こんにちは、座禅いぬです。
この記事はマナビDX Quest で得たもの Advent Calendar 2025、シリーズ2の1日目の記事です。今回は、勉強会開催やプロダクト開発で感じる不安をAIで軽減する方法についてお話しします。
イベント開催前夜、不安でしょうがないですよね
マナビDXクエストおよびその修了生コミュニティでは、毎月、いや毎週のようにイベントが開催されます。自主イベントをしなければいけないプログラムになっているわけではなく、あくまで自主的にイベントを立ち上げる人がいて成り立つコミュニティです。
正直に言います。勉強会やハンズオンイベントを開催する前、いやLTの前だって、僕はいつも不安でしょうがありません。月に3~4回はなんかで喋ったりしていますが、それでももう本当に、毎回不安です。
「参加者のニーズに合ってるのかな」
「レベル感はこれでいいんだろうか」
「期待に応えられなかったらどうしよう」
「参加者がつまらなそうにしてたらどうしよう」
こういう考えが頭の中をぐるぐる回って、夜更かししながら思い悩み続ける。そして次の日、寝不足のまま「たぶん大丈夫だろう。やるしかねえ!」という弱気な自信で本番を迎える。皆さんも経験ありませんか?
なぜこんなに不安になるのか、冷静に考えてみました。理由は大きく2つあります。
まず、参加者のニーズがわからないということ。事前に「どんな内容を期待していますか?」とアンケートを取っても、なかなか本音は見えてこない。アンケート取ること自体がそもそもハードルが高く、実現できても回答率も期待できない。加えて参加者自身が何を知りたいのか言語化できていないこともある。なのでできる範囲でヒアリング一生懸命やったり、仲間に相談して想像するしかない。
次に、多様な参加者に対応できないということ。経営者もいれば現場担当者もいる。ITに詳しい人もいれば苦手な人もいる。一つのコンテンツで全員を満足させるのは難しい。結果、「たぶんこれでいいだろう」で進めて、終わってから「よさそうに聞こえたけど自分にはできる気がしない」と言われたり、「せっかく参加してくれたのに刺さらなかったな」と後悔する。このパターン、何度も繰り返してきました。
苦しみの果てに生まれたもの:マルチペルソナシミュレータ
そこで考えたのが、想定参加者のAIペルソナを複数作って、事前にニーズを把握する仕組みです。簡単に言うと、AIで「仮想参加者」を作って、彼らにアンケートを取るんです。実施方法としては、いつものようにコーディングエージェントであるClaudeCodeや、GeminiCLI、CodexCLIを使用し、Obsidianのvaultに結果を格納していくスタイルです。
実際にやってみた:DXハンズオンイベントの事前検証
実は今回の取り組みは、10月に製造業経営者向けのDXハンズオンイベントを開催することになったのがきっかけでした。参加予定者は約30名。それこそ経営者から現場担当者まで、多様な方々が参加予定でした。
「Deep Researchを使った業務効率化」というテーマでハンズオンを企画していたのですが、正直なところ「これで本当に参加者に刺さるのか?」という不安がありました。せっかく地元企業が盛り上がる手伝いをできるかもしれないのだから、何とか良い成果につなぎたい。
そこで、参加予定者の属性をもとに約30人のペルソナを作成し、事前アンケートのシミュレーションを行いました。
作成したペルソナ(実際に使ったもののイメージ)
| ペルソナ | 属性 |
|---|---|
| キツネ社長 | 経営層、DX推進中、AI試用程度 |
| タヌキ係長 | 管理職、現場DX推進の中核 |
| ウサギ担当 | IT部門現場担当者、ツール活用に関心 |
| クマ主任 | 製造現場主任、ITは苦手 |
| フクロウ先生 | 研究機関、地域企業支援 |
30人それぞれに年齢、役職、業界経験、ITリテラシー、DX推進状況などを設定し、できるだけ多様性を持たせました。こんなの適当だろうって?それはそう。なるべく精度上げたいですよね。誰が来るのか可能な限り事前に情報を集めて、Deep Researchを行い、実際に直近の取り組みや課題を抽出しました。そのうえでのペルソナ設定です。
試した結果:ある程度想像通りのもの。ただ、数値化できるのは大きい
アンケートシミュレーションの結果、今回のハンズオンのメインテーマである「Deep Research」について認知度を聞いたところ、実際に使ったことがある人はわずか12%。聞いたことはある人が53%、知らない人が35%でした。
「Deep Researchの活用法」をいきなり話し始めても、思ったよりちょっと多い人が「それ何?」という状態からスタートすることになる。プロンプトの工夫を説明したかったのですが、それよりも導入の説明を丁寧にする必要があることがわかりました。
また、関心領域としてAIエージェントという言葉は知っている比率が多そうなことはわかってきました。となると、「AIエージェントの一つとして簡単に取り組めるものにDeep Researchがあるよね」という切り口で進めることにしました。
これなら当日初めて聞いても試すことができそう。でも、AIエージェントのすごさをもっと知ってもらいたい。その部分は、動画で見てもらうことにしました。ちょっとイメージ出来てきたぞ。
もちろん、あらかじめ相談に乗ってくださった方がいらっしゃったから(大谷さん、木村さん、CDLEひろしまの皆さん、たまちゃんさん、本当にありがとうございます!)こその話ではあるのですが、自分で計算して求めた答えってやっぱり確信につながるので大事。
なぜこれがとてもうれしいのか
別にChatGPTにアンケート結果だけ生成させればよくない?と思う方もいらっしゃると思いますが、やっぱり解像度と納得度に違いがありました。
まず、参加者ニーズの事前把握ですよね。実際の参加者に聞く前に、どんな期待や課題があるかを予測できます。もちろん完璧ではありませんが、「何も考えずに進める」より格段に精度が上がります。議論のたたき台みたいな感じでイメージの土台になります。
次に、多様性への対応。30人のペルソナを作ることで、経営層から現場担当者まで、様々な視点からコンテンツを検証できます。「この説明だと経営層には響かない」「担当者にはもっと具体例が必要」といった気づきが得られ、追加質問もできます。ペルソナの微調整だってできるわけです。地雷は絶対踏みたくないから失礼な質問も試せる。
そして何より、心理的安全性が上がる。「30人に聞いて、こういうニーズがあるとわかった」という根拠があると、自信を持ってイベントに臨めます。「たぶん大丈夫」から、解像度の高い「こういう理由で大丈夫」に変わります。
マルチペルソナシミュレータなら、1人で数時間あれば30人分の詳細なニーズ分析ができます。何度でもやり直せるし、質問をどんどん追加することもできる。圧倒的に効率的です。
注意:精度を求めるものではない
ただし、これは魔法ではありません。本物の参加者ヒアリングの代わりにはならないということは強調しておきます。あくまで思考の素材として有効なものです。
得意なのは、初期段階のニーズ仮説検証、多様な視点の収集、コンテンツの事前チェックです。でも、実際の参加者の表情、質疑応答のリアルな反応、予想外の質問への対応は、やっぱり本番でしか得られません。使い分けが大事です。
こんな人におすすめ
勉強会やイベントを主催する人なら、参加者ニーズの事前把握とコンテンツ検証に使えます。プロダクトマネージャーなら、ユーザーニーズ検証とリスク回避に便利です。新規事業担当者なら、ターゲット顧客の反応シミュレーションに最適です。そしてコミュニティ運営者なら、メンバーの期待や課題の把握に役立つはず。
結構色々可能性があるんじゃないかと思います。
まとめ
マルチペルソナシミュレータは、ClaudeCodeなどを使い想定ユーザーや参加者のAIペルソナを複数作って、事前にニーズを把握する仕組みです。実際にDXハンズオンイベントの事前検証で使ったところ、Deep Researchの認知度の低さ、AIエージェントの認知度の高さなど、重要な発見がありました。これらをもとにコンテンツを改善し、当初より自信を持ってイベントに臨むことができました。
みなさんも、「チャレンジをしたいと思うが実際にはできない」ことがきっとあると思います。その理由として、失敗が怖いというのはきっと大きな比重を占めていると思います。でも偉人の名言にあるように「とにかくやれ」を実践しないと成長できません。とはいえ凡人である自分にはちょっとでも安心が欲しいので、工夫してみたという話でした。
おまけ
実際のルールファイル
# ペルソナシミュレータ運用ルール
## 概要
ペルソナシミュレータは、Claude Codeが業務中に複数の仮想人物(ペルソナ)を生成・管理し、アンケートやインタビュー、議論などを実行するためのシステムです。
### 主要機能
1. **ペルソナ生成**: 条件リストに基づき複数のペルソナを自動生成
2. **対話実行**: ペルソナとの対話・アンケート・インタビュー
3. **ログ管理**: 日付ごとの対話ログ記録
4. **集計分析**: 複数ペルソナからの回答を集計・分析
---
## ディレクトリ構造
```
/vault/persona_simulator/
├── persona_simulator.md # このルールファイル
├── persona_list.md # ペルソナインデックス
├── templates/ # テンプレート格納
│ ├── persona_template.md # ペルソナ定義テンプレート
│ └── log_template.md # ログファイルテンプレート
└── personas/ # ペルソナ別フォルダ
├── {persona_name_01}/
│ ├── persona.md # ペルソナ定義
│ └── logs/
│ ├── log_2025_10_18.md # 日付別ログ
│ └── log_2025_10_19.md
├── {persona_name_02}/
└── ...
```
---
## ペルソナ生成プロトコル
### トリガー条件
CLAUDE.md業務中に、以下のような指示があった場合:
- "〇〇人のペルソナを生成して"
- "条件リストに基づきペルソナ作成"
- "アンケート対象者を生成"
### 生成手順
#### 1. 条件リスト確認
人間から提供される条件リスト(または対話で作成):
- 人数
- 属性(年齢、職業、専門性、立場等)
- 分布(均等/偏り)
- その他の制約
#### 2. ペルソナ生成
各ペルソナについて:
1. テンプレート(`templates/persona_template.md`)を使用
2. 条件に合致する属性を設定
3. 一貫性のある人物像を構築
4. ファイル名: `personas/{name}/persona.md`
#### 3. 人間確認
- 生成したペルソナリストを提示
- 修正指示を受け付け
- 承認後に確定
#### 4. インデックス登録
`persona_list.md`に登録:
- ペルソナ名
- 主要属性
- 生成日
- ファイルパス
---
## ペルソナ管理ルール
### 命名規則
- **ペルソナフォルダ**: `{姓}_{名}_{役職}` または `persona_{番号}`
- **ペルソナファイル**: `persona.md`(フォルダ内固定)
- **ログファイル**: `log_yyyy_mm_dd.md`
### ファイル構成
各ペルソナフォルダには以下を含む:
```
personas/{persona_name}/
├── persona.md # ペルソナ定義(必須)
└── logs/ # ログフォルダ(必須)
└── log_*.md # 日付別ログ
```
### 削除・アーカイブ
- プロジェクト完了後も保持
- 削除する場合は`persona_list.md`からも削除
- アーカイブ: `personas/_archive/`に移動
---
## ログ管理プロトコル
### ログファイル作成
対話・アンケート実施時:
1. 該当ペルソナの`logs/`フォルダを確認
2. 今日の日付のログファイルが存在するか確認
3. 存在しない場合、`log_yyyy_mm_dd.md`を作成
4. テンプレート(`templates/log_template.md`)を使用
### ログ記録内容
- 日時
- 対話タイプ(アンケート、インタビュー、議論等)
- 質問内容
- ペルソナの回答
- 観察メモ
### ログファイル形式
```markdown
---
tags: [PersonaSimulator, Log, {persona_name}]
date: YYYY-MM-DD
title: {persona_name} Log YYYY-MM-DD
---
# {persona_name} 対話ログ - YYYY-MM-DD
## セッション1: [タイトル]
**時刻**: HH:MM
**タイプ**: アンケート/インタビュー/議論
### 質問1
[質問内容]
**回答**:
[ペルソナの回答]
---
```
---
## アンケート実行プロトコル
### 準備フェーズ
1. アンケート対象ペルソナの特定
2. 質問リストの確認
3. 各ペルソナのログファイル準備
### 実行フェーズ
各ペルソナに対して:
1. ペルソナ定義(`persona.md`)を読み込み
2. ペルソナの視点・価値観を理解
3. 質問を提示
4. ペルソナの性格・背景に基づき回答生成
5. 回答をログファイルに記録
### 一貫性の維持
- 過去のログを参照
- ペルソナの設定に矛盾しない回答
- 自然な表現・口調
---
## 集計・分析プロトコル
### データ収集
1. 対象ペルソナのログファイルを読み込み
2. 該当セッションの回答を抽出
3. 構造化データに変換
### 集計方法
- **定量データ**: 数値集計、平均、分布
- **定性データ**: 回答の分類、傾向抽出
- **横断比較**: ペルソナ間の差異分析
### 成果物
- 集計結果レポート
- 分析・インサイト
- 改善提案(必要に応じて)
---
## CLAUDE.mdとの連携
### 指示の受け付け
CLAUDE.md業務中に以下の指示があった場合、本プロトコルを実行:
- "ペルソナシミュレータを使って〇〇を調査"
- "〇〇人のペルソナにアンケート実施"
- "条件: [リスト]でペルソナ生成"
### 作業フロー
1. 指示内容の理解
2. 必要に応じてヒアリング
3. ペルソナ生成(未作成の場合)
4. アンケート/対話実行
5. 集計・分析
6. 成果物提示
---
## エラー管理
### よくあるエラー
1. **ペルソナ不在**: 対象ペルソナが存在しない
2. **ログファイル衝突**: 同日に複数セッション
3. **一貫性欠如**: ペルソナ設定と矛盾する回答
### 対処方法
1. ペルソナ不在 → 生成するか既存から選択
2. ログファイル衝突 → セッション番号で区別
3. 一貫性欠如 → ペルソナ定義を再確認し修正
---
## 品質基準
### ペルソナ品質
- [ ] 属性が条件リストに合致
- [ ] 人物像が一貫している
- [ ] 自然な背景・動機がある
- [ ] テンプレート構造に準拠
### ログ品質
- [ ] 日付・時刻が正確
- [ ] 質問と回答が明確
- [ ] ペルソナの個性が反映
- [ ] 過去ログとの一貫性
### 集計品質
- [ ] データが正確
- [ ] 分析が妥当
- [ ] インサイトが具体的
- [ ] 成果物が読みやすい
```