記事の概要
約1年間DAOでサービス運営したものの、今回クローズすることを決定しました。過去1年間で利益230万円を達成し、サービス改善、NFT会員証の発行、ハッカソンで優勝するなど、多くの成果を上げました。しかし、貢献数と売上の低下によるモチベーションの低下、運営コスト、税務上の問題などがクローズの理由となりました。それでも、この1年間で得た成果からDAOのポテンシャルを熱烈に感じることができました。
Englister DAOの成果
この1年間でEnglister DAOが生み出した利益は230万円でした。これは僕ひとりの力では絶対に達成し得なかった数字であるため、まさにDAOがあったおかげ、DAOの成果だと考えています。
この成果を次の3つに分解して紹介していきます。
1、サービス改善に伴う売上増加
1~5月は個人開発で運営していましたが、その間はずっと横ばいだったのですが、6月にDAO化させてから右肩上がりになっていることが分かると思います。
DAOを通じて、以下のようなことができました
- ヘビーユーザがDAOに参加し、欲しい機能のアイディアを出す。そしてそれをエンジニアが開発。
- みんなで協力して問題の作成 (合計600問以上!)
- データサイエンティストによるアナリティクスの導入
- プロダクトマネージャによるロードマップの策定やLP改善
数えきれないほど多くの貢献がありました。その全てはスプレッドシートに記載されているので、興味のある方は下のリンクから詳細を確認してみてください。
2、NFT会員証の発行
Englister DAOではNFT会員証やDAOメンバーシップカードを作りました。NFT会員証をもっているとEnglisterが無料で利用できたり、DAOメンバーシップカードを持っていると貢献度投票が行うことができるようになります。
DAOに参加していただいたデザイナーの方にカードのデザインをしてもらいました。とてもかっこいい。
NFT会員証の方は、0.39ETHの売上になりました。本当はNFT会員証がたくさん転売でやりとりされてサービス価値が相場で決まってくる世界観を夢見ましたが、そこまでには至りませんでした。NFTを買うための暗号資産を持っている層があまりにも少ないことが障壁でした。
Englister Premium Memberships - コレクション
Englister DAO Membership Cards - コレクション
3、DAOの仕組みをプロダクトに落とし込みハッカソン入賞
DAOといっても単なるコミュニティが多い中、Englister DAOは自律・分散を実現するための仕組みに力を入れていました。ブロックチェーンを利用してDAOを稼働させていたのは日本だと唯一だったのではないかという自負があります。
Englister DAOの仕組みは上記のような形になっていました。
- 2週間のスプリントの中で、各々のメンバーがDAOのためになることをやる
- Sprint Reviewで各々が実施したことを記載し、ブロックチェーンに登録
- メンバー全員が相互評価で投票を行い、その結果を集計してトークンの分配を決める
- これをずっと繰り返す
この仕組みは自律分散が実現されています。メンバーは誰かの指示を受けるわけではなく貢献を行います。その行動に対する評価も参加者全員で行います。また仕組みが全てブロックチェーンで自動化され、貢献するのも投票するのもトークンによるインセンティブによって自律化しています。
この仕組みをフレームワーク化してTeichakuというプロダクトに落とし込み、東京Web3ハッカソンとTOYOTA博報堂Key3ハッカソンにて賞をもらいました。
なぜクローズするのか
貢献数と売上の低下によるモチベーションの低下
クローズさせる理由は色々挙げられるのですが、モチベーションの維持させることができなかった が95%くらいを占める主な理由です。
DAOへの貢献数は9月をピークに減少し続けていました。初期はDAOの物珍しさから参加者が多く、試しに参加してくださる方がたくさんいました。ただ新しいことへの興味はせいぜい3ヶ月程度しかもたないということなのでしょう。
DAOを開始してから半年程度たった頃には参加するメンバーが固定化してきました。直近の貢献もハッカソンのための貢献が多く、Englisterのサービスそのものへの貢献はほぼなく、ほとんど新しい機能などを追加することができていませんでした。
それに伴い、Englisterのサービスそのものの売上やユニークユーザ数も減少傾向にありました。
Englisterの売上が落ちるとトークン価値が落ちる仕組みになっていたのでますます貢献する金銭的な動機が薄れていくという悪循環となり、「貢献しても報われない場」になってしまいました。
運営コスト
Englister DAOは毎週欠かさず定例会議を行なっていました。DAOとしてのモメンタムが失われつつある中でこのような運営コストがしんどくなってきました。
また、一番最初に実施した経営会議では上記のような宣言をしていました。元々の宣言通りに撤退した形になります。
全ての議事録を公開しているので、こちらも興味がある方がいればご覧ください!
税務的な問題
これは瑣末な問題なのですが、一応書いておきます。
Englisterの利益は全て仮想通貨に変えて、トレジャリーに入金していました。
トレジャリーに入った仮想通貨は運営である私にも触ることはできず、トークンを持っている人のみが引き出せる形になっていました。
つまり運営である私は10万円入金されても、そっくりそのまま10万円分の仮想通貨をトレジャリーに入れていたので手元にお金は残りません。
ただ税務上、それを証明することが困難です。10万円分の送金をしたトランザクションは示せますが、それが経費として承認されるのか分かりません。もし承認されなければ私は余分な税金を払うことになります。上記のようなリスクを取る必要があったことは一つのクローズの理由になります。
ただこの辺は相談先ややりようは色々あると思うので瑣末な問題だと思います。
最後に
実証実験のつもりで始めたEnglister DAOですが、数えきれないほどたくさんの成果を出せてとても楽しい1年でした。DAO当初の目的を達成することができずにクローズという形になりましたが、DAOのポテンシャルを本当に感じました。
関わってくださった皆様には本当に感謝しかありません。
またこれからも色々と挑戦をしていくので、何かの形でまた一緒に面白いことができたらいいなと思います!
ありがとうございました🙇♂️