもらうのも良いでしょう。そうするとメンバーの進捗報告時には書いてもらったものを簡単に読み上げてもらうだけで済み、雑談の時間も確保できます。
また、議事録を用意しておけば、欠席したメンバーも後から状況を把握できます。
タスク管理ツールの活用
プロジェクトで使用しているタスク管理ツールがあるなら、ツール上で各人のタスクを見つつ進捗報告を進めるのも一つの方法です。シンプルな口頭での進捗報告であれば、議事録なしでも十分な場合があります。ただし時間帯によっては集中力が欠如して、報告内容が頭に入らないこともあるので、まずはテスト運用してみるのが良いでしょう。
雑談テーマの提示
雑談タイムのテーマを個人に任せると、話が長くなりがちな人や、話題を見つけられない人が出てしまいます。最近だとWeb上で利用できる「トークテーマガチャ」などのサービスもあるので、そちらを使って予め「本日の雑談テーマ」を決めておくと良いかもしれません。
実際、私はこちらのサービスを使って、しばらくの期間は忙しい定例の時間でも簡単な雑談を挟むようにしていました。
頻度の調整
定例のスケジュールだけではなく、司会進行の順番切替、雑談タイムを含む日などの、頻度を調整するのも効果的です。
例えば、私がいたチームでは以下のように運用していました。
- 定例は二日に一回
- 司会進行切替は一週間に一度
- 雑談タイムは一週間に一度
もしもスクラム形式で、毎日簡単なデイリー進捗報告会をするのであれば、以下のような形式を推奨します。
- タスク管理ツールを見ながら口頭で進捗報告
- 一週間ごとに司会進行を交代
- 毎週水曜日に雑談タイムを追加
定例はもちろん必要ですが、その中でメンバー同士を知るきっかけを提供し、チームとしてのコミュニケーションを円滑にする工夫をすると、よりチームとしての結束度が強まるのでおすすめです。
2. 勉強会の実施
チーム内エンジニア間だけではなく、事業部や会社全体としてエンジニアコミュニケーションを増やすのが目的であれば、勉強会を実施するのも良いでしょう。
オフライン・オンライン共に実施する際のポイントは異なりますが、どちらも良いきっかけになります。最初は立ち上げやスケジュール調整、発表者探し等で手間取るかもしれませんが、継続できればとても良い刺激になります。また、勉強会を行うことで社内ナレッジを蓄積することもできます。
以下にオフライン・オンラインでのそれぞれの立ち上げポイントを参考までに記しておきます。
オフライン勉強会の開催
オフライン勉強会は、参加者が直接顔を合わせることができるため、コミュニケーションが円滑になりやすいという利点があります。以下のポイントを押さえると、効果的な勉強会を開催できます。
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会場の確保:
参加人数に応じた適切な会場を確保しましょう。設備(プロジェクター、ホワイトボードなど)が整っているとベストです。会社によっては、オフィスのセミナールームなどを社員に貸し出しているところもあります。 -
日程の調整:
参加者のスケジュールを調整し、できるだけ多くのメンバーが参加できる日程を選びます。懇親会なども考えるとしたら平日の夕方~夜が良いでしょう。お酒を出すなら、金曜日の夜がベスト…かもしれません。 -
アジェンダの作成:
勉強会の目的や内容を明確にし、アジェンダを事前に共有しておくとスムーズに進行できます。 -
発表者の確保:
内部のメンバーや外部の専門家を招いて発表を依頼し、テーマに応じた知見を共有してもらいます。この際に、チーム内から発表メンバーを選出する際には、「誰かやりたい人いませんか?」と募集を募るよりも「xxxさん、やってみませんか?」と名指しするのも良いかもしれません。 -
フィードバックの収集:
勉強会終了後に参加者からフィードバックを収集し、次回の改善点を見つけるための材料とします。Googleのアンケート機能などを活用してフォームを用意し、参加者に簡単に意見を共有してもらえるようにしましょう。
オンライン勉強会の開催
オンライン勉強会は、場所や時間にとらわれず参加できる利便性があります。以下のポイントを押さえると、効果的なオンライン勉強会を開催できます。
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ツールの選定:
ZoomやMicrosoft Teams、Google Meetなどのビデオ会議ツールを使用し、参加者が簡単にアクセスできる環境を整えます。発行したURLはカレンダーなどの予定詳細に記載するとよりアクセスしやすくなるでしょう。 -
事前準備:
事前に発表資料やリンクを共有し、参加者が予習できるようにします。また、技術的な問題が発生しないよう、ツールの使い方や接続テストを事前に行っておくと安心です。 -
インタラクティブな要素:
質問タイムやディスカッションタイムを設け、参加者同士の交流を促進します。投票機能やチャット機能を活用し、参加者が積極的に関与できるように工夫します。 -
録画の提供:
勉強会の内容を録画し、後から視聴できるようにすることで、参加できなかったメンバーにも情報を共有できます。録画を保存しておけば、後日見返すこともでき、知識の定着にも役立ちます。
継続するためのポイント
勉強会を継続的に開催するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
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定期的な開催:
月1回や2週間に1回など、定期的なスケジュールを設定し、継続的してみましょう。オンライン懇親会を含む場合は金曜日の夜がおすすめです。懇親会含まないカジュアルな勉強会であれば月~木の夕方頃などが良いでしょう。 -
勉強会のログ:
勉強会開催後は資料と録画をまとめて確認できる場所に残しておきましょう。オンラインの勉強会と同様に、内容を録画したり、資料を公開しておくことで他メンバーにも知識の共有ができます。 -
フィードバックの収集:
勉強会終了後にアンケートを実施し、参加者のフィードバックを集めて次回の改善に活かします。ただし2週間に1回開催するのであれば比較的軽めのアンケートが良いかもしれません。 -
テーマの多様化:
技術的なテーマだけでなく、ソフトスキルやキャリアについてのテーマも取り入れることで、参加者の興味を引き続けます。
3. ツールの活用と溜まり場の作成
最近では、気軽にコミュニケーションを促進できるツールが多くリリースされています。特にバーチャルオフィスツールやコミュニケーションプラットフォームの活用は、多くの企業で取り入れられているので、使ったことがある人もいるかもしれません。
今回はバーチャルオフィスツールの例としてGatherを例として紹介します。また、SlackやDiscordを活用したテキスト&ボイスコミュニケーションのポイントも紹介します。
Gather
Gatherは、バーチャルオフィスツールの一つで、リアルタイムのコミュニケーションを促進するのに非常に効果的です。以下はGatherの特徴とその活用方法です。
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仮想オフィス空間:
Gatherは仮想のオフィス空間を提供し、メンバーがアバターを使って自由に移動できます。これにより、まるで実際のオフィスにいるかのような感覚でコミュニケーションが取れます。たとえば、メンバーがアバターで自分のデスクに座ると他のメンバーが気軽に話しかけることができるため、雑談しやすくなります。 -
自動ビデオ通話:
アバター同士が近づくと自動的にビデオ通話が始まり、自然な形で会話ができます。これにより、ちょっとした質問や相談が気軽に行えます。 -
カスタマイズ可能:
オフィスのレイアウトやデザインをカスタマイズでき、チームの雰囲気に合わせた空間を作ることができます。自身のデスクもカスタマイズできるため、会話のきっかけにも繋がるでしょう。
Slackの活用
Slackは、リモートワークのチームコミュニケーションにおいて非常に強力なツールです。以下の機能を活用することで、メンバー間の交流を活発にできます。
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チャンネルの活用:
プロジェクトごとやテーマごとにチャンネルを作成し、情報を整理して共有できます。例えば、雑談専用のチャンネルを作ることで、カジュアルな交流も促進できるでしょう。他の一般的な雑談チャンネルだけではなく、エンジニア雑談チャンネルなどもあると面白いかもしれません。 -
ボットの導入:
Slackボットを導入することで、定期的なリマインダーやアンケートの実施、チームメンバーの紹介などを自動化できます。例えば、毎朝の「今日の目標」をボットがリマインドしたり、週次のアンケートを実施してフィードバックを集めることができます。特に勉強会を開催するのであればリマインダーを作ると効果的です。 -
スタンプやリアクション:
スタンプやリアクションを活用して、メッセージに対するフィードバックを簡単に行い、コミュニケーションを円滑にしましょう。例えば、メンバーが投稿した成果物に「👍」や「🎉」のリアクションをつけることで、簡単に評価や感謝の気持ちを伝えることができます。メンバーからスタンプの要望を受け入れるようにするのも良いでしょう。
Discordの活用
Discordは、ゲーマー向けのコミュニケーションツールとして始まりましたが、現在ではビジネス用途でも広く使われています。以下の機能を活用することで、リモートワークのチームコミュニケーションを強化できます。
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チャンネルの作成:
Slack同様、プロジェクトごとやテーマごとにテキストチャンネルとボイスチャンネルを作成し、情報を整理して共有することができます。もちろん雑談専用のチャンネルを作って、カジュアルな交流も促進できます。 - ボイスチャット:リアルタイムでの音声コミュニケーションが可能です。例えば、ちょっとした質問・相談をする場として活用できます。私が以前働いていたチームでは、エンジニアメンバーからの要望で「エンジニア待機部屋」というチャンネルが作成されました。そこでは気軽に参加して雑談したり(エンジニアだけではなくプランナーさんなども)、他の人の話を聞きながら作業できるボイスチャンネルとして、頻繁に使われていましたし、チームメンバーからもポジティブな感想が出ていました。
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画面共有:
ミーティング中やペアプログラミングの際に画面を共有することで、視覚的に情報を伝えることができます。例えば、デザインレビューやコードレビューをリアルタイムで行う際に便利です。 -
カスタムボット:
Discordボットを導入することで、定期的なリマインダーやアンケートの実施、タスクの自動管理などを行うことができます。Slackほどビジネス向けに色々整っているわけではありませんが、botの種類自体は豊富でエンタメ性に優れたものが多いため、活用してみることをおすすめします。 -
ステージ機能:
大人数での発表やイベントに利用できるステージ機能を活用し、社内の勉強会やセミナーをスムーズに進行できます。もしも大規模なオンライン勉強を開催するのでしたら、ステージ機能の活用をおすすめします。
これらのツールを活用して、リモート環境でもチームメンバー間の交流を促進し、コミュニケーションの質を向上させることができます。
4. 1on1の検討
リモートワーク環境では、メンバー間の交流を維持するために、リーダーとエンジニア間での1on1ミーティングが特に重要です。信頼できる人が一人でもチーム内にいることで、発言のしやすさや、各ミーティングや勉強会などへの参加率も向上します。
1on1の重要性
1on1ミーティングは、個別のフィードバックやキャリア相談を行う場として非常に重要です。以下のポイントを押さえることで、効果的な1on1ミーティングを実施できます。
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定期的な実施:
1on1ミーティングは定期的に実施し、継続的なフォローアップを行います。月1回や2週間に1回など、頻度を設定することで、メンバーの状況を常に把握し、適切なサポートを提供できるようにしましょう。 -
オープンな対話:
メンバーが自由に意見を述べられるよう、オープンな対話を心掛けます。リーダーは聞き役に徹し、メンバーの意見や考えを尊重し、信頼関係を築くことが重要です。 -
具体的なフィードバック:
フィードバックは具体的で建設的なものにし、メンバーが改善点や強みを明確に理解できるようにします。褒める点は具体的に伝え、改善点は具体的なアクションプランと共に伝えることで、メンバーの成長を促進します。
1on1の実施ポイント
1on1ミーティングを効果的に実施するための具体的なポイントを以下に示します。
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準備をしっかりと:
ミーティング前にアジェンダを作成し、話すべき内容を整理しておきます。メンバーにも事前にアジェンダを共有し、準備を促します。例えば、進捗状況の確認や課題、今後の目標について話す内容をエクセルや目標管理ツールなどでリストアップしておくと良いでしょう。 -
進捗確認と目標設定:
過去の目標やタスクの進捗を確認し、新たな目標を設定します。短期的な目標と長期的なキャリア目標の両方を考慮し、具体的なステップを設定します。例えば、「次の1ヶ月で技術Xを習得する」「6ヶ月以内にプロジェクトリーダーとしてのスキルを磨く」など、期限と目標をセットにして設定していきます。この際、ちょっと頑張れば到達できるかも、レベルの目標が理想だと思われます(個人的な意見です)。 -
フィードバックとサポート:
メンバーのパフォーマンスについてフィードバックを行い、必要なサポートを提供します。課題や悩みがあれば、一緒に解決策を導き出すために働きかけます。
エンジニアメンバーとの1on1は可能な限り実施することを強くお勧めします。
1on1の手法は、以下の記事にもまとめてありますので、もしも興味があれば一読頂けると嬉しいです。
エンジニアメンバーとの1on1手法と、次に行うアクションの重要性
まとめ
リモート勤務環境下でもエンジニアチームの交流を絶やさないためには、いくつかの工夫と取り組みが必要です。
-
定期的なミーティングの工夫:
進捗確認だけでなく、雑談タイムを設けることでメンバー間のコミュニケーションを促進します。司会進行のローテーションや議事録の活用も効果的です。 -
勉強会の実施:
オフライン・オンラインでの勉強会を定期的に開催し、技術的な知識だけでなく、ソフトスキルやキャリアに関するテーマも取り入れることで、メンバーの興味を引き続けます。 -
ツールの活用と溜まり場の作成:
Gather、Slack、Discordなどのツールを活用して、リアルタイムのコミュニケーションを促進し、メンバー同士の交流を活発にします。 -
1on1の実施:
リーダーとエンジニア間での定期的な1on1ミーティングを行い、オープンな対話を心掛け、具体的なフィードバックとサポートを提供することで、メンバーの成長と信頼関係を築きます。
これらの方法を組み合わせて実践することで、チームメンバー間の信頼関係を築き、強固なチームワークを維持することができます。この記事が、リモート環境でのエンジニアマネジメントに関する参考となれば幸いです。