Webマーケティングでは、「何をやるか(施策)」と「何で測るか(KPI)」は常にセットで考える必要があります。しかし、マーケティングに馴染みがないうちは、この2つを正しく結びつけることが難しいです。
本記事では、ファネルの各段階ごとに「どんな施策があり、何を指標として見ればよいのか」を、社員の採用活動を例にして具体的に紹介します。前回の記事「Web製作者が知っておくべき、Webマーケティングの基本」で解説したファネルの考え方を、実践レベルに落とし込む参考にしていただければと思います。
1. ファネルのおさらい
まず、ファネルの全体像を簡単におさらいしておきましょう。
ファネル(漏斗)とは、ユーザーが商品やサービスを知ってから、最終的に行動(問い合わせや購入など)に至るまでのプロセスを段階的に表したモデルです。採用活動に当てはめると、以下の4段階で整理できます。
認知: 求職者が企業の存在を知る段階。まだ転職を具体的に考えていない潜在層も含まれる。
興味・関心: 「この会社、ちょっと気になる」と感じ、もう少し詳しく知りたいと思い始める段階。
比較・検討: 複数の企業を比較し、どこが自分に合うかを判断しようとしている段階。
行動(コンバージョン): エントリー、カジュアル面談の申し込みなど、具体的な応募アクションを起こす段階。
漏斗の形をしているのは、段階が進むにつれてユーザーの数が絞り込まれていくためです。
全員が認知から行動まで進むわけではなく、各段階で一定数が離脱していきます。ファネルの詳しい解説は前回記事をご覧ください。
2. なぜ段階ごとに施策とKPIを分けるのか
ファネルを理解するうえで、最も大切な考え方があります。
それは、各段階には固有の役割があり、役割が異なれば打つべき施策も、成果を測る指標(KPI)も異なるということです。
これは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、実務ではこの原則が見落とされがちです。
たとえば、こんな場面を想像してみてください。採用のためにエンジニア向けの技術ブログを書き始めたとします。3ヶ月後、記事への流入は順調に増えているのに、「応募は増えたの?」と聞かれる。数字を見ると、エントリー数はほぼ変わっていない。「やっぱりブログなんて意味がない」という結論になってしまう。
この判断は間違っています。なぜなら、認知段階の施策に、行動段階のKPI(エントリー数)を当てはめて評価しているからです。
技術ブログの役割は、まだこの会社を知らないエンジニアに存在を知ってもらうことです。
この段階で測るべきは「どれだけの人に届いたか」「どんなキーワードで流入しているか」であって、「何件応募が来たか」ではありません。
認知段階で接触した求職者は、すぐに応募するわけではなく、興味・関心 → 比較・検討と段階を経て、はじめてエントリーに至ります。
逆に、すべての施策をCV(コンバージョン=応募数)だけで評価してしまうとどうなるでしょうか。
ファネル上部の施策は常に「効果がない」と判断され、打ち切られていきます。
その結果、認知の入り口が枯れ、ファネルに入ってくる総数が減り、中長期的には応募数そのものも減少するという悪循環に陥ることが考えられます。
「この施策はファネルの○○段階に効くもの。だから、このKPIで測る」という思考の型を持つことが大切です。
ここからは、ファネルの各段階ごとに、代表的な施策とそれに対応するKPIを具体的に紹介していきます。
3. 認知段階の施策とKPI
認知段階の目的は、まだ自社を知らない求職者に、企業の存在を知ってもらうことです。
ファネルの最も上部にあたり、ここで十分な数の求職者にリーチできなければ、その先の段階に進む人も少なくなります。
技術ブログ・社員発信のコンテンツ
エンジニアが使う技術の解説記事や、社内の取り組みを紹介するブログ記事を公開し、検索やSNS経由で求職者に見つけてもらう施策です。目的は会社が知られることであり、直接的に採用を呼びかける必要はありません。
KPI: 検索順位、オーガニック流入数(セッション数)、検索結果での表示回数など
判断の目安: 記事公開後2〜3ヶ月経っても検索順位が上がらない場合は、キーワードの選定が適切か、コンテンツの内容が検索意図に合っているかを見直します。表示回数は増えているのにクリック数が少ない場合は、タイトルやメタディスクリプションの改善などが有効だと考えられます。
SNSでの企業ブランディング
X(旧Twitter)、Instagram、YouTubeなどのSNSを通じて、社内の雰囲気、イベント参加レポート、社員の日常などを発信する施策です。求人媒体だけではリーチできない転職潜在層(今すぐ転職は考えていないが、良い会社があれば興味があるという層)に接触できます。
KPI: リーチ数(投稿がどれだけの人に表示されたか)、インプレッション数、フォロワー数の推移、HPへの流入数など
判断の目安: リーチ数が伸びない場合は、投稿の内容やタイミング、ハッシュタグの見直しなどを行います。
4. 興味・関心段階の施策とKPI
興味・関心段階の目的は、認知段階で接触した求職者の関心を深め、「この会社のことをもっと知りたい」と思ってもらうことです。
採用ページのコンテンツ充実
採用ページ内に、求職者が「もう少し詳しく知りたい」と思ったときに読めるコンテンツを整備する施策です。会社のビジョンや事業内容の紹介、オフィス環境の紹介、使用している技術スタックの一覧、1日のスケジュール例などが該当します。
KPI: 採用関連ページのページビュー数(PV)、回遊率(セッションあたりの閲覧ページ数)、平均エンゲージメント時間
判断の目安: 流入はあるのに回遊率が低い場合は、ページ間の導線が不足している可能性があります。たとえば会社紹介ページから社員インタビューへのリンクがない、といった状態です。平均エンゲージメント時間が極端に短い場合は、コンテンツの冒頭で求職者の期待とのズレが生じていないか確認します。
社員インタビュー・座談会コンテンツ
実際に働いている社員の声を記事や動画で紹介する施策です。「どんな人が働いているのか」「入社の決め手は何だったか」「実際の働き心地はどうか」といったリアルな情報は、求職者も関心があると考えられます。
KPI: インタビューページの閲覧数、動画の再生回数・視聴完了率、インタビューページからの回遊率など
判断の目安: 閲覧数自体が少ない場合は、他のページからの導線やSNSでの告知が不足していると考えられます。動画の場合、再生開始はされるが途中で離脱が多い場合は、動画の長さや構成を見直します。
採用イベント・カジュアル面談の告知
勉強会、ミートアップ、会社説明会、カジュアル面談など、求職者と直接接点を持てるイベントを企画し、サイトやSNSで告知する施策です。「まだ応募するかわからないが、話を聞いてみたい」という段階の求職者に対して、ハードルの低い接点を提供します。
KPI: イベントページの閲覧数、イベント申し込み数、イベント参加後の採用ページ再訪率など
判断の目安: 閲覧数に対して申し込み数が少ない場合は、イベントの内容や日時が求職者のニーズに合っていない、または申し込みフォームのハードルが高すぎる可能性があります。
参加後の再訪率が低い場合は、イベント自体の内容や、イベント後のフォロー施策の見直しなどが行われます。
5. 比較・検討段階の施策とKPI
比較・検討段階の目的は、求職者の不安や疑問を解消し、「この会社に応募しよう」と思ってもらうことです。
この段階の求職者は複数の企業を見比べており、最後のひと押しとなる情報を求めています。
福利厚生・給与・キャリアパスの明示
給与レンジ、福利厚生、リモートワーク制度、昇給・昇格の仕組み、キャリアパスの実例など、求職者が最も気にする条件面の情報を具体的に提示するページです。
KPI: 条件・制度紹介ページの閲覧数、ページの滞在時間、条件ページからエントリーフォームへの遷移率など
判断の目安: 閲覧数が少ない場合は、サイト内の導線でこのページが見つけにくくなっている可能性があります。滞在時間が極端に短い場合は、情報の見せ方がわかりにくい、または求職者が期待していた情報(たとえば具体的な給与レンジ)が載っていないことが考えられます。
入社者の体験談・転職ストーリー
実際に入社した社員が「なぜこの会社を選んだのか」「入社前と後でギャップはあったか」「今どんなキャリアを歩んでいるか」を語るコンテンツです。検討段階の求職者にとって、自分と似た境遇の人の体験談は、企業側の説明よりも説得力がある場合があります。
KPI: 体験談ページの閲覧数、体験談ページからエントリーフォームへの遷移率など
判断の目安: 閲覧数自体が少ない場合は、他のページからの導線が不足していると考えられます。閲覧されているのに遷移率が低い場合は、体験談の内容がターゲットとする求職者の関心と合っているか、ページ内のCTA設計の見直しなどを行います。
6. 行動(CV)段階の施策とKPI
行動段階の目的は、応募の意思を固めた求職者が、迷いなくエントリーを完了できるようにすることです。
ここまでファネルを進んできた求職者は、すでに「この会社に応募しよう」という意思をほぼ固めています。この段階での課題は、動機づけではなく、行動の障壁を取り除くことです。
エントリーフォームの最適化(EFO)
フォームの入力項目を必要最小限に絞る、入力エラーのフィードバックをわかりやすくする、スマートフォンでの操作性を改善するなど、フォームの使いやすさを向上させる施策です。
フォームまで到達しているのに完了率が低い場合、多くはフォーム自体の設計に問題があると考えられます。
KPI: フォーム完了率(送信数 ÷ フォーム到達数)、入力エラー発生率など
判断の目安: 完了率が低い場合は、入力項目が多すぎる、必須項目がわかりにくい、送信ボタンが見つけにくいなど、フォームのUI改善が必要と考えられます。
応募導線の選択肢を増やす
エントリーフォーム以外にも、カジュアル面談、会社説明会への参加、SNSのDMなど、応募のハードルや方法が異なる複数の接点を用意する施策です。
KPI: 各応募導線ごとのクリック数・申し込み数、導線別のその後の選考通過率など
まとめ
本記事では、ファネルの各段階ごとに代表的な施策と、それぞれに対応するKPIを紹介しました。
最も大切なのは、各段階の施策にはそれぞれ固有の役割があり、その役割に合ったKPIで評価するという原則です。
もう一つ重要なのは、ファネルは上から下へ一方通行ではなく、各段階が連動しているということです。
認知段階で十分な求職者を集められなければ、どれだけ行動段階のフォームを最適化しても応募は増えません。
逆に、認知は広がっているのに応募が増えない場合は、途中の段階にボトルネックがあるはずです。
施策を打つときは「この施策はファネルのどの段階に効くものか」を意識し、KPIを見るときは「この数字はファネルのどの段階の健康状態を示しているか」を考える。この思考の習慣が身につけば、施策の効果を正しく評価し、次に何をすべきかを判断できるようになると思います。
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株式会社ONE WEDGEは、Webシステム開発・SES・AI/DX支援を行うIT企業です。
生成AIを活用した業務効率化や次世代システム開発にも注力しており、企業の課題解決だけでなく、エンジニア一人ひとりの成長にも本気で向き合っています。
また、技術は「一人で学ぶもの」ではなく、「仲間と成長するもの」だと考え、社内外でのコミュニティづくりにも力を入れています。
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