ElixirChipとElixirChip Liteに関する技術的ポエムを書いてみました.
ElixirChip構想を最初に表明したのは, @piacerex さんです.実は @piacerex さんがQiita記事でElixirChipを書く前から,私も独自プロセッサによるElixirアクセラレーションの可能性には気づいて秘密裏に研究を進めていたのですが,当時の私は事業性を見出していなかったので,大々的に発表する気になれず,細々と個人的に研究を進めていたのみでした.が, @piacerex さんのElixirChip構想の発表により,事業性があるんだということを思い知らされて,俄然やる気が出て, @piacerex さんに近づき,当時転職活動をしようとしていた @Ryuz さんを @piacerex さんにご紹介して引き抜いてもらい,並行して関連特許も出願して,ElixirChipについての研究を本格的にスタートしました.
ElixirChipについては,Interface 2024年10月号別冊付録のFPGAマガジン特別版No.3のコラムに書かせていただきました.Kria KR260を用いて,積和演算について,理論上,最高速クロック周波数で駆動することに成功し,高い電力あたり性能を達成しました.その後の検証で,消費電力を実測し,実証した電力あたり性能としては254GOPs/Wを達成しました.これは同程度のプロセスルールであるIntel Xeon E3-1285 v6に対して,24.2倍の電力あたり性能です.
さて,従来CPUでも,Elixirを導入することで,30倍の電力あたり性能を達成できます.下記事例では,300基の従来CPUを必要とするウェブ・アプリケーションを従来CPU10基に抑えることができたという報告です.
これらを合わせると,726倍の電力あたり性能を達成できそうな計算になります!
最先端のプロセスルールとAIアクセラレータを採用したFPGAであるAMD Versalシリーズで実現したら,もっと高い電力あたり性能を追求できそうです.
さらに,最先端のプロセスルールでASIC化することで,さらにさらに高い電力あたり性能を追求できそうです.
どのくらいまでいけるんですかね.楽しみです.
さて,ElixirChip Lite という構想も, @piacerex さんの発案によるものです.ElixirChip Liteという構想は,ElixirChipでなくても,携帯電話や自動運転車のプロセッサなど,電力あたり性能の良さそうなプロセッサ向けにElixirによる最適化を行うという構想です.
最近,私が研究しているところで言うと,電力あたり性能の高いApple SiliconやルネサスエレクトロニクスDRP-AIシリーズなどで,ElixirChip Liteを実現すると良いのではないかと思います.
今後の予測では,AIの大規模化に伴い,データセンターの電力需要が急激に伸びるそうですが,ElixirChipとElixirChip Liteで,電力需要の伸びを抑制し,さらには減少させるくらいのインパクトを持たせることで,ゼロカーボン達成に貢献できると良いなと思っています.