はじめに
ChatGPTの登場(2022年)以降、企業でのAI活用が本格化し、その次のトレンドとして高い自律性を持つ「AIエージェント」に注目が集まっています。OpenAIのCEOサム・アルトマン氏も2025年初頭に「今年中にもAIエージェントが企業の労働力に加わり、生産性を大きく変革する可能性がある」と述べるなど、ビジネス界でも大きな期待が寄せられています。ではAIエージェントとは何か、そしてどんな用途があり今後どう発展していくのか、初心者にもわかりやすく解説します。
AIエージェントとは?その定義と特徴
AIエージェントとは、複数のAI技術や外部システムを連携させ、高い自律性で目標達成までタスクを遂行するAIシステムのことです。ユーザーは「達成したいゴール」を設定するだけで、エージェントが必要な情報収集からタスクの実行・結果報告までを自律的に連続して行います。例えばユーザーがある目標を指示すると、AIエージェントが自ら必要なデータを集め、調査結果に基づいてやるべきタスクを決め、目標に向けて順次実行していきます。人間が逐一細かな指示を出さなくても、エージェント自身が「何をすべきか」を判断しゴールまで動いてくれる点がポイントです。
従来のAIアシスタント(例:SiriやChatGPT)のように対話対応やコンテンツ生成が中心のものとは異なり、AIエージェントは複数ステップにわたる業務プロセスを自動化できる点が大きな特徴です。生成AIがテキストや画像など「何かを作り出す」ことに特化しているのに対し、AIエージェントは生成AIの出力を活用して次のアクションまで実行できるところが異なります。また、AIエージェントは一度プログラムされた固定の反応をするだけではありません。タスクを実行した結果や取得した最新データをもとに自律的に学習し、パフォーマンスを向上させていく能力があります。そのため使えば使うほどユーザーの好みや業務パターンを学習し、より適切な提案や作業を行えるようになるのです。
現在の主な用途と活用事例
AIエージェントは2023年以降、様々な分野で実用化が進み始めています。以下は代表的な用途とその具体例です:
- カスタマーサポート – 問い合わせ内容に応じて外部の在庫管理システムや受注システムと連携し、在庫確認や注文処理まで自動化して対応できます。
- マーケティングリサーチ – 競合調査や市場分析を自律的に行い、必要なレポートを自動生成します。
- 経理・レポーティング – 社内データや外部APIからの情報収集を自動化してレポートを作成します。
この他にも、人事分野で候補者の選考や面接調整を代行する採用エージェント、製造業で設備の異常検知から対策立案まで行うエージェント、スマート家電を自動制御するパーソナルアシスタントなど、用途は多岐にわたります。
AIエージェントの発展可能性と今後の展望
今後、AIエージェントはビジネスや日常にどのような変革をもたらすのでしょうか。
ある調査では2024年から2030年にかけて世界のAIエージェント市場が9倍以上に拡大するとされ、わずか10年で数十倍規模に成長するとの予測もあります。マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏は「今後5年以内に、一人ひとりが自分専用のAIエージェントを持つようになる」と予測しています。
技術的な進歩も目覚ましく、AIエージェント同士が連携・協調して動く「Agent to Agent(A2A)」というコンセプトも現実味を帯びています。AIエージェントは業務の効率化や人手不足解消にとどまらず、仕事の進め方そのものを変革し、新たなビジネスモデルを創出するポテンシャルを秘めています。
参考情報
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OpenAI CEO サム・アルトマンの発言: openai.com
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マイクロソフト創業者 ビル・ゲイツの予測: gatesnotes.com
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2024年〜2030年のAIエージェント市場規模予測: statista.com
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OpenAIの「Operator」: openai.com/operator
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Salesforceの「Agentforce」: salesforce.com
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LinkedInの採用エージェント: business.linkedin.com/talent-solutions
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ソフトバンクの「satto」: softbank.jp
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富士通の「Kozuchi AI Agent」: fujitsu.com
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国内スタートアップの建設業向けエージェント「光(Hikari)」: hikari-ai.jp