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AnacondaでGPU対応のTensorFlowをインストールする簡単な方法

Last updated at Posted at 2023-11-23

はじめに

本記事は、Anacondaを使用してGPU対応のTensorFlowを導入する際に、お手軽にインストールする方法について解説します。

本記事の前提知識は、以下の2点です。

  • GPUドライバの適切なインストールされている(nvidia-smiが動作している)
  • Anacondaがインストールされていてる

なお、筆者の実装環境はUbuntu 22.04です。

最初に確認しておくこと

nvidia-smiが認識できるかチェック

以下のコマンドでGPUドライバが認識できるかを確認します。

$ nvidia-smi       
Wed Nov 22 20:04:05 2023       
+---------------------------------------------------------------------------------------+
| NVIDIA-SMI 535.129.03             Driver Version: 535.129.03   CUDA Version: 12.2     |
|-----------------------------------------+----------------------+----------------------+
# ---出力結果省略---

この結果にはGPUのメタ情報とともにDriver Version: XXXCUDA Version: XXXが表示されます。CUDA VersionDriver VersionがサポートするCUDAの最大バージョンです。このDriverのバージョン確認は重要で、適切なTensorFlowのバージョンがこれに依存します

※この時、nvidia-smiで、command not foundFailed to initialize NVMLなどのエラーが表示される場合は、GPUドライバが正常にインストールされていない可能性があります。この場合はドライバのインストールから始める必要がありますが、本記事ではその詳細は割愛します。

Anacondaが入っているかチェック

以下のコマンドでAnacondaがインストールされているかを確認します。

$ conda --version
conda 23.5.2

これによってAnacondaのバージョンが表示されれば、Anacondaが正常に機能しています。もしconda: Command not found.などのエラーが表示された場合は、Anacondaをインストールする必要がありますが、その詳細は本記事では省略します。

GPU対応のTensorFlowの環境作成

このセクションでは、Anacondaを使用して初めてGPU対応のTensorFlowを導入する手順を説明します。

Anaconda仮想環境にTensorFlowをインストール

AnacondaでGPU対応のTensorFlowを導入するには、以下のコマンドを使用します。

$ conda create --name tf-gpu-env tensorflow=*=gpu_*

これにより、適切なバージョンのTensorFlow、CUDA(GPUで使う)、cuDNN(GPUで使う)、PythonなどのGPUでTensorFlowを使う上で必要なライブラリが一緒に互換性を考慮してインストールされます。

なお、本記事では仮想環境の名前をtf-gpu-envとしていますが、環境名は任意に変更可能です。

TensorFlowのような大規模なライブラリを扱う際には、新しい環境(他のライブラリを入れていない環境)を作成し、そこに最初にインストールすることでエラーが起きにくくなると思います。

Anacondaに慣れている方は、conda search tensorflowと入力して表示されるバージョンの中からBuild Channelgpu_XXXXとなっているものを選択して、適切なTensorFlowのバージョンを指定することもできます。

TensorFlowのGPU認識の確認

インストールが完了したら、GPUが正常に動作しているか確認します。まず、conda activate tf-gpu-envを使用して仮想環境に入ります。

次に、以下のPythonコードを使用してGPUが動作しているかを確認します。

tensorflow_gpu_check.py tensorflowでGPUが動いているか確認
import tensorflow as tf

# GPUが使えているか確認
print('GPU is available: ', tf.test.is_gpu_available())
出力結果
# 略
GPU is available: True

と出ていればGPUが正常に動作しています。これで終わりです。折りたたみ部分はスキップして大丈夫です。

GPU is available: Falseのような結果が表示された場合は、CUDAのバージョンとGPUドライバのバージョンの依存関係に問題がある可能性があります。その場合は折りたたみの箇所に進みます。

GPU is available: Falseと出た場合の解決方法

GPUが使えない(False)が出た場合

GPUドライバのバージョンとCUDAのバージョンの確認

まず、tensorflowを入れた環境(本記事の例ではtf-gpu-env)に入った状態で、以下のコードを使用してCUDAのバージョンを確認します。ここで表示されるTensorFlowのバージョンは後の手順で使用します。

$ conda list | grep -E 'cudatoolkit|tensorflow'
cudatoolkit               11.3.1               h2bc3f7f_2  
tensorflow                2.12.0          gpu_py39hc0f3f85_0  
tensorflow-base           2.12.0          gpu_py39h24d65da_0  
tensorflow-estimator      2.12.0           py39h06a4308_0  

次に、nvidia-smiを実行し、表示されるCUDA Versionを確認します。この時、conda listで表示されたcudatoolkitのバージョンが、CUDA Versionよりも大きい場合が考えられます。その場合は次の手順に進みます。

nvcc --versionで表示されるバージョンがCUDAのバージョンとならないので注意してください。詳細は補足をご覧ください。

仮想環境を消してtensorflowのバージョンをダウングレード

このとき、cudatoolkitだけをダウングレードすればいいというわけではありません。cudatoolkittensorflowや他のライブラリと依存関係にあるため、ハマる可能性があります。そのため、一度仮想環境を削除し、適切なバージョンのtensorflowを指定して再インストールします。

仮想環境からdeactivateしてGPU is available: Falseと表示された環境を削除します。

$ conda deactivate
$ conda remove --name tf-gpu-env --all

仮想環境が削除できたら、以下のコマンドを入力してAnacondaが利用可能なGPU対応のtensorflowを確認します。

$ conda search tensorflow | grep gpu_
# 略
tensorflow                    2.10.0 gpu_py310hb074053_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.10.0 gpu_py37h84cb581_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.10.0 gpu_py38h11b98a5_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.10.0 gpu_py39h039f4ff_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.11.0 gpu_py310hf8ff8df_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.11.0 gpu_py38hec62255_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.11.0 gpu_py39h6d58c08_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.12.0 gpu_py310hfda07e1_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.12.0 gpu_py311h65739b5_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.12.0 gpu_py38h03d86b3_0  pkgs/main           
tensorflow                    2.12.0 gpu_py39hc0f3f85_0  pkgs/main    

このように異なるバージョンのtensorflowが表示されます。例えば、GPUが使えない(False)が出た場合で表示されたバージョンが2.12だとすると、それよりも低いバージョンの2.11をインストールする場合は次のようにします。

conda create --name tf-gpu-2.11-env tensorflow=2.11.0=gpu_*

インストールが完了したら仮想環境に入り、再びTensorFlowのGPU認識の確認の手順に戻り、GPUが正常に認識されるか確認します。必要に応じて、再帰的にTensorFlowのバージョンをダウングレードしていくことで、基本的にはこれでGPUが使えるようになると思います。

まとめ

本記事では、Anacondaを使用してGPU対応のTensorFlowを導入する手順について解説しました。

ポイントとしては、以下の2点です。

  • GPUドライバの対応したバージョンのtensorflowを使う。
  • 仮想環境を作成時(他のライブラリを入れていない環境)にインストールする。

GPUでTensorFlowを動かしてみたい方の一助になれば幸いです。

補足

nvcc --versionのCUDAのバージョンとの違いについて

CUDAのバージョンを理解するとき、nvccとの関係を抑えておく必要があります。nvcccudatoolkitの用語の意味は以下のようになります。

  • nvcc: NVIDIA CUDA Compilerの略で、CUDAのコンパイラです。CUDAプログラムをコンパイルしてGPU上で実行可能なバイナリに変換します。nvcc --versionは、基本的にシステム全体のCUDAバージョンを示します。wihch nvccで確認すると使われているnvccのパスを確認できます。

  • cudatoolkit: NVIDIAが提供するCUDAのソフトウェア開発キットです。これにはnvccなどのツールやCUDAランタイムライブラリなどが含まれます。通常、ユーザーはこれを直接使うことはありませんが、CUDAアプリケーションをビルドするためには必要です。

Anaconda環境ではcudatoolkitが専用に提供されており、これがAnaconda内で使用されるCUDAバージョンとして機能します。したがって、nvcc --versionで表示されるのはシステム全体のCUDAバージョンであり、Anaconda環境内で動作するTensorFlowなどのライブラリは、Anaconda内に導入されたcudatoolkitを使用します。
そのため、nvcc --versionはシステム全体のCUDAバージョンを示すことになり、Anaconda環境内で実際に動作するCUDAバージョンとは違う場合があります。

実際にTensorFlowで使われているCUDAバージョンをPythonで確認するには、以下のコードを使います。

使用されているCUDAバージョンの確認
import tensorflow as tf

sys_details = tf.sysconfig.get_build_info()
cuda_version = sys_details["cuda_version"]
print('cuda_version: ', cuda_version)

tensorflow-gpuでインストールするときはnumpyエラーに注意

AnacondaでGPU対応のTensorFlowをインストールするもう一つの方法として、tensorflow-gpuを使う手がありますが、numpyのバージョンでハマることがあるので注意が必要です。

以下に、この問題に遭遇した具体的なケースを紹介します。

まず、次のコマンドを使用してtensorflow-gpuをインストールします。この手順でCUDA、cuDNN、PythonなどTensorFlowで必要となるモジュールが同時にインストールされます。

$ conda create -n tf-gpu-env2 tensorflow-gpu

インストールが完了したら、作成した仮想環境にactivateして入ります。

$ conda activate tf-gpu-env2

Pythonでimport tensorflowを実行します。この時、以下のエラーが発生する可能性があります。

AttributeError: module 'numpy' has no attribute 'object'.
`np.object` was a deprecated alias for the builtin `object`. To avoid this error in existing code, use `object` by itself. Doing this will not modify any behavior and is safe. 
The aliases was originally deprecated in NumPy 1.20; for more details and guidance see the original release note at:
    https://numpy.org/devdocs/release/1.20.0-notes.html#deprecations

このエラーは、numpytensorflowのバージョンの互換性に関するものです。仮想環境でtensorflow-gpuを構築した場合でも、互換性の問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。

詳細は下記の記事にまとめておりますので、良かったらそちらをご覧ください。

他のライブラリも使う場合

TensorFlow以外のライブラリも一緒に使いたい場合、仮想環境を構築する際に同時にインストールしておくと、比較的スムーズに環境を構築できると思います。ただし、この方法が必ずしも問題なく機能するわけではなく、エラーが発生したりバージョン指定が必要な場合もありますので、注意が必要です。

例えば、OpenCVを一緒に使用したい場合は、以下のようにコマンドを記述します。

conda create --name tf-gpu-opencv-env tensorflow=*=gpu_* opencv

これにより、tensorflowopencvが同時にインストールされた仮想環境が作成されます。必要に応じて他のライブラリも同様に指定してインストールできます。

参考資料

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