はじめに
前回の記事に続き、ITIL v4の学習記録の2記事目です。
今回はITIL v4の基礎となる重要な概念である「サービス」「価値」「登場人物」、そしてサービスマネジメントを包括的に捉えるための「4つの側面」について整理していきます。
サービスについて
ITIL v4において、サービスは次のように定義されています。
顧客が特定のコストやリスクを管理することなく、望む成果(アウトカム)を達成できるようにすることで、価値を共創する手段
ポイントは、サービス提供者が顧客に代わってコストやリスクを引き受けるという点であると思います。顧客は本来やりたいことに集中でき、サービス提供者はその裏側を支える、という関係性になります。
具体例
例えばクラウドサービスを利用する場合を考えてみます。
- 顧客は自分でサーバーを購入する必要がない(コストの管理が不要)
- ハードウェア障害への対応を自分でしなくてよい(リスクの管理が不要)
このように、顧客の負担を軽減しつつ望む成果を届けるのがサービスの役割です。
価値について
価値とは、ITIL v4において次のように定義されています。
何かの知覚された便益、有用性、重要性
重要なのは「知覚された(perceived)」という部分だと思っています。価値は受け手の主観によって決まるため、同じサービスでも利用者によって感じる価値は異なります。
価値を構成する2つの要素
価値は以下の2つの要素から構成されます。
| 要素 | 英語 | 意味 |
|---|---|---|
| 有用性 | Utility | 目的に適合しているか(fit for purpose) |
| 保証 | Warranty | 使用に適しているか(fit for use) |
- 有用性:になります。サービスが必要な機能を備え、求められる成果を達成できるか
- 保証:可用性、キャパシティ、セキュリティ、継続性などの非機能要件を満たし、安定して使えるか
この2つが揃って初めて、サービスは顧客にとって「価値がある」と言えると思います。
有用性をWhat(何を)、保証をHow(どのように)と考えるとわかりやすいと感じました。
価値の共創
ITIL v4では、価値は提供者が一方的に届けるものではなく、共創(co-creation) されるものという考え方が記載されています。
サービス提供者と顧客が協力し合って価値を生み出す、という双方向の関係が前提となっているようです。
登場人物について
ITIL v4には、サービス関係に関わる主な登場人物が定義されています。
サービスプロバイダ(Service Provider)
サービスを提供する組織や個人です。
サービスコンシューマ(Service Consumer)
サービスを受け取る側です。さらに以下の3つに細分化されます。
| 役割 | 説明 |
|---|---|
| 顧客(Customer) | サービスの要件を定義し、成果に責任を持つ人 |
| ユーザー(User) | 実際にサービスを利用する人 |
| スポンサー(Sponsor) | サービスの利用に対する予算を承認する人 |
これら3つの役割は、同一人物が兼ねることもあれば、組織内で明確に分かれていることもあります。
例えば企業で人事システムを導入する場合、以下のように役割が分かれるケースが考えられます。
- 顧客:人事部長(成果に責任を持つ)
- スポンサー:経理部長(予算を承認する)
- ユーザー:一般社員(システムを操作する)
4つの側面について
ITIL v4では、サービスマネジメントに対して包括的(ホリスティック)なアプローチを取るために**4つの側面(Four Dimensions)**というフレームワークが定義されています。サービスの設計・提供・改善を行う際に、バランスよく考慮すべき観点を示したものです。
1. 組織と人材(Organizations and People)
組織の構造、役割と責任、企業文化、スタッフのスキルやコンピテンシーに関する側面です。
どんなに優れたプロセスや技術があっても、それを扱う人材や文化が適切でなければサービスは機能しません。
2. 情報と技術(Information and Technology)
サービスマネジメントに必要な情報・知識と、それを支える技術(アプリケーション、データベース、AI、クラウドなど)に関する側面です。
情報の管理方法、セキュリティ、コンプライアンスなども含まれます。
3. パートナーとサプライヤー(Partners and Suppliers)
サービスに関わる外部の組織との関係性を扱う側面です。
ベンダー、クラウドプロバイダー、アウトソーシング先との契約やSLA、連携方法などが含まれます。自社ですべてを賄わず、エコシステム全体でサービスを提供する、という考え方が背景にあります。
4. バリューストリームとプロセス(Value Streams and Processes)
組織がどのように活動を組織化し、価値を創出する流れを作るかという側面です。
バリューストリームは価値を生み出すまでの一連のステップを示し、プロセスは特定の目的を達成するための活動の定義です。
4つの側面は同時に考慮する
この4つの側面は独立したものではなく、すべてのサービスにおいて同時にバランスよく考慮する必要があるという点が重要であると認識しています。
例えば新しいツールを導入する際には、以下をセットで検討する必要があります。
- ツール自体(情報と技術)
- 使いこなすための人材スキル(組織と人材)
- 関連するベンダー(パートナーとサプライヤー)
- 業務フロー(バリューストリームとプロセス)
さらに、これら4つの側面はPESTLE(政治・経済・社会・技術・法律・環境)といった外部要因の影響も受けるため、外部環境も踏まえて検討することが求められます。
まとめ
今回はITIL v4の基礎概念として「サービス」「価値」「登場人物」「4つの側面」について学びました。
- サービスは、顧客のコストとリスクを引き受けて成果を届ける手段
- 価値は受け手の主観で決まり、有用性と保証の2つで構成される
- 登場人物には、プロバイダとコンシューマ(顧客・ユーザー・スポンサー)がいる
- 4つの側面は、サービスを包括的に捉えるためのフレームワーク
これらはITIL v4全体を理解するうえでの土台となる重要な概念なので、しっかり押さえておきたいと思いました。
※ ITIL® はPeopleCert Group Limited の登録商標です。
※ 本記事はITIL 4の学習内容をもとに筆者の理解と解釈をまとめたものであり、公式見解を代表するものではありません。