0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

AIをフル活用したドキュメント作成

Last updated at Posted at 2025-12-31

書き物は大変ですが、自分の知見を一段深める重要なプロセスでもあります。

一方、場合によっては、とにかく読める(が筋は通っていて意味深い)文章、あとに残して恥ずかしくない文章の作成で事足りる場合もあります。

今回、学術論文の体裁を念頭に、そのような文章をAIによってなるべく早く作っていく手順について提案してみます。タイトルは「AIをフル活用」としていますが、完全にHuman-in-the-Loopですし、それが適切だと考えます。

この提案では以下の順番で文書作成を進めますが、凝り固まったものではなく、イントロを作る前に議論を仕上げる、などのアドリブも状況しだいで採用可能です。

大きな流れ
0. 全体構成・図表

  1. 結果
  2. 方法
  3. 結論
  4. イントロ
  5. 議論(結論の肉付け)
  6. アブスト
  7. 全体確認
  8. 参考文献

0. 全体構成

大前提として、どういった図表を載せるか、どういう手順で並べるか、何がこの文書のキーメッセージになるか、といった点はプロポーザルにまとめ、この時点で共著者やスーパーバイザーから方向性にアグリーをとっておくことが重要です。

1. 結果

1-1. 結果・メッセージを図ごとに箇条書きで書く(人力)

結果は、技術文書の中心をなすものであり、なおかつ著者が実験などを通じて出してきた成果物であるはずなので、箇条書きで書くことはあまり困らないと想定されます。
箇条書きメッセージの作成は図ごとに行ってみましょう。

1-2. 文章生成(ChatGPT)

ChatGPTに指示して、箇条書きの内容を文章にしてもらいましょう。
図ごとに一定程度完結したストーリーが形成されるよう仕立てましょう。

例:「上記の箇条書きの内容をもとに、英単語○個程度で論文用文章を作成して」

1-3. 論点の補強(ChatGPT)

ここまでは生データから言える「事実」を集めたり、文書化したりしましたが、それだけだと文書は読者にとって味気ないものとなる可能性があります。

文書をより魅力的なものとするには、少し突飛な提案を導入することも検討したい(ただし、いいすぎるとNG)ので、どんな論点を含めたら読者が関心を持つかAIに提案させてみましょう。

例:「添付の文書に対して、やや新鮮味のある観点を併せて提案し、読者の関心をひきたい。どのような観点を挙げるべきか、5つほど提案して」

2. 方法

2-1. 自分で書く(人力)

既存手法だけで新規な結果を出す状況は少なくなっているのではないでしょうか。

何らかの方法上の工夫や、複数手法の組み合わせ(パイプライン化)で新たな発見を導くのがひとつの仕事のやり方になっているかと思います。
このような「アプローチの新規性」については、AIに書かせるというより、工夫した自分自身の手で表現するのがベストかと思います。

補強(一般的な部分の実験手順、自分が意外と知らなかった原理を調べるための文献抽出など)はAIにやってもらっていいと思います。

3. 結論

3-1. メッセージ・重要結論を箇条書きする(ChatGPT)

「1. 結果」で作成した知見・キーメッセージのうち、特に重要なものを抽出しておきます。

3-2. 文章生成(AI)

抽出した知見・キーメッセージを、文書の締めにふさわしい形で(前向き・未来への提言となるように)文書化させてみましょう。

例:「上記箇条書きに記した内容をまとめ、論文の結論にふさわしい文章を作成して」

4. イントロ

イントロは、結果と併せて、その文書の価値を決める重要な要素です。新規性・進歩性を適切にちらつかせることが重要です。
「適切に」の意味は、先行研究者にリスペクトを示すということであり、この文書の後半にくる内容のヒントをちらつかせる(イントロで全部は出さない)ということです。
参考文献のリストがダサいと、その文書自体あるいは著者がダサく見えてしまうこともあります。

4-1. 論点の箇条書き(人力)

4-1-1. 先行情報

先達へのリスペクトはきわめて重要です。彼らがいるから、この仕事がある。
どんな先行の仕事を引用すべきか、大枠観点を3〜5つ程度用意し、それぞれに対し2〜3の細かい論点・具体例を挙げておけるといいと思います。

4-1-2. 本研究の新規性・進歩性(想定)

ここもきわめて重要です。

  • この論文の存在意義は?
  • 先輩方の示した価値に対し、この研究はどんな価値を付与するか?

通常は研究立案・着手の最初の最初に新規性・進歩性が定義されているべきであり、その定義が十分に練られたものであればここは困らないかもしれない。

ただし、研究スピードの高速化や、狙った通りに結果が出ないことが要因となり、新規性・進歩性が研究開始時よりも弱まることは大いにありうる時代となった。

4-2. 論点の追加(ChatGPT)

自分なりに定義した新規性・進歩性に対し、ここまでに議論した「結果」「方法」に新規性のカケラがないか、AIに提案させてみましょう。

例:「添付文書の内容と、この研究に関係する先行研究の内容をよく調べ、この文書がどんな新しさを主張することができるか、いくつか観点を提案して」

4-3. 関連文献の抽出(Perplexity)

文字でいくら先行文献へのリスペクトや、本研究の新規性を主張したとしてもそれだけでは足りません。
主張を裏付ける文献を付与することが、リスペクトにつながり、彼我の差を議論する出発点となります。

引用すべき文献の抽出にはPerplexityがおすすめです。
ただし、AIの提案する文書が必ずしも、イントロで述べたい主張と合うものとは限らないので、よくよく確認することが重要です。

例:「この文章/段落の主張を裏付けるのに適した文献を3つ提案して」

5. 議論(結論の肉付け)

5-1. 突飛なアイディアの提案(ChatGPT)

「1-3. 論点の補強」にて、論文の結果から少し飛躍する形で議論ポイントを展開するトライをしましたが、このタイミング(イントロまで作ったタイミング)で今一度、追加論点について提案させてみてもよいかと思います。

実際のところ「結果」だけから新しい論点を出せといってピントのずれたものが多いですが、イントロ〜結論までを仕上げた文書に対して追加論点をリクエストすれば、一考に値するアイディアが出てくる場合もあります。

例:「添付文献の結論(事実)に対し、読者が関心を持ってくれそうなトピック拡張ネタを5個くらい提案して。採否はこちらで決めるので、スペキュレーションが混じること、領域を横断することも許容する」

6. アブスト(ChatGPT)

全体を手短にまとめることが中心ですが、新規性・進歩性を積極的に記述に入れてもらうことが重要です。

例:「添付文書の内容に基づいて英単語300語程度のアブストラクトを作成して」

7. 全体確認

7-1. 音声での確認(OneDriveイマーシブリーダー)

確認作業はステップ1〜6の合間合間に実行していることと思いますが、全体を通しての確認が極めて重要です。

このとき私はOneDriveのイマーシブリーダーを用い、1.25倍速で音声での確認していくことを行なっています。

全体確認における重要となる観点は以下のとおりです。

  • 自分の言いたかったことをAIに言わせられているか
  • 全体としての一貫性は満たされているか
  • 表現の良し悪し

最初の2点は自明とも言えることですが、高い意識で確認作業を行う必要があります。

「表現の良し悪し」については、AIの提案する表現が必ずしも正しくない・しっくりこない場合があります(形容詞・副詞のチョイスなど)。
こうした違和感は、音声としてインプットすることで、よりスムーズに気づけると思います。

8. 参考文献

8-1. 整形(ChatGPT)

参考文献の記述形式を整形するのにもChatGPTを使えます。

例:[.bib]等
の内容を
[... et al., J. Phys. Chem. A, ...]
という形式にして。以下貼り付けるものも同様に変換して

まとめ

私はこのような書き方を「エッセンス」ドリブンと読んでいます。
伝えたいこと(書きたいこと、ではない)、要所をあらかじめ明確にできていれば、エッセンスだけ抽出しておくことでAIが間を埋めてくれます。

この書き方は、

  • 全体の流れ・ストーリーをあらかじめ見定められていることが必要(プロポーザルの出来)
  • AIの提案内容の真偽をある程度確認できることが必要

という人間サイドの練度が求められるアプローチです。そもそも書く能力のない人がAIに書かせて完結させてしまうとすぐにバレる文章となりえます。

もう一個重要なことを申し上げると、このアプローチを使うのにはTPO(Time, Place, Opportunity)を見極める必要があります。
学術論文にこのアプローチを使うことはあまりお勧めできません(著者自身「こんなことばかりやっている」と思われると困る)し、社内文書といえど厳密性を問われる場面では使用を避けるべきかもしれません。

免責事項
この手法を用いることによって生じる問題・損害に対し、この記事の著者は責任を負いかねます。自己責任のもとでトライしてください。

また、AIツールを使う場合、情報漏洩などに十分お気をつけください。

2025年、お疲れ様でした。みなさまがよい2026年を迎えられますように。

0
0
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
0
0

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?