はじめに
エンタープライズにおける情報システムの監視・運用は、アプリ運用チームとインフラ運用チームが役割分担してそれぞれの立場で運用している。お互いの領域には踏み込まず、チーム間に壁がある。オブザーバビリティ技術・活動でチーム間の壁を取り除くことができるものの、技術スキルの違いを乗り越えるには時間と学習コストがかかる。
しかしAIの時代には、専門知識が不足していても、問題を解決したいことを自然言語で指示すれば、調査・原因特定だけでなく、対策まで行えるようになっていく。この記事は、自然言語でDatadogのモニタリング情報を調査した実際の結果を記録したものである。
課題
インフラ運用チームが、アプリ寄りの運用課題もサポートできる体制を目指す。そのために、下記の問題を乗り越えたい。
- 人材の高齢化と不足:フルレイヤー(ネットワーク・OS・ミドルウェア・アプリ)を横断できる技術者が少ない
- 属人化:熟練者の知見ノウハウに依存したトラブルシューティングからの脱却
- 調査コスト:障害発生時の調査方法が、SSHログインしてコマンド実行で調査するという従来からの手順であることに不慣れで、初学者には高いハードル
解決策
オブザーバビリティを情報システムに導入することで、OSやクラウド環境と分離されたオブザーバビリティ・ダッシュボードで安心して調査できることと、アプリ運用チームとインフラ運用チームが同じダッシュボードを使うことでコミュニケーションが可能になる。
AIを活用した、追加の解決策
さらに、オブザーバビリティツールと生成AIを組み合わせることができるようになり、自然言語でAIに調査を指示するだけで原因特定ができるようになりつつある。以下に、自然言語で調査指示したときの実際の回答を記載する。
アーキテクチャ(構成)
生成AIとDatadog MCP Serverの組み合わせは構成図の通り。
- VS Code:コードエディタとしての他、拡張機能で AI と MCP Server を動かしている
- GitHub Copilot:自然言語のチャットで指示を受け付け、リモートLLMの回答を表示する
- Datadog MCP Server:CopilotとDatadog ダッシュボードを仲介する
事前準備
Datadog MCP Server は、VS Code の拡張機能でインストールできるが、公式サイトに、Claude Code や Kiro など、さまざまな環境にインストールする方法が公開されている。
実践:自然言語でインフラを調査する
実際の運用で質問したくなる ログ調査、メトリクス状況、インシデント発生時の原因と影響を試してみたい。
質問サンプル(調査することが多いと予想):
| カテゴリ | 質問例 |
|---|---|
| ログ | ・DayPort サービスのエラーログを直近1時間分見せて ・nginx の 5xx エラーが増えた時間帯を調べて |
| 状態(メトリクス) | ・DayPort の CPU使用率を過去1時間のグラフで見せて ・メモリ使用量が急増した時間帯はいつか |
| 性能 | レスポンスが遅いエンドポイント TOP5 を教えて |
| 障害に対する作業 | アラート状態のモニターを一覧で見せて |
ログ
質問「アプリ(DayPortサービス)のエラーログを直近1時間分見せて」
質問「過去1ヶ月間で、5xxエラーが発生したシステムはあるか?」
状態(メトリクス)
質問「DayPort の CPU使用率を過去1時間のグラフで見せて」
性能(パフォーマンス)
質問「レスポンスが遅いエンドポイント TOP5 を教えて」
障害に対する作業(インシデント)
質問「アラート状態のモニターを一覧で見せて」
複合的な質問
質問「アプリ(dayportサービス)で今日の午前中にエラーが急増しているか確認し、もし増えていたらその時間帯のログパターンを見せて」
調査だけじゃない。Datadogダッシュボードの設定を指示する
指示「Datadog ダッシュボードの各サーバーに、Load Averageおよびスワップのグラフを追加して」
しくじり先生
Datadog MCP Serverを介して実際のGameサーバーの状況を聞いてみた。すると、Ubuntuホストで実行している、マイクラサーバーが4週間前から実際に停止していた(子どもたちは使えず悲しい思いをしていたはずだ)。生成AIチャットは、メトリクス上のスワップ使用量を根拠に「物理メモリ不足」と判断したが、実際の根本原因は「マイクラの必要Javaバージョンが古かった」ことだった。生成AIの回答をそのまま信じることはできないので、その根拠のエビデンスを検査すべき。
まとめ
Datadog MCP Server を VS Code の拡張機能で有効化した。生成AIチャットに入力した自然言語の質問で、Datadogダッシュボードのモニタリング情報にアクセスして調査ができた。
- 情報システムの専門知識が不足していても、自然言語で原因を調査できる。つまり、インフラ運用チームがアプリ運用チームの領域をサポート可能になる
- 調査工数を大幅に削減できる
- 複数メトリクスの相関は AI が自動分析してくれる
情報システム運用のスキル人材不足・高齢化が進む中で、AIがインフラ調査を助けてくれる時代が来ました。本番環境をAIエージェントに設定変更させるのはリスクあるが、調査だけなら今日からでも導入できると思う。
ただし、AIの回答は誤診する可能性があるため、必ずメトリクスやログの根拠をエビデンスとして残すことが大切。











