Webサービスの成長とともに、データベース(DB)のパフォーマンスはシステム全体のボトルネックとなることがあります。そこで重要なのが、DBのスケーラビリティと耐障害性を高める構成技術の導入です。
本記事では、代表的な4つの手法を比較しながら解説します。
1. レプリケーション(Replication)
複数サーバーに同一データを複製
概要:
同じデータベースを複数のサーバーにコピーして保持することで、読み取り性能を向上させたり、障害時の耐障害性を高めたりします。
用途例:
- 読み取り処理が多いシステム(例:ECサイトの商品一覧)
- フェイルオーバー対策
メリット:
- 読み取りの負荷分散が可能
- 冗長性による信頼性向上
注意点:
- 書き込みの整合性確保が必要(マスタースレーブ構成など)
2. テーブルパーティショニング(Table Partitioning)
大きなテーブルを意味的に分割
概要:
一つの大規模なテーブルを、日付やカテゴリなどのデータの意味的なまとまりで分割します。
用途例:
- 時系列データ(例:注文履歴、ログデータ)
- 特定の列により自然に区切れるデータ
メリット:
- 一部データのみアクセス時の高速化
- メンテナンスしやすくなる
注意点:
- パーティションキーの設計が重要
- クエリ最適化が必要
3. シャーディング(Sharding)
テーブルを行単位で分割し、複数のDBに分散
概要:
一つの大きなテーブルを、行ごとに分割して複数のDBに格納します。顧客IDの範囲でDBを分けるなど。
用途例:
- 数百万〜数億件のレコードを扱う大規模システム
- 書き込みも読み取りも多いサービス
メリット:
- 垂直・水平スケーリングが可能
- 書き込み性能も分散できる
注意点:
- アプリケーション側の分散ロジックが必要
- JOINやトランザクションの制限
4. データベースフェデレーション(DB Federation)
異なるDBを統合的に扱う
概要:
顧客情報は一つのDB、注文情報は別のDB、のように異なるスキーマのDBを連携して一つのDBのように扱うアーキテクチャ。
用途例:
- マイクロサービス構成のアプリ
- システム統合時のデータ連携
メリット:
- 専用DBごとの設計最適化
- チーム単位の開発分担が可能
注意点:
- 統合クエリのパフォーマンス
- 整合性管理が難しくなる
まとめ:目的に応じて使い分けを!
手法 | 主な用途 | メリット | 注意点 |
---|---|---|---|
レプリケーション | 読み取り高速化 | 冗長性、可用性 | 書き込みの同期管理 |
パーティショニング | 大テーブルの最適化 | 局所アクセス高速化 | キー設計が重要 |
シャーディング | 超大規模DB対応 | 水平スケーリング | 開発・運用の複雑化 |
フェデレーション | 異種DBの統合 | モジュール設計が可能 | 整合性やパフォーマンス |
おわりに
今回紹介した4つの手法を理解し、適切に組み合わせることで、パフォーマンス・スケーラビリティ・信頼性のすべてを実現できます。