こんにちは、ネクスウェイのゆうさけです。
アドベントカレンダーが回って来て、ブログすら書いたこともないですが、最近感じていることをつらつら書いてみようと思います。
まずは自己紹介
私は新卒でネクスウェイに入社し、AI周りのモデルの運用や、サービスの精度を改善などを担当しています。
エンジニアの組織に属しているものの、なんちゃってエンジニアと自認していて、弊社の真っ当なエンジニアの方々は、技術もありつつ人もよく、すごく尊敬できる人ばかりなので、この組織に所属させてもらえるのはありがたいなあと思うばかりです。
イントロ
さて、いきなりですが今回の主題が記憶力についてです。
もともと私は、記憶力が良い方ではないのですが、ここ最近、同僚と会話している中で、「ああ、あれだよあれ!なんだっけ、、、」みたいな状況がかなり増えてきたなと思っています。(まだそこまで年齢はいっているとは思いたくないですが)
ただ、概念の記憶は割と鮮明に覚えていることが多く、構造は理解しつつもワードが出てこず、説明できなくてもどかしいという状態が続いています。
原因調査
私のかかりつけの医師、Geminiにこのことを聞いてみると、初めて聞きましたが、心理学や脳科学の分野では、このような現象を**「TOT現象」**と呼ぶらしいです。
概念理解と単語の記憶が別のプロセスが走っていて、その連携がうまく取れていないといったことが起きているようです。
主には、以下の要因でなりやすいとのこと:
- 加齢
- ワーキングメモリの負荷
- LLMなどの利用しすぎ
ワンフレーズでTOT現象と説明されると、顔文字の (ToT) みたいにふしぎとかわいく感じてきてしまうところもありますが、アルゴリズムのモデルを説明する時など、あれなんだっけみたいなこともあり、業務上改善すべきなので調査してまとめていこうと思います。
TOT現象を深く知る
TOT現象は、以下のように定義されます。
「意味的な情報(概念)へのアクセスは成功しているものの、それに対応する音韻的・音声的な情報(単語の形態)へのアクセスが一時的に失敗している状態」
記憶の検索(Retrieval)プロセス、特に単語の音韻的符号化というところに問題が生じているようです。
脳内で起こっていること
-
概念化:意味の決定
- 話したい概念(例: ネクスウェイ)が明確に意識される。
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意味レキシコンへのアクセス
- 意味記憶から概念に対応する意味情報を検索し、活性化する(例: 「すごく良い会社」という説明はできる)。
-
音韻レキシコンへのアクセス ← ⚠️ ここが問題
- 語彙レキシコンから意味情報に対応する音韻コード(音素、音節)を検索し、活性化する。
- 音韻コードの活性化が不完全または遮断される。
-
発話の準備
- 音韻コードに基づき、単語を構成し発話準備を行う。
- 音韻コードが揃わないため、発話準備に移ることができない。
-
結果:目標語彙の産出
- 「ネクスウェイ」という単語が出てこない。
※レキシコン: 脳内の語彙にまつわるデータベースのようなもの
タイトル回収
私の脳内では、このような404エラーみたいなことが私の中で起こっているようです。
HTTP/1.1 404 Not Found
Content-Type: text/plain
単語 "ネクスウェイ" が見つかりません。
概念は存在しますが、音韻コードへのアクセスに失敗しました。
今後の改善策
ここまでどういった仕組みで起きているのかを調査してきましたが、どうすれば改善できるかをまとめていきます。
一般的に言われている解決策は以下になります。
訓練系
再構築訓練
単語が思い出せないとき、すぐに外部検索に頼るのではなく、目標語彙を初めて学習した時や頻繁に使用した際の文脈的・環境的キューを意図的に再構築するよう自己誘導を行う。
語彙生成訓練
特定の概念やカテゴリに対し、時間制限を設けながら関連語彙を可能な限り多くリストアップする訓練を反復実施する。
音韻的促進訓練
TOT状態に陥った際、目標語彙の頭文字、音節数、韻律などの部分的な音韻的特徴を意識的に反復し、完全な音韻コードの活性化を促す。
環境系
ワーキングメモリの負荷軽減
疲労やマルチタスクによる認知負荷を低減し、語彙検索に利用可能な認知資源を確保する。
睡眠による記憶の統合促進
質の高いノンレム睡眠を確保する。
有酸素運動の導入
定期的な有酸素運動を行い、脳由来神経栄養因子の分泌を促す。
具体的な実行タスク
1. 語彙生成訓練(5分タイマー)
毎日仕事開始前や休憩中に、特定の技術テーマを決め、タイマー5分で関連ワードを紙やメモ帳にひたすら書き出す。
2. 再構築訓練(1分ルール)
単語を検索する前に、「1分だけ自力で思い出す努力をする」と決める。思い出せない単語を調べた後、その単語の定義と文脈を声に出して復唱し、記憶に文脈を意図的に結びつける。
3. 音韻的促進訓練
TOTに陥ったら、その単語の音節の数(例: ネ・ク・ス・ウェ・イ)や最初の音を意識的に反復し、検索のヒントにする。
4. 会話量の改善
私の場合は、仕事上そこまで人と会話することもなく、極度の人見知りなので、普段の会話量の改善も視野に入れてみます。
どこまで続くかわかりませんが、少なからず今年度内は続けてみようと思います。
最後に
この記事では、私たちが遭遇する「あれ、あれ!」という現象が、単なる「ど忘れ」ではなく、
脳内で音韻コードというリソースへの検索リンクが切断された「404 Not Foundエラー」であること、そしてその原因が老いやLLMへの過度な依存にあることをご紹介しました。
そして、私自身の課題である「極度の人見知りによる会話量の少なさ」は、音韻コードを発話として産出する訓練の不足に直結しています。
今後は、チャットではなく、意図的に口頭で専門用語をアウトプットする機会を増やし、TOTエラーの発生率をモニタリングしていきます。
今回はここまでですが、機会があれば、具体的なトレーニング内容と、その後の効果を測定・検証した結果をご報告できればと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆様も、どうかご自身の「脳内レキシコン」を大切に。