はじめに
FOSS4Gアドベントカレンダーの記事です。FOSS4Gのツールを使ってこんなイベントに参加してみるのもどうでしょうか?という提案です。
皆さま 30DayMapChallenge というイベントをご存じでしょうか?私は去年から参加していて、今年もこのイベントに参加し、いくつかの地図を作成しました。
この記事は 30DayMapChallenge の紹介をしつつ、私が所属する組織の有志で参加した今年の 30DayMapChallenge をふりかえりたいと思います。このイベントに興味をもつ人、参加する人が増えれば幸いです。
30DayMapChallengeとは?
30DayMapChallenge は、毎年11月の30日間にわたり、日々出されるお題に関連したオリジナルの地図を作成して、X(Twitter)等のSNSを使って #30daymapchallenge のタグをつけ公開する地図作りイベントです。
地図づくりは30日間毎日作れなくても構いません。
お題とは、たとえば、Point
、Polygon
、Line
等 GISでよく使われるベクターデータ種類だったりします。これらはどう地図を描いたらいいか想像ができます。
Only circular shapes
というお題も、円で構成した地図を作ればいいのだな…と予想がつきます。
ですが A journey
、Memory
というお題となると、ちょっと違う発想が必要で、作成者の思い出と地図を関連付ける必要があります。
また、AI only
や、Overture
といった、ここ最近の注目技術を用いて地図を作るお題もあります。
オリジナルの地図の作成ツールは、大半はFOSS4Gのツールを用いて作成しますが、これらのツールを使わなくても、レタッチツール等、GISと関係ないツールをツールも構いません。
お題によっては、スケッチブックに絵を描いたり、お題に関連する写真だけ掲載した日もありました。
地図作りには誰でも参加でき、行動規範として守るのはこれだけです。
- 公開する地図はオリジナルのもの
- 利用したデータセットは可能なかぎり明記すること
- チャレンジの目的は、創造性、オープン性、美しいマップと地図作成の楽しさです。競争ではありません
- AI ツールの使用方法に注意してください。生成 AI ツールを使用してすべてのマップを生成した場合、楽しさはどこにあるでしょうか。これは、迅速なエンジニアリングチャレンジではありません
- 嫌な奴にならないでください。他者に嫌がらせをしたり、盗んだりしないでください
世界中の方々がお題に合わせて様々な地図を作っており、地図を作らなくても #30DayMapChallenge のタグをSNSで追っかけるだけでも、楽しめるかと思います。
30日のふりかえり
ここで私たちのチームが30日間作った地図について、各日の担当者のコメントも交えつつ、お題と作った地図をふりかえってみます。
1日目: Points
点の地物を使った地図。
担当 @bordoray
2日目: Lines
線を使った地図。
担当 @bordoray
3日目: Polygons
ポリゴンを使った地図。
担当 @yuskesuzki
日本地図・都道府県ごとのポリゴンと、第2次メッシュコードと重なる場所を抽出。ドット絵っぽいのは気に入ってます。
4日目: Hexagons
六角形を使った地図。
担当 @yuskesuzki
QGISキャンバス上に敷き詰めた10km間隔の六角形ポリゴンから、国土数値情報から入手した北海道の地形ポリゴンと重なる場所のみ抽出。
北海道の一級〜三級河川が通る箇所を種類別の青で塗りつぶしてます。友達からはPC-9801で遊べたシミュレーションゲームを思い出すと言われました。
5日目: A journey
旅をテーマにした地図。
担当 @nbayashi
6日目: Raster
ラスタデータを用いた地図。
担当 @yuskesuzki
G空間情報センターから入手した「東京都デジタルツイン実現プロジェクト 区部点群データ」のGeoTiffを利用。
図郭ごとのデータを顔の形を選択してダウンロード。QGISにてGeoTiffを全て組み合わせて配色の加工を行ってます。
7日目: Vintage style
古風な地図。
担当 @yuskesuzki
国土数値情報から入手した1920年代の札幌周辺の市区町村ポリゴンをQGISで地図化。豊平村が広い。
和紙のテクスチャー画像でポリゴンを塗りつぶし、大正モダンなセピア色で配色することで、古さを表現しています。
8日目: Humanitarian Data Exchange (HDX)
Humanitarian Data Exchange (https://data.humdata.org/) のデータを用いた地図。
担当 @bordoray
9日目: AI only
AIに生成してもらった地図。
担当 @nbayashi
10日目: Pen & paper
ペンと紙を使って描いた地図。
担当 @yuskesuzki
地理院地図、北海道の礼文島・利尻島の陰影起伏図を鉛筆画で模写してます。
モニターに映る地図をトレーシングペーパーでトレース。スケッチブックに転写完了後、あとはひたすら鉛筆で塗りまくるだけ。
11日目: Arctic
北極の地図
担当 @bordoray
12日目: Time and space
時間と空間をテーマにした地図。
担当 @nbayashi
13日目: A new tool
新しいツールを使って地図を描いてみる。
担当 @yuskesuzki
Height Mapを元に3D地図を作れるツール Aerialod を利用。
某社開発のQGISプラグイン ElevationTile4JP で生成した標高タイルを元にHeight Mapを作成。
あとはAerialodツールで読み込み、あれこれとパラメータをいじって、レンダリングしてます。
14日目: A world map
全世界の地図。
担当 @bordoray
15日目: My data
個人的なデータをテーマにした地図。
担当 @yuskesuzki
最近私が帰省したときに使った乗り物のルートをQGISで地図化してます。
敦賀から乗った北陸新幹線が速くてびっくり。
16日目: Choropleth
コロプレス図を用いた地図。
担当 @bordoray
17日目: Collaborative map
誰かとコラボレーションして2人で地図を作る
担当 @bordoray, @yuskesuzki
最近行われた衆議院議員選挙の投票結果を @bordoray さんにビジュアライズしていただきました。地域差が現れてて興味深いです。
18日目: 3D
3Dで作った地図。
担当 @nbayashi
19日目: Typography
文字をテーマにした地図。
担当 @yuskesuzki
一発ネタです。北海道の地形画像を「北」「海」「道」の文字で置き換えるアスキーアート生成プログラムをChatGPTで生成。
データがちょっと悪く、生成された文字列に、「道」の文字が入ってない事は内緒です。
20日目: OpenStreetMap
OpenStreetMap (https://www.openstreetmap.org) のデータを用いた地図。
担当 @yuskesuzki
OSMのデータを取得できる、Overpass-turbo (https://overpass-turbo.eu)から札幌中心部の "shop"="convenience" のデータをGeoJSONで抽出。
コンビニごとに店名のアイコン画像を設定してQGISで地図化してます。
21日目: Conflict
衝突・紛争をテーマにした地図。
担当 @yuskesuzki
紛争の話…と考えた結果、無人島の開拓競争をテーマにした有名ボードゲーム・カタンのプレイ写真を掲載してます。
カタンのスペルは正しくは Catan。
22日目: 2 colours
2色だけ使った地図。
担当 @yuskesuzki
Height Map代わりのDEMを入手し、Blenderにテクスチャ読み込み。
平面のオブジェクトにモディファイアを設定し、サブディビジョンサーフィスで細分化。
ディスプレイスでDEMのテクスチャを設定することで、テクスチャ表面を変形。
あとは自家製トゥーンシェーダーをマテリアルで設定。
Blenderはもうちょっと使いこなしたい。
23日目: Memory
作成の思い出や懐かしい場所をテーマにした地図。
担当 @bordoray
24日目: Only circular shapes
円だけ使った地図。
担当 @bordoray
25日目: Heat
ヒートマップをテーマにした地図。
担当 @yuskesuzki
国土数値情報から、関東圏の平年値メッシュデータを取得。QGISに敷き詰めたメッシュに、8月の平均気温を元に色付け。
QGISの印刷レイアウト機能を使って文字等をレイアウトしてます。
26日目: Map projections
地図の投影をテーマにした地図。
担当 @bordoray
27日目: Micromapping
小規模・ミニマムな地図。
担当 @bordoray
28日目: The blue planet
海、川、湖をテーマにした地図。
担当 @bordoray
29日目: Overture
Overture Maps (https://overturemaps.org/) のデータを使った地図。
担当 @bordoray
30日目: The final map
最後の締めくくりの地図。
担当 @bordoray
まとめ
以上、私たちのチームの今年の 30DayMapChallenge ふりかえりでした。
Challenge完走を目指すなら、このイベントを私に紹介してくれた @bordoray さん曰く
#30DayMapChallengeがスプリントではなくマラソンなので、毎日High Quality的な地図を出すことが無理で、品質下げて5分で作って、数枚だけを集中すれば、完走することは問題ないというのアドバイスです。
また、いつもと違う面白い地図を作れることもこのチャレンジがいい機会だと思います。
とのことです。時間をかけ丁寧に地図を作るよりは、日々のお題に沿った地図を素早く作り、日によって力の入れ加減を調整するのが良いかと思います。
ただ、一人で地図を作り続けるのは大変なので、チームを組んで分担しながら作るのがおススメです。
30DayMapChallenge は楽しいイベントなので、もっと参加者が増えることを期待したいと思います。