第二言語の習得に、その言語で動画を観るという学習方法がある。ソフトウェアエンジニアの仕事を英語、主に海外でしたい人が増えていると思ったので、これが参考になると嬉しい。エンジニアリングについての動画を観ることで、喋り方や使われる単語を習得できるだけでなく、業界の常識、技術動向、ジョークなども学べる。
自分は英語圏で仕事をしているわけではないが、オーストラリアでコンピュータサイエンスの学部で勉強している。それなりに参考になる動画の種類や喋り方をするYouTuberを把握できていると思っている。
NeetCode
元Amazon、Googleのエンジニアで、エンジニアの面接に関わる動画を主に投稿している。名前の"Neet"は実は彼が一時期ニートだったことから来ている。
LeetCodeが就活において必須である英語圏のコンピュータサイエンス専攻の学生の間ではNeetCodeはよく観られている。クセの少ないアメリカ英語を喋り、図を交えたLeetCodeの問題の解説は非常に分かりやすい。彼自身も難関な技術面接を突破しているから説得力がある。
特に彼が作成したNeetCode 150という150問の問題集は、頻出の問題やパターンを網羅的にカバーしていることで学生に限らず参考にされている。
問題が綺麗に順序立てられていることで、ある問題に取り組む前に必要な事前知識を、それ以前の問題で学習できる。自分もこの150問を解いていて、アルゴリズム問題が解けるようになってとてもありがたく思っている。
メインチャンネルは不定期更新だが、サブチャンネルの方ではLeetCodeのdaily challengeのPython解説動画を毎日投稿しているので、彼と一緒に一日一問取り組んでみるのも良いのかも。
チャンネル登録して定期的に観るにしてもしなくても、LeetCodeの問題でわからないことがあれば彼の解説動画を探すのが良いだろう。
インド英語に慣れたい、またはデータ構造やアルゴリズムの基礎を学びたいのなら Abdul Bari がオススメ。理論的なことも問われるコンピュータサイエンスの学部生の間では信仰化されているほど分かりやすい。
Primeagen
Netflixで10年間エンジニアをしていた。英語圏YouTuber界隈でのバラエティ番組というのが一番正確だろうか。
本当に彼の動画は幅広い。上にリンクしたメインチャンネルでは2時間のGo言語とHTMXのチュートリアルなんかがある。だが彼はサブチャンネルの活動の方が有名で、そっちの方が登録者が多い。主にエンジニアリングについての記事、新技術のプレスリリースを読んだり、動画を観て、それに対する彼の意見を述べる動画が人気だ。それ以外にも新しい脆弱性について専門家と解説したり、Railsの作者との2時間に及ぶインタビュー、100万個のチェックボックスを一つのページで処理しているサイトについて彼のフルスタックの経験を交えた解説などもある。
彼の喋り方には気をつけないといけない。多くの動画ではとても早口で、喋る内容に西海岸エンジニア的なジョークやミームが多いこと。慣れていないと全く何を言っているのかが分からないが、早口な人は英語圏にもいるし、その文化圏の中でのジョークやスラングを知っていることは人間関係においても重要。ただこれ以上に注意しないといけないのがTwitchやインターネット文化もふんだんに取り入れていること。なので、エンジニアの職場では効かないような言葉や言い回しが度々使われる。
Computerphile
このチャンネルはソフトウェアエンジニアリングに限らず、コンピュータについて研究者が解説している動画が多い。ウェブサーバを25行のコードで作る、AES解説、イーサネット誕生50周年記念、LLMにおけるRAGなどなど。
自分は新しいことを勉強するときにこのチャンネルの動画を探すし、幅広くコンピュータについて知っておくためにたまに観ている。ほとんどの出演者がイギリス英語を喋るので、別の種類の英語を聞き慣れるのにも良い。
Lex Fridman
インタビュー形式の長時間ポッドキャストを研究者、技術者、起業家、と行なっている。例えばC言語のブライアン・カーニハン、イーサリアムのヴィタリック・ブテリン、OpenAIのサム・アルトマンなど、世界的に有名で凄まじい功績を残しているゲストたちが多い。ついでに、マーク・ザッカーバーグとは3回、イーロン・マスクとは4回行なっていたりする。
他にも、政治家、思想家、他分野の研究者、アスリートなどのインタビューも行なっている。
Programmers are also human
このチャンネルはいつ観ても笑ってしまう。英語圏エンジニアのコメディやステレオタイプを凝縮したおもしろ動画を投稿している。
もうこれ以上言うことはなく、ただ観てほしい。日本人のエンジニアに伝わるのかは分からないが、自分のお気に入りはシニアRustエンジニアとインタビュー、Emacs愛好家インタビュー(カラー版)。