はじめに
「AVDを導入したけど、思ったよりコストがかかっている…」
そんな悩みを抱える方に向けて、本記事ではAVDのコスト最適化に役立つ方法を整理してみました。
VMの選定からスケーリング、リザーブドインスタンスやSavings Planの活用まで、幅広い観点から節約のヒントをご紹介します。
1.Azure VMの料金を見直す
AVDのセッションホストにはAzure VMを使用します。
使用するVMのシリーズやサイズによって料金が大きく異なるため、用途に応じた適切なスペック選定が重要です。
たとえば、同じDシリーズでもvCPUの差で月額費用が約2倍変わってきます。
日本円で月730時間稼働、Japan Eastでの計算です。
- D8s v5は約56,000円
- D16s v5は約113,000円
Windows Virtual Machines の料金を参考に、必要な性能とコストのバランスを見極めましょう。
推奨シリーズについてはセッションホスト仮想マシンサイズガイドラインを参照ください。
例えばBシリーズにすればかなりの節約になります(B2as v2は月730時間稼働で約1400円)が、推奨されていないシリーズになります。
画像引用元:Windows Virtual Machines の料金
2. シングルセッション vs マルチセッション
AVDでは、1ユーザー専用の「シングルセッション」と、複数ユーザーで共有する「マルチセッション」の2種類の構成が選べます。
マルチセッションを活用することで、1台のVMに複数ユーザーを収容できるため、リソースの有効活用とコスト削減が可能です。
ただし、同時接続数やアプリケーションの負荷によってはパフォーマンスが低下する可能性もあるため、ユーザー数や業務内容に応じたチューニングが必要です。
コストパフォーマンスの観点でいうとマルチセッションが優れています。
しかし、用途によっては合わないケースもあるかと思いますのでマルチセッションとシングルセッションを使い分けることも視野に入れるとよいと思います。
無理やりコストパフォーマンスを重視して、使い勝手の悪い環境になると本末転倒です。
マシンサイズのガイドライン等を参考に見極めていくことになるかと思います。
Azure Virtual Desktop および Remote Desktop Services のセッションホスト仮想マシンサイズガイドライン
3. スケーリングプラン
AVDには「スケーリングプラン」という機能があり、ユーザーの接続状況に応じてセッションホストの起動・停止を自動化できます。
これにより、利用されていない時間帯の無駄な稼働を防ぎ、コストを大幅に削減できます。
たとえば、業務時間外や休日にセッションホストを自動で停止させる設定を行うことで、夜間の無駄な課金を防げます。
たとえば1日24時間フル稼働していた場合と比較して、12時間稼働にするだけで VM 料金を約50%削減できます。
さらにVM台数が多くなればなるほどメリットが大きくなります。使わない時間はなるべく停止させておきたいところです。
その他電源管理
ユーザーのログイン・ログオフ・アイドル時間などを契機にセッション ホストを起動・停止することができるためユーザーが利用している間だけ起動し、使わないときは停止させることが可能です。
Start VM on Connect
ユーザがログインした際にVMを起動してくれる機能です。
接続したタイミングでVMが起動するため、接続に時間がかかります。
使わない際は停止しておき、使う時だけ起動することでコスト削減になります。
自動停止
VMを使わない際に自動で停止させることができます。
スケーリングプランのランプダウンで設定する場合は以下の留意点があります。
こちらのブログで記載されているような方法で自動停止させることもできます。※一部公式サポートなし
Azure Virtual Desktop (AVD) セッションホストの自動停止を試す!
4. 接続しっぱなしのVMを検知
スケーリングプランの設定によりますが、ユーザーがログオフせずにセッションを放置しているとVMが稼働し続けてしまい、無駄なコストが発生する場合があります。
これを防ぐために、GPO(グループポリシー)やIntuneを活用して、一定時間操作がなければ自動ログオフや切断を行う設定を導入しましょう。
たとえば30分操作していなかった場合はログアウトさせることが可能です。
GPOもしくはIntuneにてセッションホストを管理可能な環境に限ります.
GPOの場合
- gpedit.msc
- コンピューターの構成→ 管理用テンプレート
→ Windowsコンポーネント
→ リモートデスクトップサービス
→ リモートデスクトップセッションホスト
→ 「セッションの時間制限」
intuneの場合
Microsoft intune 管理センターから設定します。
参考になりそうなブログを見つけましたので紹介しておきます。
レジストリの値はこのあたりのLearnが参考になります。
5. 節約プラン(Savings Plan)
Azureには「Savings Plan(セービングスプラン)」という、コスト最適化に非常に有効な料金プランが用意されています。
これは、1年または3年単位で一定の利用金額を事前にコミットすることで、対象となるリソースの利用料金に対して最大65%の割引を受けられる仕組みです。
特徴
Savings Planの大きな特徴は、従来の「リザーブドインスタンス(RI)」と異なり、特定のVMサイズリソースに縛られることなく利用できる柔軟性です。
具体的には、「リソース(VMなど)に対する予約」ではなく、「一定額の利用料金に対する予約」となるため、以下のようなケースに特に適しています。
-
VM起動時間は定まっているが、24時間起動するわけではない場合
-
構成変更の可能性がある場合
Savings Planの詳細については、以下のブログ記事が非常に分かりやすくまとまっており参考になります。
節約プラン × AVD
このように、Savings Planは柔軟性と割引率のバランスに優れた選択肢であり、AVDのようにある程度の稼働が見込まれる環境では、導入を検討する価値が十分にあります。
特に、AVD環境では「平日日中は常に稼働している」といったパターンが多いため、月間の利用料金がある程度安定している場合には、Savings Planを適用することで継続的なコスト削減が期待できます。
なお、Savings Planはすべての契約形態で利用できるわけではありません。
たとえば、CSP(Cloud Solution Provider)契約など一部の契約では制限がある場合があります。
ご自身の契約形態で利用可能かどうかは、公式ドキュメント(Learn)をご確認いただくか、Azureの契約窓口にお問い合わせいただくことをおすすめします。
6. リザーブドインスタンス(RI)
Azureでは、仮想マシン(VM)を長期間にわたって継続的に利用する場合に、コストを大幅に削減できる「リザーブドインスタンス(Reserved Instances:RI)」という仕組みが提供されています。
これは、1年または3年単位で特定のVMサイズ・リージョン・OSなどの構成を事前に予約(コミット)することで、最大72%の割引を受けられるというものです。
特徴
RIは、以下のような常時稼働が前提のVMに対して特に効果を発揮します
-
Active Directory Domain Services(ADDS)など、AVD環境を支える基盤VM
-
ファイルサーバーなど、夜間や休日も稼働が必要なシステム
-
常に一定数のユーザーが接続しているセッションホスト
数台規模のVMでは割引額が限定的になるためコスト効果はあまり期待できない可能性があります。
注意点
RIはSavings Planと異なり、以下のような構成の柔軟性に制限があります:
| 比較項目 | リザーブドインスタンス(RI) | Savings Plan |
|---|---|---|
| 割引対象 | 特定のVMサイズ・リージョン | 利用料金全体 |
| 柔軟性 | 低い(構成固定) | 高い(サイズ変更OK) |
| 適用対象 | 常時稼働VMに最適 | 1年以上一定料金が発生する環境に最適 |
そのため、長期的に構成が変わらない前提での導入が望ましく、頻繁にスケーリングや構成変更が発生する環境には適していません。
詳細はこちらのブログでも詳しく解説されています。
Azure Reserved VM Instances (RIs) について
スケーリングプラン等を使用してVM起動時間を短くしているケースではRIの利用は適していません。24時間起動を基準として80%の起動時間等であればRIの適用を検討してもよいかと思います(どのラインが分界点なのかは、計算してみたことがないので根拠はありません。すみません。)
7.ライセンス
AVD(Azure Virtual Desktop)を運用するうえで、ライセンスの選定と契約方法はコストに大きく影響する重要な要素です。
特に、AVDでは「ユーザー単位のライセンス」が基本となるため、ユーザー数が多いほどライセンス費用の総額が膨らみやすく、用途に応じた適切なライセンスの選定が重要になります。
ライセンスの見直し
AVDで利用可能なライセンスには複数の選択肢があり、業務内容やユーザー数に応じて最適なプランを選ぶことで、無駄なコストを削減することが可能です。
■Officeを使用しない場合
Officeアプリケーションを利用しないユーザーに対しては、「Windows Enterprise E3」などのシンプルなライセンスを選択することで、1ユーザーあたりの月額費用を抑えることができます。
参考価格:約 $7(約1,000円)/月(※Officeなしの場合の目安)
Office付きのライセンスと比較すると、数百円〜数千円単位でのコスト差が生まれるため、ユーザー数が多い環境では大きな節約効果が期待できます。
■Officeを使用する場合(300ユーザー以下)
Officeアプリケーションの利用が必要で、かつユーザー数が300名以下であれば、「Microsoft 365 Business Premium」がコストパフォーマンスに優れた選択肢となります。
Exchange、Teams、OneDrive、Officeアプリなどが含まれ、AVDも利用可能です。
AVDで利用可能なライセンスの一覧や要件については、以下の公式ドキュメントで確認できます:
購入方法
ライセンスの購入方法にもいくつかの選択肢があり、契約期間の選び方によってもコストが変動します。
月額契約:柔軟性は高いが、単価はやや高め
年額契約:長期利用が前提であれば、1ユーザーあたりの単価が割安になる
特に、AVDを長期的に運用する予定がある場合は、年契約を選択することでライセンスコストを抑えることができます。
8.番外編
AVDには動的自動スケーリング (プレビュー)という機能があります。
従来のスケーリングプランでは仮想マシン(VM)を起動・停止したり、利用状況に応じて稼働台数を調整する仕組みでした。
しかし、動的自動スケーリング (プレビュー)は一歩進んだアプローチを採用しています。
必要に応じて VM を新規作成したり、不要になった VM を削除したりするところまで自動化することが可能です。
これにより、AVD 環境の運用効率は大きく向上し、特にコスト最適化の面で大きなメリットが生まれます。
ディスク費用まで削減できる新しいスケーリングの形
VM を削除できるということは、当然ながら OS ディスクやデータディスクといったストレージ費用も同時に削減できる ということを意味します。従来のスケーリングプランでは VM を停止してもディスクは残り続けるため、ストレージ費用は固定的に発生していました。
動的自動スケーリングでは、利用者数が少ない時間帯には VM を削除し、必要なタイミングで再作成することで、「使っていない時間のディスク費用をゼロに近づける」 という、より踏み込んだコスト最適化が可能になります。
エフェメラルOSディスクとの相性
さらに注目されているのが、エフェメラル OS ディスク との組み合わせです。エフェメラル OS ディスクは、VM の OS ディスクを Azure Storage ではなくローカル SSD 上に配置する仕組みで、ディスクコストを完全にゼロにできる という特徴があります。
動的自動スケーリングと組み合わせることで、
-
VM の作成・削除を自動化
-
OS ディスクのコストをゼロに
-
スケールイン時はディスクごと削除されコストが発生しない
といった、非常に効率的でコストパフォーマンスの高い AVD 運用が実現できます。
実際にこのあたりの仕組みについては、以前こちらの記事でも詳しく解説しています。興味があればぜひご覧ください。
本機能は現在 プレビュー段階 のため、仕様変更や制限事項が発生する可能性があります。実運用に組み込む際は、最新のドキュメントや制約事項を必ず確認するようご注意ください。
最後に
AVD(Azure Virtual Desktop)のコストは、単に「VM の料金が高い・安い」といった単純な話ではなく、構成の選び方・運用方法・ライセンス・スケーリング戦略など、複数の要素が複雑に絡み合って決まります。
そのため、どれか一つの施策だけで劇的に改善するケースは多くありませんが、今回紹介したようなポイントを組み合わせて最適化していくことで、確実にコストを抑えながら快適な環境を維持することが可能です。
本記事が、AVD の運用を見直すきっかけや、コスト最適化のヒントとして少しでもお役に立てば嬉しいです。
コメントや補足があれば、ぜひ気軽にお寄せください





