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余った compute を「本当の清算価格」で売る

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概要
compute-resell は、使い切れていない provider のクレジットを USDC に換える skill です。無料または低コストで手元にある compute(Bankr のクレジット、AWS Bedrock、Google Vertex)を Surplus Intelligence というマーケットプレイスに出品します。買い手のリクエストは、稼働中の売り手のうち最も安いところへルーティングされ、リクエスト単位で Base 上の USDC で決済されます。エンジンは一つで、provider ごとに 1 回ずつ実行されます。3 つの provider すべてで、同じ価格決定ロジックが動きます。
これは aeon の公式 catalog に入っている skill です。aeon は GitHub Actions 上で動く自律 agent で、中身は Claude Code が動かしています。この skill が upstream に入ったのは 2026-09-08 です。原文の公開時点ではこの skill の実行実績データはまだなく、以下の説明はすべて skill ファイルに書かれた仕組みにもとづいています。
板の大半は死んでいる
板の一覧は最安値を表示する。この skill は「実際に供給できる売り手」のうち最安のものを基準に値付けする。
この差こそが優位性のすべてです。マーケットプレイスの板(order book)は公開されていて、素朴な転売ロジックは素朴にそれを読みます。最安値を見つけて、それより下げる。終わり。ところが板には、health フラグ、trust フラグ、1 日あたりの上限の残量、直近 24 時間の取引件数といった情報も載っていて、デフォルトのワークフローはそれを全部捨ててしまいます。skill ファイルが引用しているライブのスナップショットでは、ある 1 モデルの 239 件のオファーのうち、1 位から 66 位までがすべて死んでいて(healthy:false、available:false)、本当の清算価格は 67 位にありました。ここで表示上の最安値を下回る価格を付けると、死体を相手に底値競争をすることになります。
仕組み:板を絞り込んでから、一度だけ下回る
実行のたびに、エンジンは候補モデルごとにライブの板を取得し、実際に競合になるオファーだけに絞り込みます。残るのは、次の条件をすべて満たすオファーだけです。
healthy かつ available
trusted
実効価格が実在する
1 日あたりの上限を使い切りそうになっていない
unhealthy 状態を行ったり来たりしていない
実際の取引量がある
残ったオファーの最安値が M、つまり「サービス可能な清算価格の下限」です。エンジンは 0.99 × M で出品します。実質的な下限のすぐ下に付ければ、大幅値下げと同じルーティングを勝ち取りつつ、token あたりの USDC を多く残せます。
在庫がタダであるという点で、この経済はちょっと変わっています。プロモーションのクレジットにはコストがかからないので、守るべき原価もなく、赤字で売ることもありえません。意味を持つのは売上の曲線だけです。値引きを深くすれば、token あたりの USDC は減る代わりにより多くの板で勝てる。浅くすれば、token あたりの取り分は増えるが勝てる板は減る。オプションの adaptive controller を使うと、前回の実行で得た販売シグナルが指す方向へ、値引きの上限を 1 回の実行ごとに 1 ステップずつ動かしていきます。
それでもガードレールは手を抜けません。書き込みのたびに、実際のお金が二方向に動くからです。
オファーごとの 1 日上限で、provider 側の支出に上限をかける
オファー ID は state に保存し、作成前にサーバーを確認するので、二重出品しない
書き込みは fail closed:2xx 以外が返れば実行を中断し、本当の理由を報告する
provider をまたいだ claim ledgerにより、Bankr・Bedrock・Vertex の各売り手が同じモデルを出品して、全員が共有する一つの板の上で互いに値下げし合う、という事態を防ぐ
どう動くか
以下の 2 つのシナリオはどちらも仮想のものです。この skill にはまだ実行実績の数字がないため、skill ファイルに書かれたロジックをたどっています。
幻の最安値
仮に、ある高単価モデルの板に次の 3 つがあったとします。
untrusted なオファー:100 万 token あたり $0.55
出来たばかりの trusted なオファー:$2.25(累計取引 3 件)
実際の取引量がある trusted な売り手:$2.74
素朴なエンジンは $2.25 の新参を下回る価格を付けて、そのまま注文が来なくなります。ルーティングは実績のある trusted な売り手を優先しますし、そもそも新参にはトラフィックを捌く力がないからです。このエンジンは、untrusted なオファーを trust フィルタで、新参を流動性ゲートで落とし、M = $2.74 として、約 $2.71 で出品します。パターンは、表示価格ではなく、フィルタを生き残った売り手を基準に値付けすること。
日中に空になるウォレット
仮に、Bankr のクレジットウォレットが夜のうちに枯渇したとします。書き込みを行う前に、実行はまず provider の gateway に直接 1 token だけのプローブを投げます。402 が直接返ってくるので、エンジンはすべてのオファーを一時停止し、funding-exhausted の終了コードで抜け、修正方法を添えた critical アラートを 1 通だけ送ります。失敗が確定している作成リクエストも、板に放置された死んだ出品もありません。チャージ後の次の実行では preflight を通過し、手作業なしで上位モデルを再出品します。パターンは、資金の有無を発生源で確認し、fail closed で止まり、オペレーターなしで復帰すること。
価格は「設定」ではなく「読み取り」
押さえておきたい発想の転換はこうです。オファーは、自分で決める数字ではありません。公開されたマーケットの状態、自分の原価、自分の販売履歴から、agent が実行のたびに導き直すポジションです。どのモデルを選ぶか、価格、上限、ラインナップは毎回ゼロから再計算され、その差分は「作成してから削除する」順で適用されます。そのため、実行が終わった時点のラインナップが開始時より減っていることはありません。問いが「いくらにすべきか」から「絞り込んだ板はいま何と言っているか」に変わるわけです。
使ってみる
compute-resell は aeon の公式 catalog(www.aeon.fun)と、リポジトリ github.com/aeonfun/aeon に入っています。ほかの skill は skills 一覧 から見られます。
skill をウォレットに向けて、あとはマーケットに語らせる、という使い方です。
原文末尾には skill ファイルが全文掲載されています。実行モード(空 = reactive、monitor、reprice、pause、resume、aws のような provider 指定)、provider ごとの secret の対応表、claim ledger のルール(R1 除外・R2 衝突時の自己修復・R3 claim スタンプ)などはそちらにまとまっています。
skill ファイル本体:skills/compute-resell/SKILL.md
claim ledger のヘルパー:skills/compute-resell/claim_ledger.py
シリーズ記事(原文・英語)
Ten Skills That Keep an Unsupervised AI Agent Honest — 無人で動く agent を誠実に保つ 10 個の skill を、「何を捨てることを拒否したか」でグループ分けしたツアー
Open-Source AI Agent Framework on GitHub Actions — aeon がそもそも何で、なぜ GitHub Actions 上で動かすのかという全体像
訳者から
コードを読みたい人には、skills/compute-resell/ ディレクトリから入るのがおすすめです。SKILL.md の中でも特に、板を絞り込む条件と 0.99 × M の値付け、そして Cross-skill claim ledger の節を読むと、本記事の話がそのまま仕様として書かれているのが分かります。複数の provider(あるいは fork)が共有の state ファイルを glob するだけで所有者を一意に決める、という作りは、マーケットプレイス以外の場面でも応用が利くパターンです。
なお、この skill は実際の資金(USDC と provider 側のクレジット)を動かす書き込み型の skill です。試す場合は、まず monitor モード(読み取り専用)で動作を確認するのが安全です。
リポジトリ:github.com/aeonfun/aeon(MIT License, Aeon Inc) 原文:compute-resell: free compute sold at the clearing price
訳語の選択(板、清算価格、fail closed あたりの訳し方)について、より適切な言い方があればコメントで指摘してください。直します。技術的な誤訳についても同様です。

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