「一歩ずつマスターする論理学入門」第二章のまとめ
注意:この記事は学習途中の内容をまとめたものであり、誤りを含む可能性があります。
間違いがあれば、ぜひご指摘いただけると幸いです!
前回に引き続き、論理学の学習内容を整理するために記事となります。
今回は「一歩ずつマスターする論理学入門」の第2章の内容を中心に、自然言語と形式言語の関係や命題論理の基礎をまとめていきます。
目次
はじめに
第1章では推論や命題の基本概念について学びました。第2章では、より形式的な命題論理の構成方法について学んでいきます。新しく導入される用語については太字で表しているので、参考にしてみてください。
自然言語と形式言語
日本語のような普段使っている言語を自然言語といいます。現代論理学では形式言語と呼ばれる一種の人工言語を設定して、その中で推論について扱います。
例えば、具体的な日本語の文のかわりに、P、Qあるいは→のような記号を用いることで、推論の妥当性に直接影響するパターンを抽出することが可能となります。
自然言語の曖昧性
自然言語はときに曖昧であるという特徴があります。解釈の曖昧さは以下のような木の形で視覚的に表現することがあります。
- 「木か(林と森)」
- 「(木か林)と森」
このような構造(かたまり)の作り方によって生じる意味の違いを構造的曖昧性といいます。
一方で、曖昧な単語を含む曖昧性を語彙的曖昧性といいます。
例
「大きなくもを見た。」(「くも」は雲なのか蜘蛛なのかが曖昧)
記号化とは
日本語のような自然言語から命題論理のような形式言語に置き換えることを記号化といいます。
ここから、日本語から命題論理への記号化を考えます。
論理式の構成
自然言語の文に対応する単位を論理式といいます。また、それ以上分解されない基本単位となる論理式を原子論理式といいます。
原子論理式と論理結合子を用いて、複合的な論理式を作ることができます。
論理結合子
論理結合子には主に以下の4つがあります。
| 論理結合子 | 記号 | 読み方 |
|---|---|---|
| 連言 | $\wedge$ | AかつB |
| 選言 | $\vee$ | AまたはB |
| 否定 | $\neg$ | Aでない |
| 含意 | $\rightarrow$ | AならばB |
ここで、選言は「または」と読みますが、少なくとも一方が真であると考えます(ここでは、排他的選言(XOR)ではなく包括的選言としての扱い)。
スコープと否定
否定の範囲を指定するために、スコープとともに表現されることがあります。おもに括弧()を用いて示されます。
例
- $\neg A \wedge \neg B$
- $\neg(A \wedge B)$
Aに「リンゴは赤い」、Bに「いちごは赤い」という論理式を対応させた場合
- 「リンゴは赤くなく、かついちごは赤くない」
- 「りんごもいちごも赤いというわけではない」
このように、区別をするためにスコープが用いられます。
含意と双条件文
含意 $A \rightarrow B$ において、Aの位置に来る表現を前件といい、Bの位置に来る表現を後件といいます。
また、双条件文は論理式として $(A \rightarrow B) \wedge (B \rightarrow A)$ に相当し、$A \leftrightarrow B$ のように略記されます。これは「AであることはBであることの必要十分条件」としても理解できます。そこで、以下のようなことが言えます。
- $A \rightarrow B$ は「AであることはBであることの十分条件」
- $B \rightarrow A$ は「AはBであることの必要条件」
論理式の厳密な定義
ここからは命題論理の語彙、論理式、その省略化規則を明示的に定義します。
命題論理の語彙は以下のように定義されます。
- 論理結合子:$\neg, \rightarrow, \wedge, \vee$
- 原子論理式:$A, B, C... A_1, A_2...$
- 矛盾記号:$\bot$
- 丸括弧:$()$
論理式はここで帰納的に定義されます。
- 原子論理式は論理式である。
- 矛盾記号は論理式である。
- Pが論理式ならば、$(\neg P)$も論理式である。
- P, Qが論理式であるならば、$(P \rightarrow Q)$, $(P \wedge Q)$, $(P \vee Q)$がそれぞれ論理式である。
- 以上で論理式とされるものだけが論理式である。
一方で、PやQの位置にはどんなに複雑な論理式が現れてもよいとします。このようなP, Qをメタ変項と呼びます。
例
$(\neg A) \wedge B$ が命題論理の論理式であることを確認します。
- 定義1より $A, B$ は論理式である。
- 定義3より $(\neg A)$ は論理式である。
- 定義4より $(\neg A) \wedge B$ は論理式である。
逆に $(A \wedge B \vee C)$ が論理式ではないことも示せます。
- 定義1より $A, B, C$ は論理式である。
- 定義2, 3, 4, 5のいずれを用いても上の形は作ることができない。
丸括弧の省略規則
丸括弧の省略規則を明示化すると
- 一番外側の丸括弧は省略してよい。
- $\neg$ が連続して現れる場合、丸括弧は省略してよい。
- $\wedge$ ないし $\vee$ が連続して現れる場合は丸括弧を省略してよい。
- $\neg$ は $\wedge$ と $\vee$ より結びつきが強く、$\wedge$ と $\vee$ は $\rightarrow$ と $\leftrightarrow$ よりも結びつきが強いと約束する。結びつきの強さの関係から、結びつきが明らかな丸括弧は省略する。
例
論理式 $((((\neg(\neg A)) \wedge B) \wedge C))$ は以下のように省略できます。
- 省略規則1より $((\neg(\neg A)) \wedge B) \wedge C$ となる。
- 省略規則2より $(\neg \neg A \wedge B) \wedge C$ となる。
- 省略規則3より $\neg \neg A \wedge B \wedge C$ となる。
おわりに
今回は「一歩ずつマスターする論理学入門」の第2章の内容をまとめました。
次回は命題論理の意味論を中心に扱う予定です。ご指摘・コメントをいただければ幸いです!