おはようございます、座禅いぬです。
実はこの記事が、一連のアドカレで最後に書いている記事です。というか今日は26日です。しれっと置いておきます。今回アドカレを積極的に投稿したいと考えたのは、二つ理由がありました。
一つは、マナビDXクエスト2025修了後すぐのイベントだったので、ぜひアドカレでアウトプットの体験をして、修了生コミュニティでの積極的な活動のきっかけになるような良い体験をしてもらいたかったからです。僕が去年体験したことでもあります。エンゲージメントですよね。自分事として埋めようと思ってもらいたいのでシリーズ2は途中のテコ入れとして開始しました。興味を持ってもらいたかったんですね。それがいいアプローチだったかは自信ありませんが、結果シリーズ3までいったので、自分の投稿除いても1シリーズの投稿があったことになります。
もう一つは、アウトプット量を生成AIで増やす(生成AIに書かせるではない)を行うことで、どこまで自分の思考を加速できるかにチャレンジしたかったからです。本業や別の作業に影響を与えてはいけないので、作業時間をある程度枠を決めて取り組みました。というか、そもそも毎朝小論文を書く習慣があるので、それで基本的には完結することではあるのですが、学びに関すること、コミュニティ活動での方針、本業での分析や提言を作成する時間でもあるので、そこを加速する負荷にしたかった。でも、加速というよりもより深い部分に潜っていける、そして思考に専念できるというのが実態だったように思います。
今回は、この取り組みの中で見えてきた「思考の複利」という概念について書きます。複利というのは金融の用語ですが、これが思考とAIの関係にぴったり当てはまることに気づきました。
複利とは何か
銀行に100万円を預けて年利5%だと、1年後に105万円になります。単利ならずっと5万円ずつ増えますが、複利だと「増えた分にも利息がつく」。2年目は105万円に対して5%なので、5.25万円増える。この差は最初は小さいけれど、10年、20年と経つと劇的な差になります。
思考にも同じことが起きます。今日書いたメモは、明日の思考の材料になる。明日の思考を書き留めると、それが明後日の材料になる。この連鎖が続くと、思考の蓄積は線形ではなく指数関数的に価値を持ち始めます。今思うと、これがZettelkastenの本質な気がします。
AIが「複利の銀行員」になる
ここにAIが加わると、複利の効果が加速します。普通のメモは書いたら終わり。自分で見返さないと価値が生まれません。でもAIエージェント(僕の場合はClaude Code)は、過去のメモを全部読める状態にあります。
例えば半年前に書いた「この問題、どう解決すればいいかわからない」というメモがあるとします。先週書いた「こういうアプローチがうまくいった」というメモもある。僕が両者の関連性に気づいていなくても、AIは両方を参照できます。「あの問題、この方法で解決できるのでは」と提案してくれる。
これは僕一人では起きなかった化学反応です。過去の自分が投資した思考に、AIが利息をつけてくれている感覚。しかも複利で。
「元本」と「利率」を上げる方法
複利で増やすには、元本を大きくするか、利率を上げるかです。思考の複利でも同じことが言えます。
元本を大きくするのは簡単。たくさん書くこと。日々の思考、作業ログ、失敗談、アイディアの断片。とにかく書き留める。量が質を生む段階があります。もちろんノイズにならないように、パーマネントノートにする作業は必要ですね。
利率を上げるのは少し工夫が要ります。僕が意識しているのは「AIが読む前提で書く」こと。文脈を省略しすぎない、固有名詞を明記する、なぜそう考えたかを残す。未来の自分やAIが読んでも意味がわかるように書くと、メモの再利用可能性が上がります。これが利率を上げることに相当します。
Zettelkastenは手動のベクトル化だったのではないか
もう一つ利率を上げる方法として、メモ同士の関係性を作ることがあります。Zettelkastenという古典的なメモ術では、メモに独自の番号を振っていました。1、1a、1a1、1b...という具合に。意味的に近いメモが近い番号になる。
これは手動でやっていた「意味のベクトル化」だったのではないかと思います。番号が座標のように機能して、関連するメモが見つけやすくなる。物理的なカード配置が、意味的な近さを表現していた。
現代ではWikilinkやタグがこの役割を担います。明示的につながりを作っておくと、AIはそれを手がかりに関連するメモを辿れます。孤立したメモより、ネットワーク化されたメモの方が利率が高い。複利の効きが良くなります。
タグの限界と意味ベクトル
ただ、タグやWikilinkには限界があります。タグは「同じカテゴリか、そうでないか」という二値的な情報しか持ちません。「ちょっと似ている」「かなり近い」といった連続的な近さを表現できない。
ObsidianのGraph viewは、人間にとってはメモ同士の関係性を視覚的に把握する助けになります。しかしAIはGraph viewを見ることができません。AIにとって、タグは離散的なラベルでしかない。
本当に必要なのは、メモの意味をベクトル空間に配置することです。似た内容のメモは近くに、異なる内容のメモは遠くに。これができれば、AIは「このメモに意味的に近いメモを探して」という検索ができるようになります。
Skillsで意味ベクトルを扱う
ここでClaude Codeのskillsが使えます。skillsは複数のスクリプトやテンプレートをまとめて管理できる機能です。これを使えば、意味ベクトルの生成と検索を自動化できます。
具体的には、Pythonスクリプトでメモのテキストをエンベディング(ベクトル化)します。OpenAIのtext-embedding-3-smallや、ローカルで動くsentence-transformersが使えます。生成したベクトルをJSONファイルに保存しておく。今回のアプローチでは、タイトルとタグのみを対象にしました。だって、タイトルは明確にメッセージにしていますからね。
Claude Codeに「このメモに関連するメモを探して」と依頼すると、skillsのスクリプトが動いて、ベクトル空間で近いメモを検索してくれます。タグでは見つからなかった、意味的に近いメモが見つかる。これは複利の利率をさらに上げることに相当します。
ちなみに、これはRAG(Retrieval-Augmented Generation)とは違うアプローチです。RAGは文書全体をチャンク分割してベクトル化し、断片を返します。でも断片だと文脈が切れる。今回の方法はタイトルとタグだけをベクトル化して「どのファイルか」を特定します。ファイル全体を読めるから文脈が保たれる。検索は「ナビゲーション」で、理解は「全文を読む」。この分離がポイントです。
複利が効き始めるタイミング
金融の複利は長期で効果を発揮します。思考の複利も同じで、最初の数ヶ月は「書いてるだけ」感があります。でも半年、1年と続けると、過去のメモが現在の思考に影響を与え始める。AIが過去と現在を繋いでくれる場面が増えてくる。
僕の場合、Obsidianでメモを取り始めて半年くらい経った頃から、明らかに変化を感じました。「あれ、これ前に考えたな」という既視感をAIが拾ってくれる。過去の自分が未来の自分を助けている実感がある。これは複利が効き始めたサインだと思っています。
複利を感じるもう一つの瞬間は、AIとの対話そのものです。以前、この仕組みを人に見せたとき「プロンプトが普通の会話みたいにフランクですね」と驚かれました。よくあるプロンプトは条件を細かく指定する堅苦しいものが多い。最近はより自然になっているだろうという認識でしたが、それにしても自然な会話とほぼ同じというのは意識していなかった。人と対話するのもよい事ですね。全然気にしたことがなかったです。
フランクに投げて、出力を読んで、差分を感じて、「ここ違う」「これ掘りたい」と調整する。自分の考えを何百文字かつらつらと書くこともよくあります。つまり、完璧な指示を一発で出すのではなく、対話しながら方向性を探っていく。これは相手を「実行マシン」ではなく「思考パートナー」として扱っているからできることです。
そもそもプロンプト(prompt)という言葉は「促す」「引き出す」という意味であって、命令(command)ではありません。LLMの精度が低かった時代は、細かい条件で縛らないと期待した出力が得られなかった。だから命令的なプロンプトが主流になった。でも今のLLMは違います。十分なコンテキストを与えれば、こちらの意図を汲み取ってくれる。
すると、プロンプトの役割が変わります。命令ではなく、対話のきっかけになる。僕が何かを投げると、AIが反応する。その反応を見て僕が考える。僕の反応を見てAIがまた考える。お互いにファシリテーションし合っている状態です。これが「思考パートナー」の実態だと思います。
この対話プロセス自体が複利を生んでいます。AIが出力した文章を読むと、自分の思考との差分が見える。その差分を修正すると、また新しい視点が生まれる。今まさにこの記事も、対話しながら書いています。一人では辿り着けなかった「知識の先」を一緒に探っている感覚があります。
思考は消えるが、記録は残る
僕たちは毎日たくさんのことを考えています。でもそのほとんどは記録されずに消えていく。消えた思考は複利の対象になりません。元本ゼロに利息はつかない。
記録するかどうかで、思考の運命が分かれます。記録された思考は、AIという銀行に預けられて、複利で増えていく。記録されなかった思考は、その場で蒸発する。同じ思考でも、書き留めたかどうかで価値がまったく変わってくる。
まとめ
思考の複利という概念を紹介しました。今日書いたメモが明日の思考を生み、その思考がまた記録されて次の思考を生む。AIはこのサイクルを加速させる銀行員のような存在です。
利率を上げるには、AIが読める形で書くこと、メモ同士をネットワーク化すること、そして意味ベクトルで検索できるようにすること。Zettelkastenの番号体系は手動のベクトル化だったと考えると、現代のツールでそれをより精密に、自動的にやれるようになったと言えます。
複利は時間が味方です。始めるのが早ければ早いほど、将来の蓄積が大きくなる。今日から思考を記録し始めれば、半年後のあなたは複利の恩恵を受けられます。メモのベクトル化まで行いましたが、APIトークン発行の知識だけあれば後は知識ゼロでもできる内容だと思います。ぜひすぐ試してみることをお勧めしたいなと思います。