生成AIで動画を作りはじめた人が最初にぶつかる制約は、画質でも一貫性でもなく尺です。もっと正確に言うと、尺が連続値ではなく離散値である、という一点。
これは技術的には些細な仕様に見えますが、実際に編集を始めると構成そのものを規定してきます。私が使っているモデルは 5秒が下限、15秒が上限、間は整数秒のみ。4秒は上流で弾かれるし、6.4秒も指定できません。
なぜ困るのか
編集の現場で必要になるカットの長さは、5秒より短いものが圧倒的に多い。インサート、リアクション、手元のクローズアップ、看板のワンショット。実写なら0.8秒で足りるところに、生成では5秒払うことになります。
つまり捨てる分にも課金される。1.5秒のカットが欲しくて5秒生成すると、70%は最初から使わないと分かっていて買っている状態です。
ここが従来の映像予算と逆転するポイントで、カット割りが細かい映像ほど、仕上がり1分あたりのコストが高くなる。 実写では逆です。実写は回してしまえば何カットに割ろうがコストは変わらない。生成では、カット数がそのまま最低課金単位の掛け算になります。
具体的に:
- 12カットの速いモンタージュ(各1.5秒、仕上がり18秒) → 12回 × 5秒 = 60秒分の課金、使用率30%
- 2カットのゆっくりした構成(各9秒、仕上がり18秒) → 2回 × 9秒 = 18秒分の課金、使用率100%
同じ18秒で3.3倍の差。画質もモデルも同じです。
前提にして設計する
この制約は回避できないので、構成のほうを合わせます。私が実際にやっていること。
1. カット尺を5秒グリッドで設計する。 絵コンテの段階で、各カットを5秒・10秒・15秒のいずれかに丸める。編集で詰めるのは構いませんが、企画時点から5秒未満のカットを想定しない。
2. 1回の生成から複数カットを取る。 10秒生成して前半と後半で別カットとして使う。カメラが動いている素材なら、途中で切っても別ショットとして成立します。プロンプト段階で「前半は寄り、後半で引く」と書いておくと、意図的に二つ取れる素材になる。
3. 短い挿入は生成しない。 ロゴ、テキストカード、静止画のパン、実写のストック。1秒のインサートに5秒払う理由はどこにもありません。生成は「動きが必要で、他に手段がないカット」に集中させる。
4. 下限が違うモデルを混ぜない。 派生モデルは元モデルより最小尺が上がっていることがあります。速度重視の後段学習で短尺が落とされるためです。同じ企画で複数モデルを使うと、グリッドが揃わなくなる。
もうひとつの離散値: エンジン
尺だけでなく、エンジン選択も離散的です。同じクレジット残高で速度違い・品質違いの複数エンジンが使えるタイプのサービスだと、秒単価が 1 : 1.5 : 2 くらいの比率で並んでいることが多い。
ここで効いてくるのが、さっきの「捨てる分にも課金される」話です。支出の大半は採用しなかったテイクに消えるので、下書きは最安エンジン、本番だけ上位エンジン、と分けるだけで総額が3割前後変わります。仕上がりの見た目は変わりません。採用カットは結局上位エンジンで撮り直すので。
これを実行するには、エンジンごとの秒単価が公開されている必要があります。クレジットのバンドル販売だけで為替レートを書いていないサービスだと、そもそも比較ができない。選定基準に入れる価値があります。
失敗テイクの扱いも確認する
最後にもうひとつ。生成に失敗したときに課金されるかどうかは、規約を読まないと分かりません。
カット比 6:1 で回していると、ハードエラー率が3%あるだけで実額として無視できない金額になります。「失敗は0クレジット」と明記しているところと、黙って引くところがあるので、本番前に確認してください。
まとめ
- 尺は連続値ではない。5秒下限・整数秒という前提で絵コンテを描く
- 細かいカット割りは構造的に高い。ゆっくりした構成のほうが安く仕上がる
- 下書きは安いエンジン、本番だけ上位エンジン
- 失敗テイクの課金条項を先に読む
数字の出どころとして、私が運用している独立系インターフェースでは秒単価の導出過程(クレジットと実通貨の換算レート)をそのまま出しているので、1クリップあたりの実額 を自分の構成に当てはめて計算できます。エンジンを切り替えたときに何が変わるかは エンジン別の秒単価をまとめた表 のほうが早い。上の設計原則自体は、どのモデルを使っていても同じように効きます。
筆者は当該インターフェースの運営者です。モデル提供元とは資本・提携関係ともにありません。
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