1. 要旨
先日私が実際に受験した某模擬試験の結果を基に、目標となる偏差点(偏差値)に必要な素点を調べようという試みです。
とくに標準偏差の逆算については意外とネット上に記事がなかったので書いておきます。
なお、得点の分布は正規分布を前提とします。
2. 方法
- 模試の結果(自分の素点、偏差点、全体の平均点)から標準偏差を逆算する。
- 逆算した標準偏差を基に、目標となる偏差点に必要な素点を導出する。
なお、個人のデータから標準偏差を導出する式は超簡単ですが、おさらいとして。
偏差点の式は、
偏差点 = \frac{素点 - 平均点}{標準偏差} × 10 + 50
なので変形すれば、
標準偏差 = \frac{素点 - 平均点}{偏差点 - 50} × 10
で求まります。1
3. サンプルデータ
成績表は以下の通りで、目標偏差点を60とします。
素点 | 偏差点 | 平均点 |
---|---|---|
40 | 58.89 | 32.66 |
4. コード
hensaten <- function(hensaten.objective = 60, soten.result= 40, hensaten.result = 58.89, mean = 32.66) {
# 標準偏差の推定
residual.score <- soten.result - mean
z <- (hensaten.result -50)/10
sd.test <- residual.score/z
# 目標偏差点を達成する累積確率の計算
p <- pnorm(hensaten.objective, mean = 50, sd = 10)
# 累積確率から必要素点を逆算
q <- qnorm(p, mean = mean, sd = sd.test)
print(paste0("偏差点", hensaten.objective, "を取るには、上位", round((1-p)*100, digits = 1), "%にいる必要があります。"))
print(paste0("今回の試験は平均点", mean, "、標準偏差", round(sd.test, digits = 1), "の試験です。よって、目標偏差点を取るには、素点ベースで", round(q, digits = 1), "点取る必要があります。"))
}
4.1. 引数
名称 | 内容 | 初期値 |
---|---|---|
hensaten.objective | 目標偏差値 | 60 |
soten.result | 実際の素点 | 40 |
hensaten.result | 実際の偏差点 | 58.89 |
mean | 実際の平均点 | 32.66 |
5. 動作
5.1. 動作確認
まず目標偏差値 = 実際偏差値 = 58.89
の場合、目標素点 = 実際素点 = 40
になることを確かめます。
> hensaten(hensaten.objective = 58.89)
[1] "偏差点58.89を取るには、上位18.7%にいる必要があります。"
[1] "今回の試験は平均点32.66、標準偏差8.3の試験です。よって、目標偏差点を取るには、素点ベースで40点取る必要があります。"
上手く動作していることが確認できました。
続いて、目標偏差点 = 50
とし、目標素点 = 平均点 = 32.66
となることを確かめます。
> hensaten(hensaten.objective = 50)
[1] "偏差点50を取るには、上位50%にいる必要があります。"
[1] "今回の試験は平均点32.66、標準偏差8.3の試験です。よって、目標偏差点を取るには、素点ベースで32.7点取る必要があります。"
小数第二位を四捨五入しているので少しずれますが、正しい結果となりました。
これで動作確認は完了です。
5.2. 目標達成のための素点計算
それでは本題の『目標偏差点60を達成するための素点』を計算しましょう。
> hensaten()
[1] "偏差点60を取るには、上位15.9%にいる必要があります。"
[1] "今回の試験は平均点32.66、標準偏差8.3の試験です。よって、目標偏差点を取るには、素点ベースで40.9点取る必要があります。"
ということで、約41点必要ということが分かります。どうやらあと一問取れば偏差点60を達成できそうです。
6. おわりに
全体の平均点と自分の成績データさえあれば、目標偏差点に必要な素点を計算することができることを確認できました。
統計の超基礎的な内容ですが、各種試験勉強等で偏差値が使われることも多いので、自分の目標管理のために把握していると便利です。
おしまい。
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満点が100点の場合です。満点が100点以外のときは、「$ ×10 $」のところが「$ ×\frac{満点}{10} $」となります。 ↩