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AIがコードを書く時代、エンジニアの価値を再定義する「ボトムアップパーシャルピック法」

Last updated at Posted at 2025-07-15

はじめに:あなたの未来を、AIに託せますか?

自律的にコードを書くAIの登場は、私たちエンジニアにそんな根源的な問いを突きつけています。

しかし、遠い未来の話をする前に、私たちの「今」に目を向けてみましょう。
そこには

「なぜ、見積もりはこうも外れるのか?」
「なぜ、手戻りはなくならないのか?」

といった、解決の糸口が見えない課題が山積しています。

もし、AIを真の「相棒」として迎え入れるなら、私たちがまず解決すべきは、この目の前の混沌(カオス)ではないでしょうか。

この記事は、単なるタスク管理術の話ではありません。
AIの時代に、エンジニアが再び思考の主導権を握り、自らの価値を再定義するための、新しい思考法についての「一つの提案」をさせてください。

解決の鍵は、私が考案した「ボトムアップパーシャルピック法(BUPP法)」

なぜ、私たちの工数見積もりはこれほどまでに外れるのでしょうか?なぜ、開発終盤に考慮漏れが発覚し、痛い手戻りが発生するのでしょうか?

私は、その根本原因が タスクの「切り方」そのものにある と考えています。

従来の「機能ごと」「画面ごと」という曖昧で巨大なタスクの切り方では、本質的な課題は解決できません。

もっと揺るぎない「ものさし」で作業量を測り、実装の依存関係を最初から見通すことはできないか。

この課題意識から、私自身が日々の開発業務の中で試行錯誤を重ね、一つの結論として体系化したのが、本記事で提唱する独自の手法 「ボトムアップパーシャルピック法(Bottom-up Partial Pick Method)」 です。

本稿では、便宜上 「BUPP法(バップ法)」 と呼称します。

これは、その名の通り、

  • ボトムアップ(Bottom-up):分解された実装の最小単位から、
  • パーシャル(Partial):機能の区切りに捉われず部分的に
  • ピック(Pick):純粋な作業量ベースでタスクを拾い上げる

という、これまでの常識とは逆転の発想に立つ思考法です。

全解説「BUPP法」の実践4ステップ

「BUPP法」は、具体的な4つのステップで実践します。

1. 【分解】目的からアトミックレベルまで、思考をトップダウンで分解する

すべては「ユーザーが〜できること」という目的(テストケース)から始まります。
そこから「機能」→「画面を構成する項目」→「再利用可能な最小部品(アトミックコンポーネント)」へと、思考を徹底的に分解していきます。

【補足】アトミックコンポーネントって何? ⚛️

「アトミックコンポーネント」とは、これ以上分解できない最小単位のUI部品のことです。
例えば、サイトでよく見る「ボタン」や「入力欄」、「アイコン」などがこれにあたります。

アトミックデザインという設計思想では、UIをまるで理科の実験のように、原子(Atom)→分子(Molecule)→有機体(Organism)と、小さな部品を組み合わせて大きな塊を作っていく、と考えます。
この手法では、その一番最初の「原子」レベルまで機能を分解してみましょう、という意味で使っています。

2. 【グルーピング】同じ実装パターンの部品をグループ化する

分解された部品群の中から、同じパターンで実装できるものをまとめます。
例えば「テキスト入力フィールド」「選択式ドロップダウン」といった単位です。
これが、後のAIへの「お手本」の素になります。

【補足】「グルーピング(抽象化)」の簡単な考え方 🧠

ここでいう「グルーピング」や「抽象化」とは、一見バラバラに見えるものの中から 「共通の型(パターン)」を見つけ出す作業 のことです。

例えば、「名前の入力欄」「住所の入力欄」「メールアドレスの入力欄」は、それぞれ目的は違いますが、実装レベルで見ると「ラベルがあって、その下にテキストを入力する箱がある」という 共通の型 をしていますよね。

このように「これも結局は、あのパターンの仲間だな」と見抜くことが抽象化の第一歩です。
この「型」を一つ作ってしまえば、あとは少し変えるだけで色々な場所で使い回せるようになります。

3. 【ピックアップ】作業量ベースでタスクを切り出す

ここがこの手法の核心です。機能や項目といった単位に縛られず、 「この部品を作るのに何時間かかるか」 という純粋な作業量を基準にタスクを切り出します。例えば「汎用テキストフィールドの作成(6h)」が1つのタスクになります。

4. 【積み上げ】ボトムアップで依存関係を解決しながら実装する

最小部品のタスクから着手し、それらを組み合わせて上位の項目、機能へと積み上げていきます。
これにより、依存関係が明確になり、手戻りのない着実な進捗が生まれます。

【補足】「依存関係が明確になる」とは? 🔗

「依存関係」とは、簡単に言うと 「何かを作るために、先に作っておかなければならないもの」 という関係性のことです。

例えば、プラモデルを作る時、手や足といったパーツ(最小部品)を先に作らないと、それらを組み合わせて胴体に取り付けることはできませんよね。
開発も同じで、「テキスト入力フィールド」という部品(パーツ)が完成していないのに、それを使う「ユーザー登録フォーム」を作ることはできません。

この手法では、一番小さな部品から作っていくので、「次は何を作れば良いか」の順番が非常に分かりやすくなり、作業の迷いがなくなります。

AIを最強の相棒に変える「伴走・委託分離モデル」

この「BUPP法」は、AIとの協業で真価を発揮します。
私はこれを 「伴走・委託分離モデル」 と呼んでいます。

【補足】なぜフェーズを分けるの?

開発の仕事は、大きく分けて2種類あります。一つは、 どう作るか考える「設計」の部分(0→1) 。
もう一つは、決まったパターンを元に 手を動かす「実装」の部分(1→10) です。

AIは、後者の「決まったパターンの量産」は得意ですが、
前者の「どう作るべきか」という正解のない問いを考えるのはまだ苦手です。

だからこそ、最も頭を使う「設計」の部分を人間が責任を持って行い(伴走フェーズ)
そのお手本さえ出来てしまえば、退屈な繰り返し作業になりがちな「実装」の部分をAIに任せる(委託フェーズ)
この役割分担が、最も効率よく質を上げるための鍵なのです。

伴走フェーズ(人間が主役)

この段階で、人間はAIを思考の 「壁打ち」相手として活用 します。

「この設計で問題ないか?」
「もっと良い実装パターンはないか?」

といった問いをAIに投げかけ、対話を繰り返しながら、最適な設計思想を固めていくのです。

そして、固まった最高の設計思想を元に、グループ化された各パターンのうち、最初の1つだけを人間が実装します。
これがAIへの、魂を込めた「お手本(ナレッジ)」となります。
品質を保証するテストコードと共にAIに渡すことで、後の「委託フェーズ」の品質が担保されるのです。

委託フェーズ(AIが主役)

お手本さえあれば、あとはAIの独壇場です。
「このお手本と同じように、残りの5つの項目を実装して」と指示するだけ。
人間が一晩かけて行うような退屈な作業を、AIは数分で、しかも並列で実行してくれます。

私たちは、AIが鳴らすテスト通知を眺めながら、本当に価値のある仕事、つまり最終的なレビューと、次の創造的な「設計」に集中できるのです。

おわりに:未来のエンジニアリングを、自らの手でデザインする

「BUPP法」は、単なるタスク管理術ではありません。

それは、エンジニアが思考の主導権を握り、AIをオーケストラの奏者のように率いる 「指揮者」 となるための、新しい時代の設計思想です。

この手法の本質は、一見バラバラに見える機能の中から 共通項 を見出し、最初に作った「お手本」という ナレッジを最大活用 することにあります。
すでにある「お手本」という名のコンポーネントを組み合わせることで、 「思っていたのと違う」という手戻りのリスクを最小限に抑えられます。
その結果、重複実装や手戻りは撲滅され、 実装コストを劇的に下げる ことに繋がります。

つまり、これからのタスク管理は、単に作業をこなすのではなく、いかに 横展開し、応用するかを重視する 戦略的な思考が求められるのです。

そうして生まれた時間と余裕を、私たちはより創造的で、本質的な価値のある仕事に投下できます。
求められるのは、目的を深く理解し、実装を抽象化し、的確な指示を出す能力だけではありません。

作ったものをいかに 再利用 し、 応用 を効かせるか。
そのスキルこそが、これからの時代を生き抜くエンジニアの新たな価値の源泉となる のです。

単にコードを書くだけの「プログラマ」の時代は終わりました。
これからは、私たち自身の手で、未来のエンジニアリングをデザインしていくのです。

その第一歩として、この 「ボトムアップパーシャルピック法(BUPP法)」 があなたの武器となることを願っています。

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