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ApacheとNginxは何が違うのか?役割と設計思考から理解する

Last updated at Posted at 2025-12-13

はじめに

ApacheとNginxは、どちらもWebサーバとして広く使われています。
しかし「何が違うのか」「どちらを選ぶべきか」を考える方はそんなにいないのではないでしょうか。
私もその一人です。「Nginxの方がいい気がする」などと直感的に選択しています。
機能の比較だけを見ると似たように見えますが、実際の違いは 設計思考と役割の違い にあります。

本記事では、ApacheとNginxの違いを 処理モデル・本番環境での使われ方 という観点から整理します。
フレームワークや言語に依存しない、Webアプリ全般で約辰内容を目指します!!

そもそもWebサーバの役割とは何か

Webサーバの役割は、Webアプリを動かすことではありません。
正確には、HTTPリクエストを受け取り、適切な処理先へ振り分けることです。
多くの人が「Webサーバ=アプリケーションを実行するもの」と誤解しているのではないでしょうか。
実際にはWebサーバとアプリケーションサーバは役割が分かれています。

Webサーバが担う主な役割

Webサーバは、主に次のような役割を持ちます。

  • クライアント(ブラウザ)からのHTTPリクエストを受け取る
  • HTML/CSS/JS/画像などの静的ファイルを配信する
  • 動的処理が必要な場合はアプリケーションサーバへリクエストを中継する
  • HTTPS通信の終端(SSL/TLSの処理)
  • 不正なリクエストの遮断やアクセス制御

つまり、Webサーバはアプリケーションの「入口」に立つ存在です。

Webサーバとアプリケーションサーバの違い

ここを理解するとことが、ApacheとNginxの違いを理解するのに大切な部分です!!

  • Webサーバ

    • リクエストの受付・振り分けが主な役割
    • 高速・安定して大量の接続を処理することが求められる。
    • Apache/Nginxなど
  • アプリケーションサーバ

    • DBアクセスや処理を行い、レスポンスを生成する
    • Gunicorn/uWSGIなど

Webサーバは「考えない」、
アプリケーションサーバは「考える」。
この役割分担が、本番環境では非常に重要になります。

なぜWebサーバが必要なのか

アプリケーションサーバを直接インターネットに公開することも技術的には可能ですが、本番環境ではほとんど採用されません。
理由は次の通りです。

  • 同時接続が増えると処理が詰まりやすい
  • 静的ファイル配信が非効率
  • HTTPSやリクエスト制御をアプリ側で担うのは負荷が高い
  • 異常終了時の影響範囲が大きい

そこで、リクエスト処理に特化したWebサーバを前段に置くという構成が一般的になります。

Webサーバは「アプリを守るための壁」

本番構成では、次のような流れになります。

Client
  ↓
Web Server
  ↓
Applivation Server
  ↓
Database

Webサーバは、

  • 不要なリクエストここで止める
  • 静的ファイルはここで完結させる
  • アプリには必要な処理だけ渡す

という防波堤の役割を果たします。

ApacheとNginxの違いにつながるポイント

ここまでを踏まえると、次の疑問が自然に出てきます。

  • Webサーバは「入口」なのに、なぜ2種類もあるのか?
  • なぜ最近はNginxが選ばれることが多いのか?
  • Apacheはどんな思想で作られているのか?

これらの答えは、「Webサーバに何をどこまでやらせるのか」という設計思想の違いにあります。

Apacheの設計思想

Apache HTTP Serverは、「1リクエストを1つの処理単位として扱う」という考え方をベースに設計されています。
Webサーバに求められる役割がまだシンプルだった時代に、分かりやすく、柔軟で、拡張しやすいことを重視して作られました。

Apacheが得意とすること

この設計思想により、Apacheは次のような強みを持っています。

  • 設定や挙動が直感的で理解しやすい
  • 動的コンテンツの処理を直接組み込める
  • モジュールによる拡張が非常に豊富
  • 小規模~中規模な環境で安定して動作する

特に、「1リクエスト=1処理」という構造は、トラブルシューティングや挙動理解のしやすさにつながります。

.htaccessによる柔軟な設定

Apacheを特徴づける要素の一つが .htaccessです。

  • ディレクトリ単位で設定を上書きできる
  • アプリケーション側で挙動を制御しやすい
  • 共用サーバなどで権限が分かれている環境に向いている

一方で、

  • リクエストごとに設定を読み込む
  • 設定が分散しやすい

といった側面もあり、高トラフィック環境では不利になることがあります。

Apacheは「全部入り」のWebサーバ

Apacheは、

  • 静的ファイル配信
  • 動的コンテンツ処理
  • 認証・認可
  • URL制御
  • ログ管理

など、Webサーバに必要な機能を1つで完結させる設計になっています。
これは

「Webサーバができることは、Webサーバにやらせる」

という思想に基づいています。

Apacheが向いているケース

この設計思想から、Apacheは次のようなケースに向いています。

  • 小~中規模のWebサイト
  • 設定を柔軟に変更したい環境
  • レガシーシステムとの互換性が必要な場合
  • 単体構成で完結させたい場合

Nginxとの違いが見え始めるポイント

ここまで見ると、Apacheは

  • 分かりやすさ
  • 柔軟性
  • 単体完結型

を重視したWebサーバだと言えます。
一方で、

  • 同時接続数が増える
  • 高トラフィックになる
  • Webサーバとアプリサーバを分業したい

といった要求が強くなると、別の設計思想を持つWebサーバが選ばれるようになります。

Nginxの設計思想

Nginxは、「少ないリソースで大量の同時接続をさばく」ことを目的に設計されたWebサーバです。
Apacheが「1リクエスト1処理単位として扱う」設計なのに対し、Nginxはイベント駆動型アーキテクチャを採用しています。

イベント駆動型という考え方

Nginxの最大の特徴は、1つのプロセスが複数の接続をイベントとして管理するという点にあります。

  • 接続が来た
  • データが届いた
  • レスポンスを返せる状態になった

といった状態変化(イベント)を検知し、処理できるものだけを順にさばいていく仕組みです。
この方式では、

  • 接続数が増えてもプロセス数は増えにくい
  • メモリ使用量が安定する
  • 待ち時間(I/O待ち)を無駄にしない

といった利点があります。

""" 「高並列」を前提にした設計
Nginxは、最初から

同時に大量の接続が発生すること

を前提として設計されています。
そのため、

  • Keep-Alive接続
  • 静的ファイルの大量配信
  • リバースプロキシとしての中継

といった処理を非常に効率よく行うことができます。
これは、クラウド環境やアクセス集中が起こりやすい現代のWebサーバと相性が良い理由です。

アプリケーションサーバとの分業前提

Nginxは、

「Webサーバは入口に徹する」

という思想を持っています。

  • アプリケーションの実行は別のプロセスに任せる
  • 自身は中継・制御・配信に集中する

このため、Nginx単体で動的処理を行うことは基本的に想定されていません。
代わりに、

  • Gunicorn
  • uWSGI

などのアプリケーションサーバと組み合わせて使うことが前提になります。

設定ファイル集中管理の思想

Apacheの .htaccessに対し、Nginxは設定ファイルを一元管理する思想を採っています。

  • 設定は管理者が一括で管理
  • リクエストごとに設定を読み込まない
  • 設定ミスを構成全体で把握しやすい

これにより、

  • 高速なリクエスト処理
  • 構成の見通しの良さ
  • 本番環境での安定運用

が実現しやすくなります。

Nginxが得意とする役割

この設計思想から、Nginxは次の役割を得意とします。

  • 静的ファイル配信
  • リバースプロキシ
  • ロードバランサ
  • HTTPS終端
  • Webアプリの前段でトラフィック制御

特に「入口」としての役割に特化している点が特徴です。

なぜクラウド・本番環境で選ばれるのか

Nginxは本番環境で選ばれやすい理由は、単に「速い」からではありません。

  • 高並列を前提とした設計
  • アプリケーションと分業できる構成
  • リソース効率の良さ
  • 安定した挙動

これらが、EC2・Dockerといった環境と非常に相性が良いためです。

Apacheとの思想の違い

  • Apache
    ->1リクエスト=1処理、全部入り、柔軟
  • Nginx
    ->イベント駆動、高並列、分業前提

どちらが優れているかではなく、「何をWebサーバに任せたいか」が選択の基準になります。

まとめ

ApacheとNginxは、どちらもWebサーバとして広く使われていますが、両者の違いは単なる機能や性能の差ではありません。
本質的な違いは、Webサーバにどこまでの役割を持たせるかという設計思想にあります。

  • Apacheは
    1リクエスト1処理単位として扱い、Webサーバ単体で多くの役割を担う設計です。
    柔軟で分かりやすく、小~中規模な構成や単体完結型の運用に向いています。
  • Nginxは
    高並列を前提とし、Webサーバは「入口」に徹する設計です。
    アプリケーションサーバと分業することで、本番環境やクラウド環境において高い安定性と効率を発揮します。

そのため、

「どちらが優れているか」
ではなく
「どのような構成・規模・役割分担を想定しているか」

が選択の基準になります。
また、Webサーバの役割を正しく理解しておくことで、

  • EC2やALBを使ったAWS構成
  • DockerやECSでのコンテナ運用
  • アプリケーションサーバとの責務分離

といった場面でも、なぜその構成が選ばれているかを論理的に説明できるようになります。
ApacheとNginxの違いを通して、Webアプリの本番構成における基本的な考え方を掴む一助になれば幸いです。
長文になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます!!

引用

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