私の書くQiita記事の中で,英語に関する記事は,いいね改めLGTMを得やすいようですね。次の3つの記事はどれもLGTMが100を超えました。
- parcel に Pull Request を送って merge されるまでの顛末記〜生まれてはじめて国際的に OSS への貢献をしてみたら,とても歓待された
- ソフトウェア技術者のための英語習得法の案
- 続・ソフトウェア技術者のための英語習得法の案
今回私が書く記事は,そこまでたどり着かない人向けの記事です。
前提としては,4技能の傾向が,reading > writing > speaking > listening という感じなんだけど,reading, writing にも大して自信がない,という人が当てはまります。
基本的な考え方
まず,reading, writing に自信をつけるところから始めるのが良いと思います。目標としては次のような感じです。
- 英語で書かれた技術文書を読む際に,次のことができるようになる。
- 基本5文型を当てはめて,解析することができる。
- 頻出英単語について,いちいち辞書を引かなくても定義を思い出せる。
- 頻出英単語でない単語(ほとんどは専門用語)について,英語で書かれた定義を読める。
この目標に対して効果的なのは,多読することと,英英辞典を使うことかなと思います。この記事では,英英辞典の活用を中心に説明します。
英英辞典
Mac ユーザーならば,辞書アプリに最初からインストールされています。使い方は,辞書アプリを立ち上げて,環境設定(コマンド+,)を押して,New Oxford American Dictionary (アメリカ英語) もしくは Oxford Dictionary of English (イギリス英語) を選びます。
まずは適当な英単語をこの辞書で調べてみてください。たとえば dictionary を New Oxford American Dictionary (アメリカ英語) で引くと,次のように出てきます。
dictionary | ˈdikSHəˌnerē |
noun (plural dictionaries)
a book or electronic resource that lists the words of a language (typically in alphabetical order) and gives their meaning, or gives the equivalent words in a different language, often also providing information about pronunciation, origin, and usage
英英辞典の説明に出てくる単語は,頻出英単語に絞られています。この英英辞典の説明について,辞書を引かなくてもスラスラ読めるくらい英単語力が身についているのであれば,ストレスなく英英辞典を活用することができるでしょう。
英単語はだいたい読み取れるが,説明が難しいと思った場合
もし先ほどの dictionary の New Oxford American Dictionary (アメリカ英語) で書かれている説明で,英単語自体はだいたい読み取れるが,説明が難しいなと思った時には,もっとやさしい言葉で書かれた英英辞典があるので,購入して活用すると良いでしょう。私は Oxford Advanced Learner's Dictionary を使っていました。世の中にはもっとやさしい英英辞典もあるようです。
いちばんいい選び方としては,書店や図書館に行って,いくつかの英英辞典を手に取り,適当な頻出英単語をいくつか選んで,同じ単語で記述を比較すると良いでしょう。でもなかなかそういう機会もなく難しいかもしれませんね。
次善の策としては,英英辞典の選び方について書かれた紹介記事で判断するというのも良いでしょう。
また,iOS だと無料でお試しダウンロードできる英英辞典もあるようなので,探してみるのも良いですね。私もさっそく,Oxford Learner's Dictionary of Academic English をダウンロードして試し始めました。無料ではいくつかの単語について調べることができるようになっています。かなり気に入ったので,購入しました。
英単語が読み取れない場合
もし先ほどの dictionary の New Oxford American Dictionary (アメリカ英語) で書かれている説明で,わからない英単語が相当ある場合,Picture Dictionary で語彙力を身につけるところから入るのが良いと思います。
Picture Dictionary は,英単語それぞれについて,ひとめでわかる挿絵で説明する,子供向けの辞書です。子供向けと侮ってはいけないです。Picture Dictionary には次のような利点があります。
- 英単語を絵で定義しているので,覚えやすい
- 英英辞典よりもさらに頻出単語に絞られている
iOS だと Oxford Picture Dictionary Demo が無料でダウンロードできますので,活用すると良いでしょう。私も早速ダウンロードしました。
さらに子供向けに絵がかわいいものを探しているところです。
英英辞典の使い始め
最初のうちは英英辞典の説明の意味がわからずに無限に辞書を引きがちです。英英辞典で単語を説明する際に用いている英単語は,頻出英単語そのものなので,これらをまるっと覚えるくらいまで単語力を身につけると,使いこなせるようになります。そこまでが辛抱ですね。
文法を手掛かりに英単語を推測するというのも身につけるべきスキルです。たとえば先ほどの dictionary を引いた時の説明をもう一度見てみます。
dictionary | ˈdikSHəˌnerē |
noun (plural dictionaries)
a book or electronic resource that lists the words of a language (typically in alphabetical order) and gives their meaning, or gives the equivalent words in a different language, often also providing information about pronunciation, origin, and usage
noun というのは「名詞」という意味です。つまり,dictionary は名詞なので,説明も名詞句になるようになっています。
なので,that の手前,"a book or electronic resource" が名詞による定義で,最も重要な説明です。
that は関係代名詞で,that 以下によって "a book or electronic resource" を限定しています。ここでは,that は "a book or electronic resource" を指していて,that 以下の文の主語として働きます。なので,lists はここでは三単現のsがついている動詞(verb)だと推測できます。list は他動詞(verb with object),すなわち目的語を取ることがわかります。なので,目的語の位置にある "the words of a language" はもちろん名詞句です。
かっこの記述は飛ばして,次に "and gives" とあります。and は同格の表現が並列に並んでいることを示唆します。gives と同格な表現は前に出てきた lists が当てはまります。なので,ここでは gives も三単現のsがついている動詞だと推測できます。give は他動詞なので,その直後の "their meaning" は名詞句です。
そのあとに ", or gives" と続いています。or も同格の表現が並列に並んでいることを示唆します。ここでは "lists ... and gives ..." というひとまとまりと,"or gives ..." が同格であることを示唆します。なので,構文としては ((lists ... and gives ...) or (gives ...)) であると読み取れます。gives は三単現のsがついている動詞です。"the equivalent words in a different language" は give の目的語に当たる名詞句ですね。
最後の,"often also providing information about pronunciation, origin, and usage" は副詞句です。なので,providing は動名詞ではなく進行形だと読み取れます。この副詞句が that 以下全体にかかるのか,それとも "or gives ..." だけにかかっているのかは,純粋な文法からはどちらとも取れるので,意味を読み取らないと特定できません。
このくらいの文法に自信がないようならば,英英辞典の活用より先に,英文法を身につける必要があると思います。まずは基礎となる5文型(S+V, S+V+O, S+V+C, S+V+O+O, S+V+O+C)をしっかり身につけるのが良いでしょう。5文型のどれを当てはめると良いかを判別する要となるのは V (verb, 動詞) です。
英語の技術文書を英英辞典で引きながら多読する
ソフトウェア技術者であるならば,普段読んでいる英語の技術文書を,英英辞典を引きながら読む習慣を身につけることで,効率的に英語を習得できるものと思います。
読む時のポイントとしては次のようになります。
- 1つのパラグラフ(段落)では,基本的に1つのことを主張します。そして,パラグラフの一番最初の文か最後の文が主文で,このパラグラフの要約になっています。大事なことなので繰り返しますが,1つのパラグラフでは,基本的に1つのことを主張します。例外は but や though,however などの逆接を表す単語が来た場合だけです。ただし,逆接を表す単語が来た場合でも,やっぱりパラグラフ全体では1つのことを主張するように組み立てるのが普通です。もしそうでないような解釈をしてしまった場合には,解釈が間違っていないか,よく吟味しましょう。
- 慣れるまでは,英語を読むのに体力・気力を消耗します。続けることを優先したほうがいいので,疲れたら読むのをやめるか,翻訳アプリを使って読むのが良いです。翻訳アプリを使う場合は,翻訳アプリが誤訳するケースが多いので,今まで習得した英単語や英文法の知識を使って,翻訳アプリが間違った解釈をしていないかをレビューすると良いでしょう。それも英語力を磨くには良いですし,体力・気力をそれほど消耗しません。
英英辞典の活用と合わせて発音を練習する
余力が出てきたら,フォニックスを身につけて,英英辞典の単語や説明を音読すると良いでしょう。英英辞典に音声データがついているのであれば,再生して発音を確認します。英単語のスペルを読み解いて,フォニックスのルールに沿っている部分と沿っていない部分を見分けましょう。フォニックスのルールに沿っていない部分は,例外なので,まるっと覚える必要があります。
writing のときにシソーラスを活用する
英英辞典が活用できるようになってきたら,writing のときにシソーラス(thesaurus)を使うと良いです。使い方としては,作文する時に手掛かりとなる英単語を何とかして思いついた後,シソーラスを引いて類似の単語を列挙し,それぞれを英英辞典で調べ,一番適切な単語を選ぶという感じです。
Mac の辞書にもシソーラスはあります。英英辞典と同じく,環境設定からどうぞ。
前述の Oxford Learner's Dictionary of Academic English が良いなあと思ったポイントの一つは,シソーラスがついている点です。ほかにも word family や,collocations, language bank など,英語学習のポイントが充実しているので,大学生・大学院生・技術者だったら,この辞書が最適かもしれませんね。
日本のソフトウェア技術者ならば,まずreadingから自信をつけると良い
この記事では英英辞典の活用を中心にいろいろ書きましたが,一番言いたいことは,日本のソフトウェア技術者が英語力を身につけようと思ったならば,まずは reading に自信がつくようにトレーニングするのが良いということです。reading に自信がつけば,あとは次の記事の手順に沿って,writing, speaking, listening という順で身につけられるだろうからです。
中級者が reading を効果的に身につけるのに英英辞典はとても役にたつと思います。英語の技術文書が苦もなく読めるようになれば,得られる情報の量と質が飛躍的に高まります。ぜひ頑張って身につけてください。